2024年4月16日無料公開記事洋上風力発電

商船三井、モジュール船発注
JFEエンジ向け洋上風力部材内航輸送

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新造モジュール船のイメージ図

 商船三井は15日、モジュール船(フラットデッキ型特殊重量物運搬船)を中国の泰州三福重工集団に発注し、同船を対象にグループの商船三井ドライバルクがJFEエンジニアリングと洋上風車基礎部材の内航輸送契約を締結したと発表した。新造船は2026年春の竣工後、今月操業を開始したJFEエンジニアリングのモノパイル製造拠点(岡山県笠岡市)から国内の洋上風力発電建設地への海上輸送に従事。商船三井ドライバルクの管理の下でグループの商船三井内航が運航する予定。

 商船三井によると、内航モジュール船の洋上風車基礎部材輸送は日本初という。
 新造船は1万3000重量トンで、全長約150m、全幅約30m、計画喫水5.2m。洋上風力発電で先行する欧州で実績を積んだ最新のデザインをベースに設計。非自航台船(バージ)と比較して高い耐候性能を有することに加え、ダイナミックポジショニングシステム(DPS=自動船位保持装置)を搭載し、貨物を風車建設サイトのSEP船(自己昇降式作業台船)へ直渡しすることも可能。
 特殊な重量物運搬船であるモジュール船は、フラットで広い甲板が特徴。従来は港湾クレーンや建設重機械、油田プラットフォーム、プラントモジュールなどの大型貨物の輸送に使われている。モノパイル、タワー、ブレード、ナセル、浮体基礎といった洋上風力発電所の部材輸送にも適しており、これらの貨物を船尾・船側方向から多軸台車などを用いて直接積み込むことができる。
 商船三井が今回発注したモジュール船は貨物積載部に突起の無い全面フラットな甲板「フラッシュデッキ」を採用。さらにバッテリーを搭載した電気推進システムを備える。
 商船三井グループは新規事業の開拓を再生可能エネルギー分野を中心に推進し、中でも洋上風力発電関連事業に力を入れている。洋上風力発電のバリューチェーンに対して、建設前の立地環境調査、建設部材海上輸送、設備設置、運用・保守などの幅広いサービスを提供する戦略。商船三井はこのうち部材海上輸送について、「国内洋上風力発電の進展とともに、風車部材の国内輸送における需要拡大が見込まれるため、さまざまな場面での活躍が期待される」ことから、日本籍モジュール船の新造整備を決めたとしている。
 商船三井ドライバルクは2022年に「プロジェクト貨物部」を発足し、日本・アジアで拡大する陸上・洋上風力発電所向けの部材輸送を強化するため同部内に「風力プロジェクトチーム」を設置した。同社は22年4月から3700重量トン型モジュール船“New Dragon”を用船し、23年は中国から北海道向けに陸上風力発電のブレードとタワーを輸送したほか、韓国から台湾向けに洋上風力発電の部材を輸送した。同船では風力発電の建設がない冬場の閑散期は風力関連以外の貨物も積極的に手掛け、中国から日本の造船所向けのLNG燃料船の燃料タンクなどを輸送した。
 商船三井ドライバルクは“New Dragon”の運航でモジュール船のノウハウを蓄積し、新造船に生かす。また、新造船就航後も“New Dragon”の運航を続け、同船のように小回りが利くモジュール船のニーズに応える考え。

輸送契約に調印した(左から)商船三井ドライバルクの平田浩一社長、JFEエンジニアリングの四方淳夫副社長

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