2025年3月18日無料公開記事バイオ燃料

《連載》バイオ燃料⑤
供給課題対応で「バイオ残渣」に注目

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新たなバイオ燃料


船舶用バイオ燃料の主原料となる廃食油の供給量には限界があり、スケールアップは容易ではない。同じく廃食油を主原料とするSAF(持続可能な航空燃料)の普及が進むと、価格負担力のある航空燃料向けに原料が充てられ、船舶向けの供給が細ったり高値になったりする懸念がある。「バイオ燃料のサプライヤーは廃食油に代わる新しい原料を種々検討している。そのような原料から製造されたバイオ燃料のトライアル使用に積極的に取り組みサプライヤーと共に新しい原料の開発を進めていきたい。実際にトライアルも行っている」(川崎汽船・嶋田仁之燃料グループ長)

廃食油のほか、非可食バイオマス、藻類、廃棄物・都市ごみも将来的な新たな原料になると言われる。足元で注目されているものの1つが「残渣」の活用だ。

日本郵船は「バイオ残渣」に注目し、性状確認などの取り組みを始めている。バイオ残渣は通常のバイオ燃料から“グレードダウン”した燃料になる。バイオ燃料を精製する過程で副産物としてでてくるもので、可燃性の液体だが通常の燃料よりも取り扱いが難しいとされる。海外の一部では使用実績があるというが、本格的な品質の検証はこれから。そこに日本郵船はグループを挙げて挑戦する。

海務グループの植松将史・機関チーム長は「バイオ残渣は通常のバイオ燃料よりも安価になると見られ、かつ、GHG強度(エネルギー当たりのGHG排出量)は通常のバイオ燃料と同様になるはず。バイオ残渣を安全に実運用できるようにすることが直近の目標だ」と話す。

テスト・エンジンで品質の検証を進めている。検証の進め方はこうだ。まずはサンプルを取り寄せて、グループ会社の日本油化工業のラボで成分や性状を分析し、通常の重油燃料と比べて特異な点がないかを確認する。そのうえで、テスト・エンジンで実際に使用してみて技術的な検証を行う。新しい燃料を検証するだけに、テスト・エンジンに不具合が生じることも想定されるが、その時のメンテナンスはテスト・エンジンなど施設内の機器の設計・施工を担当した、グループ会社のボルテックが受け持つ。

バイオ残渣の検証における第一のポイントは、その燃料でエンジンを安全に回せるかどうか。続いて、排気系統に問題が生じないかどうか。さらに、「バイオ燃料は“生もの”なので劣化しやすいと見られる。バイオ燃料は劣化すると酸を生じ、部品の腐食トラブルにつながる」(植松チーム長)とみて、燃料や排気から煤を集め、日本油化工業で分析を行った結果を見極める。以前であれば本船から取り寄せる必要があった煤もテスト・エンジンができたことでその場で収集し、トラブルの原因になりそうなポイントの分析、評価の時間を飛躍的に短くできるようになった。バイオ残渣には温度変化で固形化するものもある。「船で使う時にタンクや配管で冷えて固まることがある。固形化しやすいものは燃焼時に煤が出やすい傾向にあるので、実際にテスト・エンジンで焚いて確認していく」(同)

商船三井もバイオ残渣に注目する。「バイオディーゼルを作る際にでた残渣をもう一度加工してバイオディーゼルを作るもの。供給量はさほど出てこないが、通常のバイオディーゼルと比べて価格が安い。各サプライヤーから話をいただいて検討しているところだ」(漆谷禎一燃料GX事業部長)。バイオ燃料の原料はSAFの原料との競合が指摘されるが、「舶用と航空用ですみ分けも出てくるだろう。バイオ残渣は舶用にしか適用されないスペックだと思う」(同)

新たな原料に着目し、供給面の課題を乗り越えていく。
(つづく)

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