2022年7月27日無料公開記事内航NEXT 内航船主

《連載》内航船主<上>
一杯船主は減少傾向
規模必要に、メガ船主誕生か

内航船主業でも集約進む

 内航船主の集約が進んでいる。船員不足、船員の高齢化といった難題の解決にはスケールメリットが必要だからだ。小規模事業者による事業継続は簡単ではなく、すでに1隻しか保有しない一杯船主は減少傾向にあるとされる。安定的な船員の確保・育成、安全運航のためには企業体力の向上が必要不可欠で、10隻以上を保有する大手船主も増え始めているという。内航における将来的なメガ船主の誕生を予想する声もある。規模拡大が内航船主の生き残りのカギになってきた。

 「内航ケミカル輸送では乗組員不足が深刻化している。輸送需要は旺盛にもかかわらず、乗組員が手配できないために運べない、という事態が単なる懸念ではなく現実に内航ケミカル業界では発生している」(内航船社首脳)。
 内航海運が抱える課題の1つは、言うまでもなく船員不足だ。船種によって状況に濃淡はあるものの、慢性的な人手不足に加えて、船員の高齢化も進んでいる。すでに小型船を中心に運航に支障が出ているケースもある。高齢船員の引退ラッシュが到来した時、影響の一層の拡大が懸念されている。
 解決策のメニューは出揃っている。少人数でも安全にオペレーションを行える体制を整えるための新技術の導入。船員の労働環境の改善を図ることも必要不可欠で、労働時間の適正化・明確化、船内での健康確保の検討といった対応が進み始めている。ソフト面に加えて、船舶というハード面からも労働環境や船員育成に配慮した船型が開発されている。
 こうした施策を進めるにあたって必要なのはスケールメリットだ。特に内航船主の企業体力向上が喫緊の課題になっている。群雄割拠で、小規模船主が林立する業界構造は持続可能ではない。
 内航船社首脳はこう話す。
 「将来は船主の集約が必ず必要になる。内航船主1社あたりの保有隻数を増やし、スケールメリットを出さないと持続的ではない。1社1隻で船員を確保し、船舶管理を続けていくのは現実的ではない」
 「今年からの船員法改正に伴い、安全管理規定、働き方改革や労働条件の改善なども進んでいる。一杯船主などの事業環境は今後厳しくなっていくので、ある程度再編は進んでいくのではないか。一定の企業体力がないと事業継続は厳しくなっていくだろう」
 日本内航海運組合総連合会などが作成した「内航海運の活動」(令和3年度版)では、「内航海運事業者は、小規模事業者が主体で後継者の確保が難しくなっている。登録貸渡事業者1178社のうち約6割が1隻所有の一杯船主である」としている。この資料によると、2隻以上を保有している事業者は約4割で、5隻以上を保有する大手内航船主数は1割にも満たない。
 小規模事業者が圧倒的に多い現状は、内航海運が抱える問題に対応しにくい。しかし、少しずつ状況は変わり始めているようで、内航船社首脳は「内航船主も最近は集約化する傾向にある」と指摘する。
 内航船融資を手掛ける金融関係者も「一杯船主は減ってきている。企業体力のある内航船主は複数隻の船隊を保有しているところが大半だ」と話す。以前の内航船主といえば、1隻しか保有しない一杯船主が圧倒的に多く、複数隻を保有していても5隻以下の船主がほとんどだったが、今では10隻や15隻の内航船隊を有している船主も増えてきているという。
 船員確保の観点などから、起用する内航船主の数を絞り込んだオペレーターもいる。ある船社は「船主数を減らす代わりに、1社あたりの保有隻数を増やして、船員確保の面でスケールメリットを出すことができるようにしている」と明かす。1社あたり複数隻を保有することで安定的な船員の確保につなげているという。
 数は少ないが、外航船主の中には祖業である内航船に再び目を向ける向きもある。為替リスクを負わない円収入に魅力を感じたり、環境対応やデジタル化で資本力が生きるケースが出てくると見ているからだ。「企業体力のある外航船主が、内航船主の集約化の流れに拍車をかけるかもしれない」(金融関係者)。
 船員不足に直面し、オペレーターの要請もあって、内航船主も変わり始めている。持続的な事業にするためには規模の利益が必要との認識が根付きつつあり、「将来は内航のメガ船主も出現するのではないか」(金融関係者)と言われ始めた。
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