2022年10月7日無料公開記事フェリー座談会 内航NEXT

《連載》フェリー座談会②
環境対応、バッテリー船が有望
オーシャントランス×四国開発フェリー×商船三井フェリー

<座談会参加者(社名五十音順)>
オーシャントランス 髙松勝三郎社長
四国開発フェリー 瀬野恵三副社長
商船三井フェリー 尾本直俊社長
<司会>
海事プレス編集長 中村直樹

■まずはCO2排出量の把握を

 ― カーボンニュートラルが叫ばれる中、フェリー業界でも環境対応が大きな課題となっている。
 尾本「昨年、国土交通省が主催した『内航カーボンニュートラル推進に向けた検討会』において、内航や造船、舶用関係者がカーボンニュートラルに向けた議論を開始した。結論として、2030年度までは現在の技術をそのまま活用し、13年度比でCO2排出量を17%削減することを目標に掲げた。保守的な目標であり、50年カーボンニュートラルとの間には相当なギャップがあると考えている。一方で、内航業界だけでカーボンニュートラルを実現するのは現実的には難しく、先行して検討が進んでいる外航海運の取り組みを参考にしていく必要があるだろう。ただ現時点では明確なソリューションは見えていない。外航の環境対応の取り組みを、いかに内航の世界に取り込めるかが鍵となるだろう。また、一言で内航といっても、われわれのようなフェリー・RORO船の業界と、499総トン型のような一般貨物船の業界では事情が全く異なる。内航を一緒くたにして考えても答えはなかなか出ないと思う」
 髙松「いきなりゼロエミッションを実現することは難しい。過渡期にどういうことができるかを検討していく必要があるだろう。既に外航ではEEXI(就航船燃費規制)とCII(燃費実績格付け制度)という制度が出来上がっているが、内航ではこうした制度が無い。そもそも内航船社の中には、自社の船がどの程度のCO2を排出しているか把握していないケースも多い。まずはCO2排出量を把握することから始めるべきだろう」
 瀬野「現在、内航業界には3つの課題があると考えている。一つは永遠のテーマとなるが、船員不足の問題だ。内航には2万7000~2万8000人の船員がいるが、内航貨物船は4~5人が乗船する小型船が多い。今後、人が減ることはあっても増えることは考えにくい。外航もかつては同じ問題に直面していたが、外国人船員を配乗し始めてからは問題にならなくなった。しかし、内航はカボタージュ規制もあり、外国人船員を使えない。ここで2つ目の課題となるデジタルにつながるのだが、陸上支援も含むデジタル技術を活用することで少ない人数で安全運航できる仕組みを作っていくことが必要となる。3つ目の課題はグリーンだ。フェリー業界としても、環境対応を進めていかなければならない」

■クリーンな電気の生成も課題

 ― フェリーの環境対応として、商船三井グループではフェリーさんふらわあと商船三井フェリーがLNG燃料フェリーの新造整備を決めた。
 尾本「いきなりのゼロエミッションは難しくても、今ある技術を使うことでCO2を削減できる。その一つの手法がLNG燃料の活用だ。商船三井グループとして、環境対応に積極的に取り組んでいることを内外に示すため、LNG燃料フェリーを建造するという選択肢を取った」
 瀬野「内航業界の3つ目の課題として挙げたグリーンへの対応では、商船三井フェリーが採用したLNG燃料の活用や、次世代エネルギーとして期待される水素の利用も考えられる。しかし将来的には、全て電気で走る船舶にシフトしていくべきだ。航続距離の問題などもあり、外航船では難しいが、内航船では実現できると思う。現在、さまざまな交通機関があるが、エンジニアが乗っているのは船舶のみとなっている。バッテリー船にすれば、機関士が乗船する必要がなくなるかもしれない。環境対策にもなるし、第1の課題に挙げた船員不足対策にもつながる。実現のためには技術革新やルールの見直しなどが必要になるが、そこに向かって関係者間で対話し、技術革新も含む知恵を出していかなければならない」
 ― バッテリー船は有力な候補になり得るか。
 尾本「e5ラボがEVタンカーを就航させており、私の知る限りでは欧州の近距離フェリーでバッテリー船が就航している。しかし、技術上の課題は多く、今のままでは汎用性のあるバッテリー船を普及させることは難しい。理由の一つは、電池が重いことだ。どの程度の馬力で航行するかにもよるが、今の内燃機関に代わる馬力を電気で賄うとなると、重量が重くなる。結果として、船の貨物積載能力が低下し、経済性の問題も出てくるだろう。蓄電池の容量がもう少し大きくならないと現実的には難しく、瀬野さんが話されたバッテリー船はもう少し先の話になる。ただ、自動車メーカーなどが中心となって開発を進めているため、もし汎用性の高い電池が誕生すれば、船への利用の可能性も出てくると考えている」
 髙松「バッテリー船で使う電気をどのように作るかという点も重要な論点だ。足元では陸上電力供給の話も出ているが、石炭や石油など化石燃料で作った電気では意味がない。再生可能エネルギーである必要がある。しかし、日本はエネルギーを海外輸入に依存している。まずは日本国内で再生可能エネルギーをどれだけ作れるのかということを議論すべきだ」
 ― クリーンなエネルギーで作った電気を動力とする船ができれば、環境問題や船員不足問題などさまざまな課題が解決できることになりそうだ。
 瀬野「だが、こういったことを真剣に議論する場所が無いのが現状だ。本来、業界団体は、こうした船員不足問題やデジタル・グリーンといった中期課題への対応策を議論する場でなければならないと考えている」
(つづく)

髙松社長

瀬野副社長

尾本社長

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