2024年10月24日無料公開記事内航NEXT
「2024年問題」船社の現在地
《連載》「2024年問題」船社の現在地<上>
有人トラック乗船が加速
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船社によっては利用頻度の高い顧客を優先的に乗船させる動きも
トラックドライバーの残業規制強化が4月にスタートして半年が経過した。フェリー業界を見ると当初から利用の多かった九州—関西航路での有人トラック乗船はさらなる需要拡大を見せており、満船の便が増えている。こうした背景もあり、より長距離の九州—関東航路のフェリーも積載率がアップ。船社によっては乗船頻度の高い顧客のリクエストを優先的に聞くなど新しいフェーズに突入しており、限りあるスペースの有効活用が今後の課題になる。
■九州—関西が満船で関東航路へ
「平日は満船になることも珍しくない」と語るのは九州—関西航路でフェリーを運航する船社の幹部。2023年後半からトラックドライバーの残業規制強化を見越したモーダルシフト需要が顕在化し始め、今年4月から新規顧客の輸送もスタートした。増えているのは有人トラックで、従来主力である10トントラックのニーズが高い。
九州—関西航路の需給がひっ迫する中、他航路の利用も拡大している。九州—関東航路を運航するフェリー船社では週前半の月・火・水曜日に出発する便は積載率が9割に達する。この船社の関係者は「九州—関西航路に乗り切れない顧客がこちらに移っているのも乗船が増えている要因の1つではないか」と分析。九州—関西航路に乗船する有人トラックは関西方面だけでなく関東まで足を延ばすケースも多く、こうした車両が九州—関東航路を利用しているとみられる。
■週末便の活用が課題
好調な九州発着フェリー航路だが、共通する課題は週末便の積載率の低さだ。いずれの船社も週末は乗船が減ってしまうという。その原因は働き方改革。「貨物を入出庫する倉庫が働き方改革により土日の営業を辞めてしまった事例をよく耳にする。到着しても荷物が下ろせないため、土日に到着する便は敬遠されてしまう」(船社関係者、以下同じ)。こうした背景から、船社によっては利用頻度の高い顧客を優先的に乗船させる動きも出ている。ある船社関係者は「需要の高い週半ばの便だけ使いたいという顧客より、週末も乗船してくれる顧客に平日便を割り当てている」と内情を明かす。別のフェリー関係者は「これ以上需要がひっ迫してくれば、リードタイムに余裕のある貨物や無人シャーシを週末便に移行して平日便に空きをつくるといった方法はある。それでも満船になれば有人トラックでも週末に乗船していただくしかない」と今後の方策を語る。
船隊を効率的に運用するため、国に対して制度の見直しを求める船社関係者もいる。「今ある船隊を最大限に活かすため、定期検査について再検討する余地があるのでは。フェリーは5年ごとの定期検査に加え、毎年の中間検査もあり年に2週間以上入渠する。毎日2便体制で運航する船社の場合、4隻保有しているので全体で2カ月程度運休することになる。日々の検査を強化するなどして安全性を確保した上でドック入り期間を短縮するといった取り組みを国で検討して欲しい」と訴える。
(つづく)