2023年11月28日無料公開記事内航NEXT
鉄道廃線で内航船を利用
井本商運社長、神戸市民セミナーで講演
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多くの市民が参加
神戸大学海事博物館は25日、市民セミナーを同大深江キャンパス梅木Yホールで開催した。井本商運の井本隆之社長は講演で、赤字により鉄道路線が廃線となったため貨物輸送できなくなり、内航船を使って代替輸送したことなど話した。
井本社長は「海上コンテナ輸送の現状」と題して講演。自社の運航隻数が32隻で、国内62港に寄港していることなど紹介。当初は一般の内航船でコンテナを輸送していたが、内航コンテナ専用船を造り、大型化していった経緯を説明した。600TEU型船では球状船首を採用し、今年投入した1000TEU型船2隻に続いて来年11月に第3船が竣工することなど語った。IoT技術で高度船舶安全管理システムを搭載して効率化を向上。船員の仕事や休暇体制も触れ、船員の育成にも取り組んでいることも話した。国内コンテナ戦略港湾政策についても説明した。
物流2024年問題で、コンテナ化による海運のモーダルシフト進展を挙げて、日本ではコンテナで国際ISO規格の20フィートや40フィートと、国内JIS規格の12フィートや31フィートがあることに言及。米国では1960〜70年代に30種類のコンテナ規格を20フィートと40フィートの2種類に標準化したことも話した。自社ではISO規格の海上コンテナ「海コン便」でサービス提供しているとした。
このほか災害時の廃棄物輸送を行ったこと、神戸港のカーボンニュートラルポート(CNP)も取り上げた。「内航フィーダー輸送の競争力強化、環境問題に対応したモーダルシフト、災害時物資輸送に貢献していく」などとした。質疑応答でコンテナの種類について尋ねられた際、日本海側で鉄道を利用していた荷主が、赤字廃線で駅もなくなったため、内航船による海上輸送で依頼があった例を話した。
商船三井の元船長の安達直氏は「在来貨物船から大型船用船へ」で講演。在来貨物船から専用貨物船へと船が変遷したことを話した。質疑応答で船長時代の感想を尋ねられると「いろんな国や地域に行かせてもらってよかった」と振り返った。
セミナーには約80人が参加。海事博物館が現在行っている企画展「近代日本 船のあゆみ〜多種多様な船とその役割〜」の一環として行われた。企画展は近代以降に発展してきた日本の商船の姿とその役割を紹介しており、2024年5月31日まで開催。