2024年3月4日無料公開記事洋上風力発電
浮体式風力「オイル&ガスの延長」
WIND EXPOでパネル討議
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東京ビッグサイトで開催されたWIND EXPO[春]~第13回[国際]風力発電展の最終日となった1日、浮体式洋上風力発電に関するカンファレンスが開催され、発電事業者や風車・浮体の供給者によるパネル討議が行われた。浮体式は着床式の延長線ではなくオイル&ガスの知見が活用できる分野であるなどの指摘が挙がった。
自然エネルギー財団の大林ミカ事業局長がモデレーターとなり、パネリストとして、スコットランドと日本の発電事業者が設立したSSEパシフィコの渡邊汗・エンジニアリング本部長、発電事業者エクイノールジャパンの再生可能エネルギー事業部プリンシパル構造エンジニアの島崎純志氏、独特の浮体技術を持つBWイデオルの山田睦・アジアパシフィック地域事業開発マネージャー/カントリーマネージャー、GEがエネルギー事業を分社化して発足するGEベルノバ・インターナショナル・エルエルシーの洋上風力事業部の大西英之日本代表が登壇した。
浮体式洋上風力の日本市場への期待について、発電事業者の立場から渡邊氏は「日本市場はアジア・パシフィック地域と比べると少し遅れているとみられるが、着実にデモプロジェクトがあり、そこから商業化に向けた大規模化の目線で開発できる土壌が整っている。風資源が豊富で、EEZ(排他的経済水域)を含め膨大な海域が市場として見込まれるからだ」と指摘。島崎氏も「日本市場は世界有数のポテンシャルがあり、われわれが集中する市場の一つ。制度が整い、着実に進んでいるところに歩調を合わせ、長いスパンで開発を進めていく」と語った。
山田氏は浮体式洋上風力の特徴について「太陽光や陸上風力の延長の着床式洋上風力があるが、浮体式はそこからの延長ではなく、オイル&ガスの方から入ってきていると思う。(日本はオイル&ガスの経験が少ないので)経験豊富な海外の経験を取り入れていくべき」と指摘。
大西氏は「2040年、50年を見据えた中で、日本は必ずしも遅れているとは思わない。どこも一斉に並んでいると思う。要素技術をしっかり押さえたら十分にこれから追いつき、逆転できるだろう。日本は要素技術が豊富で、オイル&ガスはないが素材、造船、大型構造物の建造、EPCなど世界に誇る技術ある」として、洋上風力という新たな産業を作るうえでの要素技術が日本は集積しているとの認識を示した。
コンクリート製の浮体技術を持つBWイデオルの山田氏は「大量導入の政府目標を考えると、年間数百基を造る必要がある。建設場所やマテリアルの制約が出てくるので、そこをどう打開していくかを考えている。コンクリートで浮体を造ると、製造場所の制約がなく、ローカルで造れる。検証すべき点はたくさんあるが、時期尚早であるとか、前例がないといってしまうのはもったいない。日本の国土に合ったものを深堀りすることで日本の目標達成につながる」と語った。
また、島崎氏は「日本は地震のリスクがあるが、オフショアは地震の影響はなくなり、津波も低くなるので、浮体式は安定的な電力生産に適している。オフショア特有のリスクをコントロールして事業をすることが重要だ」とした。
周辺国との協調の可能性について、大西氏は「欧州は多様な船が仕事をしていて、一つのプロジェクトの期間がずれた場合もバックアップが可能だが、日本では(洋上風力関連の船舶が少ないので)タイトなプロジェクトを回していくことは難しい問題。韓国や台湾など近隣で船が増えてくれば融通がきくようになる。欧州のように互いに共通のインフラを融通するといったことはあるべき姿ではないか」との考えを示した。