2023年12月8日無料公開記事「2024年問題」船社のシナリオ 内航NEXT

《連載》「2024年問題」船社のシナリオ③
自動車部品の輸送量増加
阪九フェリー

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自前シャーシを使用した海陸一貫輸送サービスを提案

 阪神/北九州航路を運営する阪九フェリー(北九州市、小笠原朗社長)では、2024年問題を契機に自動車部品の輸送量が増えている。自動車メーカーが従来陸送していた部品のうち、早く出荷できるものを海上輸送へシフトしているためだ。このところ有人トラックの比率が上昇しているが、数年かけて無人シャーシ化が進むと予想。これを踏まえて阪九フェリーは自前シャーシを使用した海陸一貫輸送サービスを提案している。
 同社は新門司/大阪・神戸航路を毎日運航。投入するフェリー4隻はいずれもトラックを277台積載できる。2020年に2隻をリプレースし、2024年問題を見据えてトラックの積載台数を従来船より2割増やした。
 主要貨物は、食品・飲料、自動車部品。九州営業本部長と貨物営業部長を務める平本修取締役は自動車部品について、「自動車メーカーが2024年問題に向けて陸送から移行できるようリードタイム緩和などの対応を進めており、時間が合うものからフェリー利用するといった動きが出てきている」と説明する。
 2024年問題のこれまでの影響では、有人トラックをフェリーに乗せて対応する事業者が増えつつあるという。阪九フェリーの有人トラック比率は従来35%前後だったが、最近は月によっては40%近くで推移している。平本取締役は「現在、全線陸路の関東/九州の輸送で、関西/九州部分のみを海上輸送に切り替えて、残りの関西/関東は陸路輸送のまま2024年4月以降の改善基準告示を乗り切ろうと考える事業者は多い。規制強化を見据えてもそのままトラックをフェリーに乗せようという段階。無人シャーシへの移行はまだ進んでいない」と分析する。
 モーダルシフトの推進には荷主の理解が必要になる。「集荷時間とリードタイムをフェリーに合わせていただかないと難しいが、倉庫などでも働き方改革が進む中、リードタイムを延長するのは簡単ではない。現在は関西/九州は一晩で走れる距離と見なされ、朝一番の納品だと陸路を選択せざるを得ない」(平本取締役)。同社は荷主向けセミナーや自治体のイベントなどを活用して周知活動に取り組んでいる。
 平本取締役は「少子高齢化や若者の仕事に対する意識の変化によってトラックドライバーが減っていくことは避けられず、その中で無人シャーシ化が進む。ただ、中小企業が発着港で2つの拠点を持つのは非常に難しいため、当社が海陸一貫輸送サービスを提供することでトラックドライバー不足でも運べる体制を整備したい」と話す。
 平本取締役は、トラック・海運を含む国内物流を持続可能にするために物流業界全体の適正運賃の収受が不可欠と話し、この問題が2024年問題を契機に好転するかに注目している。「トラックの運賃が上がらないとフェリー船社の売り上げも上がっていかない。そうなると次の新造船や新燃料への対応は難しい」と話し、行政の指導力が鍵になるとの認識を示した。

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