2025年11月26日無料公開記事台湾洋上風力 洋上風力発電

《連載》台湾洋上風力<上>
10年で450基設置、4GW超が稼働
欧州・日本勢参画、“実践の場”に

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台湾では西部、特に苗栗県・彰化県沖で洋上風力開発が進む(台湾のエネルギー展示会でも洋上風力が主要テーマに)

 台湾は欧州で先行する洋上風力発電において、アジアの洋上風力先進地域として地位を確立してきた。10年余りで約450基の洋上風車を据え付け、総出力4GW超の規模へと拡大した。台湾は、地震・台風など日本と共通する条件を抱え、かつアジアで唯一フルスケールの施工実績が蓄積されていることから、日本勢にとっては知見蓄積の場として最適だ。日本の商社・海運会社・電力会社は早期から台湾案件に参画し、調査から施工、O&M(運転保守)など、事業開発や作業船のオペレーションについて経験を積み上げている。

 台湾に拠点を置く企業も、台湾を足掛かりに日本や韓国など他のアジア太平洋地域への進出を狙う。台湾の作業船会社は「現在は台湾に注力しているが、アジア全域で事業を展開する方針だ。韓国や日本、フィリピン、オーストラリアは潜在的な市場で市場調査のための投資も行っている」と語る。カボタージュ規制や洋上風力政策を踏まえつつ、日本や韓国への横展開も見据える。
 台湾の開発は「示範(実証)」「潜力(ポテンシャル)」「区塊(ブロック)」の三段階で進められてきた。現在は第3段階のブロック開発フェーズに入り、事業者選定が進行中だ。同フェーズでは2026年から毎年1.5GWずつ導入し、2035年までに計15GWを積み増す計画となっている。
 日本の洋上風力は1回目の公募(通称、第1ラウンド)後のルール見直しや、三菱商事らのコンソーシアムによる3海域の開発断念などにより、厳しい目が向けられているが、台湾でも政策面の混乱は避けられなかった。とりわけ国内調達率については厳しい要件を課したことで、欧州の発電事業者が反発し、欧州連合(EU)が2024年7月に世界貿易機関(WTO)に提訴する事態にも発展した。最終的に台湾が今後の公募ラウンドで国内調達要件を含めない方針を示し、両者は合意に至った。また、日本だけでなく台湾の洋上風力案件も資機材価格の高騰や金利上昇などに直面しており、洋上風力導入目標の達成後れを懸念する声も聞かれる。
 台湾洋上風力の主要海域に近接する台中港は2026年末までに合計50ヘクタールの洋上風力専用ヤードを整備する計画だ。同港ではかねてより重量物向けの既存埠頭の補強や航路整備、埋立工事などを順次進めており、大型の作業船の停泊にも対応しているほか、同港には、シーメンスガメサの風車主要部品の組立工場やオーステッドのO&Mセンターなどが立地し、洋上風力ハブ港として機能している。
 アジアにおいて、調査や施工、O&Mまで洋上風力のフルスケール施工が常態化している海域は台湾のみであることから、洋上風力作業船の多くも台湾に集積する。SOV(サービス・オペレーション・ベッセル)は商船三井と大統海運の合弁会社大三商航運(TSSM社)によるアジア初の新造SOV“TSS PIONEER”を皮切りに、現在は台湾海域で10~20隻程度が投入されているとみられる。SEP船は複数隻が稼働しており、台湾国際造船(CSBC)建造の初の台湾国産SEP船“GREEN JADE”が建設作業に従事するほか、カデラーもSEP船2隻を台湾に配備している。また、清水建設のSEP船“BLUE WIND”も日本で2件の洋上風力建設に従事した後、台湾の複数案件に投入された。
(この連載は、春日映莉子が担当します)

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