2023年12月18日無料公開記事「2024年問題」船社のシナリオ
内航NEXT
《連載》「2024年問題」船社のシナリオ⑤
高速性強みに宅配貨物を獲得
東京九州フェリー
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SHKグループのノウハウを生かして横須賀/新門司を21時間で結ぶ
東京九州フェリー(北九州市、小笠原朗社長)は、SHKグループの日本海航路でのノウハウを生かして横須賀/新門司を21時間で結ぶ高速フェリーを運航し、宅配便といったスピードを求められる貨物を獲得している。2021年の就航以降、トラックの積載台数は増え続けており、さらなる利用拡大に向けて九州での営業に注力。走行距離が少なくなるため車両が傷みにくいといったフェリーの利点をアピールする。
同社は横須賀/新門司航路を日曜・祝日を除いて1日1便運航。トラック積載台数は約150台で、横須賀発は宅配便貨物、食品、日用品、建材など、九州発は青果や畜産物、冷凍食品などが多い。
小野裕幸東京支店長は「就航後、トラックの乗船台数は徐々に増えている」と声を弾ませる。就航前から物流事業者と対話を重ねて利用しやすいダイヤを設定したことが奏功。2024年問題をきっかけにトラック運送事業者のみならずメーカーなどの荷主からの問い合わせも増えているという。
小野支店長は「乗船時間が21時間という高速性が宅配便のようなスピードが求められる貨物の乗船につながっている」と話し、「高速フェリーが実現できたのはグループの新日本海フェリーのノウハウがあったから。敦賀/苫小牧は新門司/横須賀と航海距離が同程度で、21時間で運航している。東京港発着では東京湾内の速度制限によりデイリー運航を実現できないため、横須賀港と新門司港を結ぶことにした」と説明する。
同社では月・火・水曜日の乗船が多く、金曜日の九州発と土曜の横須賀発が比較的空いている。その原因について、小野支店長は「土日はメーカーや倉庫が休みのため土曜日に着いても月曜日降ろしになり、ドライバーの拘束時間が延びてしまうため」と分析する。
トラックドライバーの労働時間規制強化が始まる2024年4月が近づくにつれて、車両の種類に変化が出てきているという。就航当時は無人トレーラと有人トラックの比率が同程度だったが、最近は無人トレーラが6割、有人トラックが4割となっている。無人トラックも増えているといい、小野支店長は「九州ではトレーラの普及が進んでいる最中だが、ドライバーを有効活用するためにトレーラを所有していなくても無人でトラックを航送しているようだ」と話す。
小野支店長は2024年問題の貨物輸送量への影響について「新規の問い合わせも多く、満船になる日も近いと見ている。年末の繁忙期はかなり逼迫するのではないか」と語った。さらなる利用増に向けて九州での顧客獲得が欠かせないとし、同地域での営業に特に力を入れている。小野支店長は「私自身も就航から2年間九州で営業を担当したが、運送会社からはフェリーは運賃が高いという印象を持たれていた。しかし、フェリーに乗船している間は走らないので車両やタイヤなどが長持ちするうえに事故のリスクが下がる。トラックの車両価格も上がっており、車両の寿命を延ばすことに対して運送会社の関心は高い。長距離運行に使うことが不安な車齢が高いトラックでも、フェリーを活用したルートであれば使用しやすい。こういったメリットを訴えて契約につなげてきた」と話し、「就航当時から乗船いただいているお客さまはメリットが分かってきたとおっしゃってくださる」と手ごたえを感じている。