2022年10月26日無料公開記事内航NEXT

<内航NEXT>
SNSで内航船員確保を支援
アイテックマリン、技能継承を後押し

石川和弥社長

 アイテックマリン(本社=福岡市、石川和弥社長)は、SNSを活用した内航船員の確保と技術継承の支援に力を入れている。足元では、認知度の低さや内航船員の高齢化から人不足が進み、将来を見据えた人材確保が課題となっている。こうした中、内航業界のインフルエンサー「アニキ船長」(HP=https://www.itecmarin.com/seaman-recruit)(YouTube=https://www.youtube.com/channel/UCM21QkL0sV51cAZ7m5q_CAQ)として、内航船員の仕事内容や職場の雰囲気、船員の魅力を積極的に情報発信することで、会社や職業に興味関心を持ってもらい、採用の促進につなげる。また、熟練技能者の暗黙知となる技能をシステム化し、短編動画などの興味を持ってもらえる形で分かりやすく解説し、育成を強化している。
 アイテックマリンは2019年に設立。同社を立ち上げた石川社長は、前職の三井物産時代に化学品部門でケミカルタンカーの配船業務に携わった。訪船時には、内航船員とともに蒸気漏れや錆が無いかホールド内を見回ったりしたが、「狭いホールド内をほふく前進で進んでいかなければならないなど、内航船員の作業負担は大きい。このまま船員の高齢化が進み、次世代の船員を確保・育成できなければ、今後5~10年後に成り立たなくなる可能性がある」との危機感を抱いた。船員の問題に取り組むことを決め、現在は内航海運の社会的認知度を向上させ、人材の確保・育成を後押しするとともに、熟練技能者から若手船員への技術継承の支援に力を入れている。
 船員の確保に向けては、「『認知』→『関心』→『行動』のステージがある」と石川社長は説明する。まず入り口となる船員の認知度の向上に向けては、YouTubeによる動画やSNSなどを活用して、船員の仕事や船内の雰囲気などの実態を画像や動画などを使って「見える化」し、採用促進につなげている。内航船社や船主の中には、自社ホームページを持たない会社も多い。こうした会社に対しても、手軽に自社をPRできる動画やスワイプ画像を作成し、アイテックマリンが運営するサイトやSNSに掲載することで採用支援を行っている。
 内航業界内での連携によるSNS活用も進めている。例えば、内航タンカー船社でYouTubeの活用を積極的に行う東幸海運の笹木重雄社長とTwitterスペースで週1回程度、公開雑談を行っている。内航船員の日常や働き方、内航業界のリアルな裏話などを発信する。乗船中は通信環境の良くない状況に置かれる内航船員は、通信容量が少ないSNSの利用率が高い。船上でも簡単に検索できる内航業界の情報を発信することで、これまでの求人情報ではリーチできなかった層にもアプローチできるようになった。
 石川社長は情報発信に関して、「ネガティブな情報も含めて、リアルな情報を発信することを心掛けている」と話す。「一般的に公開されている求人情報などでは、必要最小限の情報しか記載されていないケースが多い。だが、内航船員の求職者は、船内の人間関係や作業の内容、休暇の取得状況や、給与・待遇などの情報を求めている。こうした情報を幅広く提供することで、採用後のミスマッチを防ぐ」としている。情報発信を積極的に行うことで、各職場における居住・労働環境の改善につなげていくことも狙う。
 船員の育成に関しては、ベテラン技能者の暗黙知をシステム化し、動画としてまとめることで技術継承や教育支援を進めている。石川社長は、「ベテランの船員はカーゴタンクを叩く音で、鉄板の減り具合を瞬時に把握するなど、素晴らしい技術を持っている。内航船員の高齢化が進む中で、こうした技術を若手船員に継承していかなければならない」と話す。船員目線で分かりやすく技術を解説する動画を発信することで、技術継承をサポートしている。
 具体的には、タンククリーニングや荷役など危険が生じる作業について、作業者の視点で撮影。ヒアリハット集をショート動画化することで、若者に見てもらえる形式にし、注意を呼び掛けている。さらに、指導・教育が得意な技能者が業務を教える様子をまとめた動画や、船内でのハラスメント防止を目的とした動画なども配信している。今春に改正された船員法についても、改正内容を周知することを目的とした動画を作成し、配信した。
 石川社長は、「将来的には、人の課題が解決した後は、船舶(アセット)の課題解決を進めていきたい。外航も含めて、特にシステム化やデジタル化を進めていく必要がある」と話す。船舶のデジタル化に必要となる、IT知識に関する人材教育支援も進めていく方針だ。
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