2026年4月20日無料公開記事海運アナリストはこう見る

《連載》海運アナリストはこう見る⑤
邦船大手2~3割増益 コンテナ船堅調
野村證券エクイティ・リサーチ部インフラストラクチャー・チーム
広兼賢治 運輸担当エグゼクティブ・ディレクター

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 ― 邦船大手の2025年の経常利益見通しは。
 「第3四半期決算時点の公表値から大きな変化はなく、為替の影響程度だろう」
 ― 邦船大手の2026年度の経常利益の見通しは。
 「日本郵船は当社の前期予想比18%増の2330億円、商船三井は同18%増の2131億円、川崎汽船は同27%増の1311億円と予想する。コンテナ船市況の改善を見込むためで、同部門の比率が高い川崎汽船の伸び率が大きくなる。最大の需要地である米国の消費が再拡大するサイクルに入ることが市況をけん引する。一方で船腹供給も多く、さらに紅海・スエズ運河の通航が期中に再開すれば運賃の上昇余地は限定的となる可能性もある。また、インフレ傾向が需要の一定のマイナス要因となるだろう。それでも米国の在庫は低水準にあることから、市況が大きく悪化するとは考えにくい」
 「船価の上昇により、各社が船隊をリプレースする中で売却益が安定的に発生し、これが邦船大手の純利益を下支えする」
 ― 自動車船部門の業績見通しは。
 「前年度並みを見込む。邦船大手は大半の輸送契約を固めており、仮に需給が緩んでも影響は限定的だろう」
 ― ドライバルクの見通しは。
 「基本的に前期から改善する会社が多い。マーケット自体は大きく変わらないが、一過性の減益要因の剥落で収益は良化する」
 ― イラン情勢の邦船大手の業績への影響は。
 「足元で海運マーケットが上昇していることからもプラス要因だ。輸送量の減少よりも運賃上昇の影響の方が大きいだろう。また、燃料油の不足や減速運航によって船腹供給が抑制される。供給不安から在庫積み増しの動きが出れば、コンテナ輸送需要の前倒しも起こり得る」
 ― オーシャン・ネットワーク・エクスプレス(ONE)の事業運営に対する評価は。
 「ONEがシースパンの親会社に追加出資したが、これも業績安定化に向けた1つの解といえる」
 ― 邦船大手の株価に対する評価は。
 「海運株は事象発生後に上昇する傾向があり、足元の上昇も中東情勢を踏まえたものだ。しかしPBR(株価純資産倍率)は1倍を下回っており、けっして高い評価を受けているわけではない。基本的に海運は株式市場で市況株として扱われており、構造的な利益成長が見えなければこの評価は変わらない。株主還元を行っても、株価の維持には寄与するが、成長とは別の話だ」
 ― 邦船大手のIRに対する評価は。
 「海運マーケットの動きはマクロ経済に帰結するため、自社のこと以前にまずは海運のメカニズムを理解してもらうことが重要。株式市場では他産業との比較で評価されるため、同業内比較だけでは不十分だ」
 ― 海運セクターで今注目していることは。
 「昨年も述べたが、資金を使っていかに自分たちの価値を創出するかだ。株主還元は、有望な投資先がないなど自社で使い切れない資金を還元する行為であり、持続的に資本コストを上回る成長を実現することがより重要だ」
 「輸送業は価値創出の観点では、邦船大手はESG(環境・社会・ガバナンス)をトリガーとした成長シナリオを掲げてきたが、脱炭素を巡る逆風によって前提が揺らぎつつある。現実を踏まえれば、訂正まではいかなくても一定の戦略の修正が必要かもしれない」
(聞き手:深澤義仁)

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