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2023年2月22日無料公開記事内航NEXT 内航キーマンインタビュー

<内航NEXT>
《連載》内航キーマンインタビュー㉚
多彩な船種と短納期でニーズに応える
三浦造船所・三浦唯秀社長

 内航船建造大手の三浦造船所は、貨物船からタンカー、フェリーまで多種多様な船種を建造している。豊富な製品メニューをマーケット環境や顧客のニーズに応じて短納期でも建造できるのが強みで、不況時も高い操業水準を維持してきた。三浦唯秀社長は「内航船市場もカーボンニュートラル化などの影響が大きくなっており、状況に応じて柔軟にニーズに応えていきたい」と語る。

■内航業界も脱炭素化の影響大

 — 内航船は暫定措置事業の終了、コロナ禍、鋼材価格高騰など取り巻く環境がここ数年大きく変化したが、現在の事業環境は。
 「今年に入って新造船の案件は増えているが、昨年来の鋼材をはじめとする資機材価格の高騰の影響が非常に大きく、船価を上げざるを得なくなり、造船所の見積価格と用船料にはミスマッチがある。造船所の採算としてはまだまだ厳しいので、成約としてはなかなか決まらない。船価に見合った用船料が徐々に浸透してくれば、成約もある程度増えてくるのではないか。足元では汎用船型の内航貨物船の引き合いが多くなっている。汎用的な貨物船は他の造船所との競合ももちろんあるが、造船所の数自体がかつてと比べて少なくなっており、かつてのような競争環境ではない。ただ、内需の減少や船員不足に伴う内航船の隻数減少のインパクトが今後はより大きくなってくる可能性がある」
 — 鋼材価格の高騰が大きく影響している。
 「カーボンニュートラルに向けたコストアップがさまざまな面で影響しており、鋼材を含めて一度上昇した資機材価格が以前のような水準まで下がるのは難しいと考えている。現状、ほとんどの製造業におけるモノの生産過程においてCO2は排出されるため、技術革新がなければ極論ではモノの生産をやめるか、カーボンクレジットによる対応になることが考えられるが、減産分の補填やカーボンクレジットが価格に転嫁されれば造船所にとって調達コストの上昇要因になる。さらに鋼材等の生産量の減少は景気の押し下げや、海上荷動きの減少にもつながってしまう。内航船市場は単純な船腹の需要と供給のバランスではない要因の影響が大きくなっており、非常に不透明な状況だ」
 — 内航船業界の課題をどのように考え、取り組んでいるか。
 「カーボンニュートラルや船員不足・船員の働き方改革が内航船業界の課題となっており、当社としては、環境対応として省エネ船の船型開発をはじめとした研究開発を顧客と一緒に行っており、CO2を削減する取り組みを進めている。新燃料対応の船も今後造らなければならず、いまのところ具体的な案件はないが、積極的にやっていきたい。そのための技術力向上や勉強はしていく。当社としては省エネ船型の開発は新燃料導入後も生きるノウハウだと考えており、重点的に当面取り組んでいく。内航船の新燃料普及までには搭載スペースなどの技術的な問題、インフラ、コストなど解決すべき問題が多くあり、時間もかかるかもしれないが、自動車は電気自動車(EV)にするとCO2排出がなくなるので、新燃料船開発で船が大きな後れをとると、将来的に船が担っていた物流をトラックが取って代わる懸念がある。また、内航船の船員不足の問題については、内航船員のルール動向もみながら船員労務の省力化・自動化技術の導入にも取り組めるよう対応を進めていきたい」

