2024年3月7日無料公開記事洋上風力発電
メーカーは一部改善、発電は減益
洋上風力関連企業の2023年決算、事業再編進む
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洋上風力関連企業は体制整備に着手(写真=Adobe Stock)
世界の洋上風力関連企業の2023年決算は、サプライチェーンの混乱が収束したことなどにより大手風力発電機メーカーで収益の改善が見られた。また、メーカー大手3社のうち2社では事業の立て直しを目的として、親会社による事業再編が進められている。発電大手の決算は洋上風力発電所の運転開始に伴う発電量の増加などにより増収が見られたが、ポートフォリオの見直しに伴う減損などが利益を押し下げた。世界で洋上風力産業が急成長する中、体制整備に着手している。
風力発電機メーカーのベスタスの2023年決算は売上高が前年比6%増の153億8200ユーロ、営業利益が2億9200万ユーロ(前年は15億9600万ユーロの赤字)、純利益が7800万ユーロ(同15億7200万ユーロの赤字)で黒字化した。前年はロシアのウクライナ侵攻に伴う減損や中国・インドの製造拠点の減損などにより赤字に転落していた。23年の粗利率は8.3%となり、前年の0.8%から上昇した。収益増加に加え、風力発電機などの価格上昇とサプライチェーンの混乱の緩和によるものだとしている。
受注残高は陸上、洋上風車やサービス部門を含め前年比21%増の601億ユーロだった。洋上風力発電機の23年の納品は約1GWで、受注は3.1GW、受注残は4.3GW。同社は現在、洋上風力部門で「V236-15.0MW洋上タービン」の展開に注力しており23年は同機種の最初の確定注文を獲得した。
同じく発電機メーカーのシーメンス・ガメサ・リニューアブル・エナジーの23年売上高は陸上・洋上風力合わせ、前年比7%減の90億9200万ドル、43億4700万ドルの損失(前年は6億1700万ドルの損失)だった。シーメンス・ガメサでは23年度、会計の前提と見積もりについて大幅な変更があり、主に風力タービンのコンポーネントとプラットフォームの故障率に関するものだとしている。
シーメンス・ガメサは昨年、シーメンス・エナジーによる全株式の取得により同社の一部門となった。収益性改善を目的としたもので、シーメンス・エナジーは2026年度までに風力事業の収益を損益分岐点まで改善することを目指す。今後の研究開発方針について、よりコスト効率の高い製品やサービスの実現を目的に置いた次世代技術の開発に重点を置くとしている。
ゼネラル・エレクトリック(GE)の陸上や洋上、水力発電などを含む再生可能エネルギー部門の売上高は前年比17%増の150億5000万ドル、セグメント損失は14億3700万ドル(前年は22億4000万ドル)で赤字が縮小した。同社は洋上風力発電事業について、製品とプロジェクトコスト見積もりについて引き続き困難に直面しているとした。大型タービンの生産とコスト削減の推進に取り組んでいるが、実行スケジュールの変更などにより、資金回収のスケジュールや契約の収益性に悪影響を及ぼす可能性があるとしている。
GEは2018年頃より経営再建を進めており、その一環としてヘルスケア事業、エネルギー事業、航空事業の分社化を発表した。エネルギー事業については、4月頃にGEベルノバとしてスピンオフする予定だ。3社に分社化することで、それぞれの事業領域に注力し、長期的な成長と価値を生み出せる戦略的な柔軟性を発揮することができるとしている。
風力発電大手の決算では、オーステッドの洋上風力部門の23年EBITDA(金利・税・償却前利益)は前年同期比29%減の138億1700万デンマーク・クローネ(約20億1000万ドル)だった。増益要素として台湾沖洋上風力の一部運転開始による発電量の増加や、風速の上昇などがあったが、96億2100万デンマーク・クローネ(約14億ドル)のキャンセル料を計上したことなどがEBITDAを押し下げた。
同社の洋上風力発電ポートフォリオは設置済みが8.9GW、建設中が6.7GWの計15.5GW。このほか、米国とポーランドの公募で計3.7GW相当の海域を落札している。同社は近年急速に進めてきたプロジェクトポートフォリオの見直しを完了した。ノルウェーやスペイン、ポルトガル市場から撤退し、日本市場での開発については優先度を下げる。今後は2030年に向け洋上風力ポートフォリオを20〜22GWに拡大することを目指す。また、30年に向けては洋上風力分野で約1800億デンマーク・クローネ(約260億)の投資を行う予定だ。
ヴァッテンホールの陸上・洋上合わせた風力発電部門の23年純売上高は前年同期比13%減の253億7300万スウェーデン・クローナ(約24億4000万ドル)、営業利益が同60%減の65億4400万スウェーデン・クローナ(約6億3000万ドル)だった。主に電気料金の下落により大幅な減益となった。同社が保有する風力発電の総設備容量は洋上風力が前年同期比30%増の約3.4GW、陸上は同10%増の約2GWだった。
また、同社は昨年12月、英国沖で開発を進めていた総発電容量4.2GWのノーフォーク洋上風力発電プロジェクトをRWEに売却することを発表した。取引完了は24年第1四半期を予定しており、買取価格は10億ポンド(約12億7000万ドル)に達する。