2023年12月28日無料公開記事内航NEXT
「2024年問題」船社のシナリオ
《連載》「2024年問題」船社のシナリオ⑦
脱炭素対応の輸送需要増にも期待
オーシャントランス
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フェリー・RORO船はEEDI(エネルギー効率設計指標)基準で旧船と比較してCO2排出原単位を約50%削減
フェリー・内航・外航の3事業を手掛けるオーシャントランス(東京都中央区、中内司社長)では、フェリー・RORO船の引き合いが増えているものの、モーダルシフトの本格的な動きが出てくるのはトラックドライバーの労働時間規制強化後と見ている。中長期的には2024年問題よりも脱炭素対応が海運へのモーダルシフトを後押しすると予想。このため運航スピードよりも輸送中のCO2(二酸化炭素)排出削減に重点を置き、荷主の脱炭素をサポートする考えだ。
同社が運航するフェリーとRORO船はそれぞれ4隻と2隻。フェリーは東京/徳島/新門司航路を1日1便、RORO船は東京/八戸・苫小牧航路を週6便運航している。フェリーはリスク分散のために1つの荷主の比率が5%を超えないよう努め、RORO船は王子HDの紙製品原料が主要貨物だが、多様な貨物の混載を進めている。
2024年問題への対応に関する問い合わせが10月以降増えているという。営業本部フェリー事業部営業企画部の石丸重孝部長は「規制強化がスタートする2024年4月が目前に迫って対応策を考え始めた企業が増えている印象だ」と話す。同社では本格的な動きが出てくるのは規制強化後だと見る。中内社長は「連日メディアでも報道されているが、海運へのモーダルシフトがすぐに進むかは疑問だ。実際に規制が始まるまでは本格的な動きはないのではないか。しかし受け入れ準備は進め、チャンスを逃さないようにしたい」と見通しを語る。
同社では、中長期的には2024年問題よりもカーボンニュートラルが海運へのモーダルシフトを後押しすると予想し、環境対応を進めている。同社のフェリー・RORO船はEEDI(エネルギー効率設計指標)基準で旧船と比較してCO2排出原単位を約50%削減し、運航方法にも気を配っている。石丸部長は「フェリーの運航速度を上げるとその3乗の燃料が必要になる。高速性よりも環境への負荷軽減を重視することで荷主の環境対応需要に応えたい」と意気込む。
荷主に対する情報提供にも努めている。石丸部長は「二酸化炭素の排出量についてはさまざまな計算方法があり、統一されていないのが現状だ。当社では独自の計算方法でより正確な排出量を算出している。陸送ルートの情報をいただければ当社のフェリーにモーダルシフトした場合の削減量を詳細にお伝えできる」と話す。
新造船の新燃料対応も環境にやさしい運航に欠かせないが、先行きの不透明さが課題だ。中内社長は「新燃料については正直全く分からない。技術革新が進んでいない現在の状況では決定できない。フェリーは2016年に一括建造したので、遅くとも15年以内にはリプレースしなければならない。それに向けて情報収集を行っているところだ」としている。