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2025年2月6日無料公開記事

移動型の陸上支援センターが完成
無人船「MEGURI2040」、災害時も遠隔航行支援継続へ

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 日本財団の無人運航船プロジェクト「MEGURI2040」ではこのほど、陸上から複数船舶の航行を遠隔支援する移動型の陸上支援センターが完成した。5日に都内で報道陣に公開された。カーゴトレーラー型の支援センターで、自動車でけん引することで移動が可能。災害時などにも船舶の遠隔支援業務が継続できる。移動型の遠隔支援基地は世界初で、必要機能をコンパクトに収めたシステムとして日本無線が開発した。今年夏から始まる実証航海では、完成済みの常設型の陸上支援センターとともに自律運航船4隻を遠隔支援する。
 陸上支援センターは無人運航船の実用化にあたって必要になる設備で、船舶に設置されたカメラやレーダーなどの情報をもとに運航状態を遠隔でモニタリングし、必要に応じて本船とコミュニケーションを取ったり遠隔支援を行う。自律運航の実装を見据えると、災害や停電などの緊急時でも船舶の遠隔航行支援を継続するために、安全な場所に移動してオペレーションを継続できる移動型も必須となる。そこで「MEGURI2040」ステージ2では、常設型と移動型の2つの支援センターを設置。常設型は昨年7月に兵庫県西宮市の古野電気社屋内に完成済みで、今回はこれに続いて日本無線が移動型を完成した。
 必要な機能をフル装備する常設型に対し、移動型は全長7mのカーゴトレーラーの中に遠隔支援に必要な機能をコンパクトに配置した。
 移動型センターの内部は、前方3面の大型スクリーンと、前後2つのブースからなる。大型スクリーンには無人運航の遠隔監視に必要な情報を選択して表示できる。前方座席は船長・航海士が着座するフリート監視・支援ブースで、画面に航行の監視と操船支援用のさまざまなコンテンツが表示される。後部座席は機関長・機関士が着座する機関の監視・支援ブースで、エンジンや潤滑油など各供給システムの健全性と稼働状況、機関士の当直の確認などができる。
 限られたスペースの中で効率的な作業環境を実現するために、ブースなどの配置を決定。コンテンツの視認性を確保できるように、座席とスクリーン角度を調整し、前後座席の座面高さなども工夫した。「サーバーをクラウド化して必要最低限の機器としたことで、スペースをコンパクト化したほか物理的障害にも強い構成とした」(日本無線の佐藤茉莉陸上支援技術リーダー)
 システムのコンパクト化は「将来の社会普及を見据えたもの」(日本財団の海野光行常務)とのねらいもある。構成要素を絞り込んでミニマム化し「実用化にあたって船舶管理会社が導入しやすいシステムの実現を目指した。移動型としてもオフィスに設置する形でも適用でき、ミニマム化によりコスト面・スペース面でもメリットになる」(日本無線の井上眞太郎執行役員)。
 支援センターのデザインは、海事産業の人材確保に向けたイメージも重視した。内装は未来の秘密基地を思わせるデザインとし、電動の操作テーブルの稼働にも効果音を入れるなど、子供が夢や希望を持てるような工夫が凝らされている。トレーラー外観も一般公募のデザインとした。
 「MEGURI2024」の第2ステージでは、無人運航船の社会実装を目指して53社がコンソーシアムを組んで取り組んでいる。陸上からの複数船舶の遠隔支援が開発テーマの1つとなっており、常設センターと移動センターの2つで、4隻を同時にモニタリングする予定だ。
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