■景気の波を最小限に

 — 強みは。
 「創業当時から『お客さまへの感謝をQualityに込めて』という経営理念で、トラブルのない良い船を造ることを第一にここまでやってきた。お客さまからもそうした実績を評価していただいており、お客さまの多くがリピーターとなっていただいていることが大きい。お客さまが造りたい船を断らずにいろいろなものに挑戦して検討して対応してきた」
 「新設計の多彩な船種を建造しながら、他の造船所ができない短納期で建造できることが大きな強みとなっている。ここ数年間の建造実績だけでもフェリー、セメント、貨物船、ガット船、LPG船、油タンカー、RORO船などさまざまな船種があり、内航船はLNG船などの特殊な船種を除けば、漁船以外のほぼ全ての船種を網羅している。短納期で待った結果、操業にアイドルが出てしまうリスクもあるので、一概に短納期戦略が良いとは言えないが、ここ数年は鋼材価格の高騰があり、その動向を見極めるために短納期対応をしている。船種と納期に柔軟性を持たせることで、景気の波を最小限にとどめながら高い操業水準を維持できている」
 — 多彩な船種の建造に加えて、国土交通省の内航船省エネルギー格付け制度の最高評価「5つ星」の獲得や、優れた省エネなどの装置を備えた船舶「特定船舶」に認定されている。
 「特定船舶の第1号のセメント船は今年3月に引き渡しで、その後も貨物船2隻が特定船舶に認定されている。支援を頂いて船主さんも建造しやすくなり、大変ありがたいこと。しっかり良い船を造りたい」
 — 現在の手持ち工事と操業水準は。
 「15隻・190億円で、一部濃淡があるが、平均して1年半程度の受注残を確保している。建造隻数は年間12~13隻で、隻数の前後はあるものの、操業水準としては高い状態となっている」
 — 業績は。
 「売上高が100億~130億円程度で推移しており、21年度が143億円で過去最高の売り上げとなった。経常損益も05年度以降連続黒字で、協力会社の生産奨励金や従業員の賞与を年3回出している。短納期の受注で鋼材価格高騰の影響をできるだけ小さくしようとしてきたが、来期は鋼材価格高騰の影響が直撃するので、黒字を確保できるようにしていきたい」

■3D CADなどソフトに投資

 — 設備投資の方針は。
 「工場の大型の設備投資は一段落しており、ソフト面や生産性向上に向けた投資を進める。CADの3D化に取り組んでおり、海事産業強化法にも認定されている。3D CADの導入は短納期との兼ね合いもあり、工程に支障が出ないように進めている。同型船の建造では3D化によるメリットも大きいが、1隻ごとに船種が異なると一長一短もある。これまではいわばベテラン設計陣は2次元で図面を書いて頭の中で図面を3D化していたが、これを実際に3D化すると、データに起こす手間が加わるので、設計期間が長くなり、設計コストも増加する。ただ、3D CADの導入は将来的に不可欠なものなので移行を進める。AIなどデジタル技術の活用も視野に入れていきたい。また、タブレット端末を一部の部署で従業員に配布して活用しており、増やすことも検討している」
 「カーボンニュートラルに向け工場の二酸化炭素(CO2)排出量削減にも取り組んでいる。現状、造船所における鋼船建造の過程においてCO2の排出は避けられないが、工場の電力供給にクリーンエネルギーを使用するよう太陽光パネルの導入を計画している。社有林も保有しており、昨年末には7.5ヘクタールに1万5000本の杉の植林活動も実施した」
 — 経営課題は。
 「やはり人材だ。特に設計陣はベテランスタッフが多く、後継者を育てる必要がある。当社の強みである短納期戦略は設計陣がカギで、ベテランの設計陣の長年の経験に依存している部分もある。技能職も含めて採用活動は随時実施している。粘り強く人材採用・育成をしていく」
 — 昨年は大分県内の造船所のブロック外注を担っている大和鉄工を子会社化した。
 「大分県内の各造船所にとってなくてはならない企業で、後継者の問題で当社が出資した。当社の子会社となった後も以前と変わらず各社のブロック外注先として事業を展開している」
 — 今後の経営方針は。
 「当社はお客さまが希望するさまざまな船に挑戦し、それを短納期で、かつ品質の良い船を建造してきたことで創業以来何とか独立してやってこられた。内航船の隻数自体が減少傾向となることも想定されるなか、好不況の山谷を極力平準化するのが課題であるが、外航船建造も視野に入れながら、今後も引き続き、『お客さまへの感謝をQualityに込めて』船の建造に取り組んで行きたい。規模拡大についても以前は検討したこともあったが、現在は先行きが不透明なので、将来的な検討課題としている」
(聞き手:松井弘樹)
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