2025年7月14日無料公開記事今治内航船主若手経営者座談会 内航NEXT

《連載》今治内航船主若手経営者座談会①
船員不足さらに深刻化、内航廃業も

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座談会の参加者

愛媛県の今治市、波方町、伯方町、大西町など12市町村が合併し、新生・今治市が発足してから20年となる今年、国際海事展「バリシップ」が過去最大規模で開催された。その開催に合わせて、同市の内航船主で構成する今治地区海運組合(組合長=大木光俊・進宏海運代表取締役)の若手経営者と次世代の経営者にお集まりいただき、今治の内航船主の現状や、船員確保・育成と船隊整備といった経営課題、内航海運業界全体の課題などを語っていただいた。
 
座談会出席者(社名五十音順、カッコ内は所属地区)
浅川汽船・宮政彰社長(今治)、朝日海運・三宅恭介代表取締役専務(波方)、えびす商会・野間裕人代表取締役(伯方)、如月汽船・坂邊幸信社長(伯方)、金力汽船・多田憲司社長(伯方)、錦城海運・田窪昭彦代表取締役(今治)、幸洋汽船・藤澤賢宏取締役(今治)、進宏海運・大木祐輔常務取締役(波方)、大東汽船・馬越康友取締役(伯方)、聖海運・﨑山傑取締役(波方)、明運汽船・赤瀬慎専務取締役(伯方)

<司会=海事プレス社:深澤義仁、伊代野輝/会場=波方船舶協同組合(今治市)>


― 今治地区海運組合の現在の状況は。

「貨物船が77社・116隻・13万4348総トン、タンカーが32社・69隻・12万5756総トンで、愛媛県下で最大の海運組合ということは変わりない。前回の座談会が開かれた2年前と比べると、貨物船は1社、タンカーは2社減っているが、リプレース時の大型化などにより船腹量は微減にとどまっている。組合の構成員は若返ってはいるものの、さらに次の世代を育成しなければならないと感じている。波方は30代後半から40代が比較的多い一方、伯方島は団塊ジュニア以降の層が薄い」

― 今治市内の各地域の内航船主の特色と現状は。

「地区ごとに見ていくと、今治地区は小規模な船主が多いが、早くから大型化を進めてきた。ここ最近廃業した船主はいない。特色は、貨物船とタンカーが半数ずつの割合だということ。いずれも自分は乗船せずに陸上で経営に専念している船主が多く、集会などの集まりもいい。良くも悪くも地域に根差していない船主が多い」

「伯方地区は2年前から1社減となった。この船主は最後の内航タンカー1隻を売船して建造資金をつくり、外航船に進出した。組合員の状況をみると、船員確保が喫緊の課題で、陸上で経営に専念していた船主が再び船に乗らざるを得ないような状況だ。事業を拡大したいが、労働力不足で思い切ったことができない。一方で船主経営者の若返りが進んでいる。伯方地区の理事は15人中50歳以上が3~4人。1杯船主が高齢船をリプレースせずにそのまま廃業するケースが一巡して若返った。また、昨年の春ごろから船齢15年超のタンカーのリプレース計画が進んでいる。今後2年は建造ラッシュだ。隻数は変わらず、船腹は微増する見通しだ。情報交換も引き続き盛んに行っている」

「波方地区でも、タンカー船主が船員不足により内航船をやめて外航船に進出した。2年前は他地区ほど情報交換を行っていないと話したが、最近は若手が月1回程度集まって情報交換をしている。青年部が学校向けパンフレットをつくったり、この夏には小学校で出前講座を実施するなど、活動を活発化させている。こうした活動は市議会議員の後押しもあり、積極的に行うようになっている」

― 次に内航船主全体の事業環境について聞きたい。

「この2年で風向きが変わったのが、船員の時間外労働規制順守の徹底だ。そのためのコストを荷主から負担してもらえているオペレーターと、もらえていないオペレーターに分かれている。特にタンカーは船員不足によって停船が発生したこともあり、安定的な運航を維持するためにコストを割く流れになっている。しかし、業界全体で見たときには対応が遅いと感じる。タンカーは対応が進みつつあるが、貨物船は船員不足によっていきなり船がばたばたと停船するような事態になるのではないかと危惧している」

「タンカーをはじめとする700総トン以上の船を持つ船主は、船員育成のために2人当直体制での運航を以前からやっている。貨物船も船員を育成し始めてはいるが、訓練のためにプラス1人配乗するコストが荷主やオペレーターから出ないため、育成できていない船主も多い。小規模の貨物船船主は船員を身内で固めて安定的に配乗しているが、誰かがけがや病気になればいきなり廃業になりかねない。そうしたケースをここ数年よく見てきた」
(つづく)

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