2025年3月13日無料公開記事バイオ燃料

《連載》バイオ燃料②
GHG削減効果と既存インフラ活用が利点

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長期使用の影響を注視


バイオ燃料の主な利点と課題、使用にあたってのポイントを表にまとめた。

利点は、要件を満たしたバイオ燃料を使用すれば規制において温室効果ガス(GHG)排出量の削減が認められること。これに並んで大きいのが「ドロップイン燃料」であることだ。使用する船はもちろん、バンカリング船(燃料供給船)や港の貯蔵タンクを含め既存のインフラを使える。アンモニアなど他の新燃料との違いだ。バンカリング船については「重油用のバンカーバージで運べるのはバイオ分25%未満だが、このルールが30%へと緩和される方向」(船社関係者)。緩和されれば、「B24」「B30」という一般に流通しているバイオ燃料で大きな制約にはならない。バイオ分100%の「B100」はケミカル船仕様の船での輸送になるため、需要が高まればバンカリング船の手配は課題だが、「『B100』を運べるメタノールバージがシンガポールで竣工してくる」(同)こともあり、こちらも状況は改善していきそうだ。
バイオ燃料は船での使用が始まってからあまり時間が経っていない。混合による影響や長期保存、また、長期使用による船への影響は今後注視するポイントになる。「バイオ燃料はいわば“生もの”。一般的には3カ月以内での消費といわれる。また、安全面を考慮して船上の同一タンク内で混合しない運用にしており、その分タンク繰りが制約になる」(同)。このようにオペレーション上の工夫は必要だが、それは重油燃料でもあること。その知見をバイオ燃料の使用でも生かせる。
 

邦船社、定常利用へ移行


邦船各社もバイオ燃料の使用を開始している。

日本郵船は、脱炭素目標とその達成のための戦略を設定した「NYK Group Decarbonization Story」の中で、2050年にグループ全体のGHG排出量のスコープ1~3(1:GHGの直接排出、2:間接排出、3:自社事業の活動に関連する他社の排出)でネット・ゼロを達成するため、中間目標として、2030年までにスコープ1・2を21年度比で45%削減することを掲げた。中間目標の達成に向けた取り組みの柱の1つが代替燃料への転換で、アンモニアなどの代替燃料が本格的に導入される間に利用を進めるのがバイオ燃料だ。

19年からバイオ燃料の使用を始め、補油港や船種を徐々に広げてきた。補油港はシンガポールや欧州(オランダ、ベルギー、スペイン)、国内での補油実績もある。船種はバルカー、LPG船、VLCCなどに及ぶ。24年12月末までに200回を超える補油を実施した。最近では、同社が保有し東北電力向けに運航する石炭専用船“能代丸”で、バイオ燃料の試験航行を開始した。国内電力会社向け石炭専用船でのバイオ燃料試験航行は初めてとなった。日本郵船のバイオ燃料の使用量は、24年は「B24」が約15万トンで、前年の約6000トンから大きく増やした。

商船三井は「商船三井グループ 環境ビジョン2.2」で2050年のネットゼロ・エミッションに向けた二酸化炭素(CO2)の削減経路を示した。その中でバイオ燃料は、2020年代から徐々に利用を拡大し、2050年時点でも一定の割合で利用することが想定されている。燃料GX事業部の漆谷禎一部長は「バイオディーゼルは決して過渡的な燃料ではない。アンモニアやLNG(バイオLNG含む)と比べると、燃料全体に占める割合は小さいが、特定の船種、特定の地域で継続的に使っていけるだろう。航空燃料のSAFと原料が重なるので、LNGと比べると供給面で不透明な点はあるが、将来にわたり使っていきたい燃料だ」と話す。

商船三井がバイオ燃料のトライアルを開始したのは22年だった。これまでに対象船の既存エンジンへの適合性、船主や船籍国との必要な確認をほぼ終え、定常的な利用へと移行している。「特定の船に継続的にバイオディーゼル燃料を使用する方向で検討を始めており、それに伴って調達量も増やす計画だ」(漆谷燃料GX事業部長)。24年の利用量は「B100」を含めて約3万トン。25年は5万トンを超える見通しで、「この量は底堅い需要であり、上振れの余地もある」(同)。使用する船種や航路も広げる計画。「24年は主に欧州に寄港する自動車船が中心だったが、25年はバルカー等にも広げる。日本、韓国、中国といった極東やシンガポール周辺でも利用していきたい」(燃料GX事業部の山川悟史ゼロエミッション燃料戦略チームリーダー)

川崎汽船は21年からバイオ燃料の利用を開始し、2月末現在、60回以上の補油実績がある。「まずはトライアルを始め、今では顧客の要望で使用する部分と、当社として自主的に使用する部分とで需要が安定的に積み上がってきている。24年度は約6万トンの使用を見込んでおり、今後も短中期的に使用量を増やしていきたい」と燃料グループの嶋田仁之グループ長は語る。自動車船やケープサイズ・バルカー、一部ではスープラマックス・バルカーでの使用実績もある。補油港はシンガポールを中心としている。

「バイオ燃料は、われわれの運航船の大半を占める重油燃料船に対して、改造不要で導入でき、かつ、脱炭素化に貢献する燃料。船種を問わず使用できる。足元で最も導入しやすく、将来的にも供給量を最大化していきたい」(川崎汽船の嶋田燃料グループ長)

多様な船種で導入が進むが、特にスコープ3のGHG削減に積極的な荷主ほどコスト負担の課題が解決しやすく、コンテナ船、自動車船、大型バルカーなどで導入が進みやすい傾向がみられる。

現在舶用のバイオ燃料は「B24」や「B30」が主流だが、「B100」についてもトライアルベースで使用されることが増えてきた。「『B100』需要は潜在的にあると思う。バイオ燃料の利用がGHG削減や燃費格付け(CII)の改善につながるのであれば、『B100』を使うのが手っ取り早い。『B100』を積載できるバージが増えてB100を利用できる機会が広がることが、より広い意味でバイオの利用が広がる」(船社関係者)。一方、バイオ分が大きいほど燃料費が上がるので、その負担は課題の1つになる。
(つづく)

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