2022年11月29日無料公開記事内航NEXT 内航キーマンインタビュー

<内航NEXT>
《連載》内航キーマンインタビュー㉓
内航は転換点、働き方改革で魅力向上
大阪商業大学・松尾教授

 内航海運研究会事務局長を長年務めた大阪商業大学総合経営学部商学科主任の松尾俊彦教授(写真)は、今の内航業界について「大きな転換点だ」と指摘する。働き方改革や2024年問題、これまでの課題を解決できると、「魅力ある職場に近づき、陸上産業とも伍していける産業となる」と期待を示した。

 松尾教授は現在、日本海運経済学会常任理事、日本物流学会副会長、日本港湾経済学会長などを務めている。インタビューの概要は次のとおり。
 ― 内航で今、関心を持っていることは。
 「2024年問題だ。トラックドライバーの労働時間を年間960時間に制限することになった。労働基準法改正で働き方改革が見える形となる。そのため船員も働き方改革を進めないといけない。内航船員も船員法で1日14時間、週72時間となっているが、499総トンの小型船では船長が当直にも入らないといけないため、長時間労働が常態化していた。労務管理を船長が担っていたが、船長も長時間働き、船員の労務管理は甘くなっていた。今年4月に施行された海事産業強化法で「労務管理者責任者制度」が創設され、労務管理の責任者は船舶所有者となり、労務管理責任者を別に置いてもよいことに決まった。記録簿も陸上に置く。これは船員法の大きな改正点だ」
 「仮に長時間労働になれば、船主がオペレーターに労働時間を守れるような運航スケジュールを求めることができる。ただし運航スケジュールを変えるとなると、航海数を減らすことになる。それを荷主が理解してくれるかどうか。うまく理解が進めば、船員の働き方改革ができるだろう。法律は今年度1年間トライアルであって、来年4月からは厳格に適用される。内航海運研究会で事業者に今年4月からの状況をヒアリングすると、船主はどう対応していいかとまどっていた。オペレーターは運航回数が減ったと言うが、コロナ禍で輸送需要が減ったこともあり対応できた。経済が回復してくると運航スケジュールをどうするか荷主との話し合いになるだろう」
 ― 船員問題は採用の方もある。
 「若い層は増えてきているが、最近は定着率がよくない。全産業と内航船員で30歳未満がそれぞれ全体にどれくらい占めているか調べると、2021年は全産業16.5%に対して内航船員18.8%と上回った。それで内航船員の新規就業者数を調べると、水産高校から多く入るようになっていることがわかった。その水産高出身の若い船員の定着率が悪いようだ」
 ― 水産高からは漁業や水産会社に就職するのでは。
 「昔は漁船に乗って魚を釣ってから操船を担当するようになっていた。今、魚を釣っているのは外国人労働者だ。だから水産系の会社に就職するのも窓口が狭くなっているようで、内航船員として入ってきている。内航船で3カ月働いて1カ月休暇という働き方が若い人に魅力があるのかどうか。3カ月をもっと短縮したほうがいい」
 「40~50歳代の内航船員は家族もあって稼がないといけないので定着する。一度社会に出た人が新6級で船員になるのも定着はいい。内航船員の高齢化も徐々に改善しつつある。若い船員も、水産高出身の定着率の問題があるが、以前と比べれば改善してきている。だが、小型内航船では新卒をとりたくても制度的にとれないという問題がある」
 ― 制度的にとれないというのは。
 「小型内航船は1人当直だからだ。200~700総トン未満の内航船員の安全最少定員は5人となっている。ブリッジの当直に新卒の船員をいきなり一人で置くわけにはいかない。そのため新卒ではなく、即戦力となる船員を中途採用しようとする」
 「船員職業安定窓口での新規求人数は多いのに、新規求職者数は増えていない。船主が求める船員と、職を求める船員の条件が合っていない。内航船員として働きたいと思える制度にしないといけない。最少定員を変更して、労働時間も考慮した定員にすべきだ。荷役を陸上作業員が担って船員の労働時間を長くさせないようにするなど考えられる」
 ― 船員獲得で成功している具体的な事例はあるか。
 「コロナ禍になってからの話だが、閉店になった飲食店で働いていた料理人が、船の部員となって食事を作ると美味しいので船員から評判がよかったという。その料理人は、部員よりも職員になったほうが給料が上がるので、海技士資格を取得して内航船員となり、高齢船員が退職した。それで料理人を、また部員で採用した会社もあると聞く」
 ― これからの内航業界は。
 「内航海運暫定措置事業が終わって参入規制がなくなった。事業を拡大したい船主は歓迎しているだろう。船員確保ができない船主は事業継続が厳しく、これまでと違う内航業界の姿になっていくのではないか。これに働き方改革がうまくいけば、魅力ある職場に近づいていくと思う。今が大きな転換点だ。モーダルシフトもあって内航輸送に目が向いている。今を乗り切ると、内航業界は陸上産業とも伍して戦っていけると思う」
 ― 厳しい事業環境となる内航船主の道は。
 「グループ化するのがいい選択だと思う。オペレーター主導で船舶管理会社を作って、船主の船に乗っている船員を船舶管理会社に移して、オペレーターといっしょに配乗していく。これは定着問題の改善にもつながる。内航船主からは、経営の面白さがなくなると言うが、船員確保や労働時間管理などから解放される」
 「2017年にまとめられた内航未来創造プランには、国、荷主、海運事業者でつくる安定・効率輸送協議会の設置がある。同協議会を定期的に開催してほしい。今回の働き方改革の動きもあり、国に主導してやってもらいたい」
(聞き手:坪井聖学)
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