2022年10月11日無料公開記事フェリー座談会 内航NEXT

《連載》フェリー座談会③
モーダルシフトの鍵は無人航送
オーシャントランス×四国開発フェリー×商船三井フェリー

  • X
  • facebook
  • LINE
<座談会参加者(社名五十音順)>
オーシャントランス 髙松勝三郎社長
四国開発フェリー 瀬野恵三副社長
商船三井フェリー 尾本直俊社長
<司会>
海事プレス編集長 中村直樹

■2024年問題は追い風か?

 ― トラックドライバーの時間外労働上限規制の強化に伴う「2024年問題」が国内物流における懸案事項となっている。モーダルシフトの受け皿として、フェリーの役割が高まっている。
 髙松「『モーダルシフト』という言葉は40年前から言われ続けている。北海道は本州と陸路でつながっていないため、どこかで船を使うことになる。そのため、北海道航路はモーダルシフトがあるようで無い。だが、九州・瀬戸内方面への輸送は基本的にトラックが主流だ。2024年問題はフェリー業界にとって追い風になる可能性もあるが、フェリーを使ったらコストが高くつくケースもあり、陸路でそのまま走るということが続くことも想定される」
 尾本「大手陸運事業者は、働き方改革関連法にきちんと対応していくと考えるが、全ての陸運事業者が直ちに対応できるかどうかが鍵となる。荷主をはじめ関係者が改めて同法を理解し、協力していく必要がある」
 髙松「陸運事業者として順法精神はあると思うが、2024年問題に対応していくためには、やはり増加するコストに見合う運賃を荷主から頂かなければならない。今の運賃水準では2024年問題への対応は難しいのではないか」
 瀬野「昨年、フェリー業界の仲間である東京九州フェリーが横須賀/新門司航路を新設した。素晴らしい取り組みだが、相応の運賃を支払う必要があるため、陸運事業者としてなかなかモーダルシフトを進めていけないのが現状だ」
 尾本「フェリー会社として、2024年問題への対応とドライバーの労働環境是正に向けて陸運事業者に提案していきたいのは、瀬野さんが最初に話された無人航送だ。両端でドライバーとトラクターヘッドを手配して、海上輸送部分は無人シャーシで運ぶことで、ドライバーの走行距離は少なくなる。陸運事業者が、ドライバーの労働環境改善のための代替輸送手段として船という選択肢を知ってもらわない限りは、積極的にモーダルシフトを推進することは難しいのではないか」
 髙松「無人航送を行うためには、両端でトラクターヘッドを1台ずつ置き、最低でもシャーシを4台確保する必要がある。これで初めて1日1台の輸送が可能になる。対して、10トン車が1台あれば陸運事業者は自由かつ柔軟に商売ができる。無人航送の仕組みを整備するためには多額の設備投資が必要となるが、そこまでのリスクを負って体制整備を進める会社が果たしてどこまで出てくるかが課題になるだろう」
 尾本「確かに現状では、無人航送の体制整備を進めている陸運事業者は資金力のある会社だ。中小の陸運事業者はなかなか投資に踏み切ることが難しくなっている」

■道路支援とイコールフッティングに

 ― 2024年問題対応によるモーダルシフトが進むためには課題も多いが、近年は自然災害も激甚化・頻発化している。BCP(事業継続計画)の観点からフェリーを使うニーズも高まるのではないか。
 瀬野「間違いなく高まるだろう。地震や津波が発生した場合でも、フェリー・ROROは岸壁さえ確保できれば有事の際も運航することができる。災害に強い輸送モードだ。一方で、貨物鉄道は自然災害によって寸断する事例も発生している。これまで在来線への投資をあまり行ってこなかったため、今後もこうした事例が頻発する可能性がある」
 尾本「確かにフェリーも天候が悪ければ欠航するが、欠航率は貨物鉄道と比べると断然低くなっている」
 瀬野「また、同じ内航船でも499総トン型船や199総トン型船のような小型船が今後も現状の体制のまま存続するとは思えない。こうした小型船で運ばれている貨物がユニットロード化して、フェリーやRORO船にシフトしていくのではないか」
 ― 鉄道や内航船との比較では優位性があるが、道路(トラック)との比較についてはどうか。
 瀬野「フェリーは海上に道路を作って運ぶというコンセプトで始まっており、現在まで海の高速道路という発想で国内物流を支えてきた。だが、国の道路予算は現在、約3兆円ある一方で、港湾予算は約2500億円だ。これだけの予算の差がある中で対抗していかなければならない」
 「かつて民主党政権時代に税金を投入して高速道路を無料化するといった議論があった。利便性や純粋な価格競争によってフェリーが他の輸送モードに負けるのは仕方ないと思うが、税金によって潰されようとした産業はない。当時はフェリー業界が団結して反対した」
 髙松「高速道路が無料になったらフェリーは成り立たない。税金を投入するのであれば、イコールフッティングであるべきだ。フェリーを擁護すべきとは言わないが、どちらか片方が重点的に優遇されれば対等な競争を行うことは難しい」
(つづく)

髙松社長

瀬野副社長

尾本社長

関連記事

  • カーゴ