2024年10月1日記事広告無料公開記事洋上風力発電
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オフショア船訓練提供、人材育成に貢献
MOLマリン&エンジニアリング、洋上風力の取り組み強化
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「SANGO」内の機関室シミュレータ
MOLマリン&エンジニアリング(MOLMEC)は洋上風力分野における取り組みを強化している。4月1日付の組織改正ではオフショア船事業本部を設置するなど体制を整えた。7月からは洋上風力発電向けオフショア船の訓練コースを順次開講するなど、人材育成にも力を入れる。また、主力の一つであるコンサルティング事業では洋上風力プロジェクトの各種調査などに進出していく考えだ。
4月1日付の組織改正で新たに立ち上げたオフショア船事業本部には、洋上風力プロジェクトの事前立地調査や周辺事業に取り組む洋上風力部に加え、海洋事業部内に洋上風力事前調査担当を置いた。また、海洋技術事業部内には洋上風力コンサルティング担当を置く。国内での事業展開に加え、アジア・グローバル開発担当としてマニラに駐在員を置き、洋上風力などを含めた海外でのビジネス開拓も狙う。
洋上風力発電の普及に伴い需要が拡大する人材の育成にも貢献する。MOLMECは洋上風力発電向けの各種オフショア船の訓練コースを7月から順次開講している。親会社の商船三井と保有し、MOLMEC内に設置されているダイナミックポジショニング(=DP、自動船位保持)シミュレータを使用したもので、SOV(サービス・オペレーション・ベッセル)、OSV(オフショア支援船)、アンカーハンドリング船、SEP船(自己昇降式作業船)、ケーブル敷設船の5コースを提供する。DPシステムは洋上で定点保持するための制御システムで、ケーブル敷設船や洋上風力支援船に不可欠なもの。訓練ではDPシステムをはじめ、操船技術やオペレーションに必要な知識などを学ぶことができる。インストラクターはSEP船やSOV、ケーブル敷設船などの乗船経験を持つ海技者が務める。
これらの訓練コースは資源エネルギー庁の「洋上風力発電人材育成事業費補助金」の交付を受けMOLMECが開発し、日本海事協会の認証を得た。「洋上風力関連の人材育成という社会的課題という観点からも本腰を入れて取り組んでいきたい」(森田幹オフショア船訓練事業部長)
各訓練は現在、英語での提供のみだが、国内洋上風力事業者向けに日本語コースの開講準備も進めており、10月頃の開講を予定している。
洋上風力支援船は外航海運会社だけでなく、建設会社やサルベージ会社、曳船会社などさまざまな業界が参画する。一方で業界としてはまだ勃興期であり、DPオペレーターの資格基準や規則などのスタンダードが確立していないのが現状だ。MOLMECでは各種訓練コースの開講などに先行して取り組んでいくことで、業界の発展と海上作業の安全に寄与していく考え。
また、船の機関室を再現したシミュレータを活用した訓練も提供している。商船三井が7月に虎ノ門ヒルズステーションタワー内に開所した新多目的施設「虎ノ門エンパワーメントセンター『SANGO』」には船員の訓練シミュレータ3基6種類が設置されている。その一つの機関シミュレータについて、「特徴的なもので、蒸気タービン機関、二元燃料ディーゼル機関、電気推進機関の3種類に対応している」(玉井勝也海技訓練事業部長)。洋上風力作業船は電気推進機関を活用したものが多く、同シミュレータを活用して機関操作などのさまざまな対応能力を磨く訓練を受講することができる。
また、MOLMECの主力の一つであるコンサルティング事業においても、洋上風力向けに事業を展開する。洋上風車を設置した際の航行安全対策や、基地港の選定、建設時の各種海域調査を手掛けていく考えだ。風況や潮流、地形調査などに注力していく。「当社は海洋研究開発機構(JAMSTEC)学術研究船“白鳳丸”の運航支援を行っているほか、観測技術員を派遣している。これらの知見を重ねて、洋上風力プロジェクトの調査段階にコンサルティングとして進出していきたい」(菊地和彦社長)
また、ケーブル船事業では、浮体式洋上風力向けの電力ケーブルの敷設に取り組んでいきたい考えだ。「当社は50年以上にわたり海底通信ケーブルの設置に携わってきた。そのノウハウを生かし、商船三井の事業をサポートしていきたい」(菊地社長)
左から、玉井海技訓練事業部長、菊地社長、 森田オフショア船訓練事業部長