2025年10月15日無料公開記事LNG船次の波

《連載》LNG船、次の波<下>
発注激減もギリシャ勢が継続

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 LNG船の新造発注は過去3年間、時には100隻を超える山があった。一方、今年は新造船商談が低調だ。本紙集計によると、16万~20万立方メートル級のLNG船の今年これまでの新造発注は20隻程度に留まる。2022年の150隻超、23年の80隻、24年の100隻近い数と比べると圧倒的に少ない。
 中東カタールエナジーの大規模用船商談によって底上げされていた部分もあるが、それだけではない。先を見るとLNG船の需要が拡大する見通しだが、しばらく北米を中心とする新規プロジェクトが少ないからだ。一方で船価は高く、大半の船主が手を出しにくい水準。なにより足元では有望な投入先を見つけにくい。いくつか進行中の用船商談はあるが、「船主は新造発注する前に手元の船を使いたいと考える」(市場関係者、以下同じ)ことも、新規発注から距離を置く原因だ。一般商船の中で船価が高額のLNG船は長期用船契約の結んだ上で建造に踏み切るケースが多かったが、投入先未定のいわゆる投機発注もギリシャ船主を中心に近年増えた。それらの船が行き先を探している。
 「28年以降の船台の発注はかなり減っており、29年、30年船台は造船所もほとんど売り出していない」、「造船所は慌てて受注を決める必要がなく、船主も需要を考えるとすぐに決めたり投機的な新造発注が広がる状況ではない。しばらくは膠着状況が続くのではないか」
 ただ、少ないとはいえ、今発注を進める船主も存在する。カーディフ・ガス、キャピタル・マリタイム&トレーディング、セルシウス・タンカー。ギリシャ勢が引き続き動いている。足元の発注船は28~29年の竣工船。米国からアジアへの輸送を前提とすると、40万トンで1隻、100万トンで2~3隻が必要になる。北米では年産1000万トン級の新規プロジェクトがいくつも開発を控えている。
 「米国産LNGがどのタイミングでどのくらいの量が出てくるか次第だが、船腹需給は徐々に引き締まっていくと見て、一部の船主は新造発注している。船価格が当面は大幅に下がらないと見ているのだろう」、「米国の大規模LNGプロジェクトが29~30年に向けて出てきて、大きな船腹需要の波が来ることで、船価が再び上昇する可能性を見越しているのではないか。米国やカタールのプロジェクトを中心に建設中が1億7000万トン、最終投資決定(FID)前のプロジェクトも1億4000万トンと大規模。さまざまなプロジェクトの立ち上がりが期待されている」
 27年頃まで韓国・中国の造船所のLNG船の船台は埋まっているが、28年以降の発注が進むかが注目点となっている。
 船価については下げ止まり、再び上昇する可能性を指摘する声がある。足元で造船所から提示される船価は2億4000万~5000万ドル程度とされ、最近の成約も2億5000万ドル台だ。2億ドル台後半をつけていた一時期と比べると若干下がったが、「高値を維持している」という言い方が正しいだろう。かつての1億 8000万ドル前後の水準に再び戻るとの見方を示す関係者は見当たらない。
その理由はインフレや人手不足などによる人件費上昇といったコストファクターと将来の底堅いLNG船需要があるためだ。「先を見ると、29年、30年以降は北米を中心に新規プロジェクトのFIDが見込まれ、造船所を含めて先高期待がある。手前で発注されたフリー船がはけてくると、発注は増え、船価は少なくとも下げ止まるだろう」
 一方、下落に作用する要素を指摘する声もある。「船を構成する機器類・部品などの調達手配に時間を要するようになり造船所は受注から納品までのリードタイムが以前の2年から3年に延びている」。手持ち工事確保のために造船所の焦りを呼べば、船主との綱引きの中で船価が下がる要素になり得るとの指摘だ。
 29~30年に向けて再び大きな用船需要の波が来るのに船主は備えている。一方、この先の用船需要の一部は発注済みだが投入先が固まっていない船が担う可能性が高く、「その分、今後の新規プロジェクトの新造需要が減ることになる」、「既存船をうまく活用することで賄える場合は、マーケットが想定よりも盛り上がらないこともあり得る」。船主が今後の競争で意識すべきは、今後の新規発注船のみならず、既発注船を持つ船主でもあるのだ。足元でじわじわ発注を進めているギリシャ勢もその1つだろう。
 また、近年竣工した船で3~7年といった当初契約を終えた船も少なくない。これらの船が市場に出てきていることが足元のマーケット低調を呼んでいるわけだが、この先も同種の比較的新しい船も入り交じり、この先の商談で存在感を増すことになりそうだ。
 今後の米国案件を中心とする用船商談、新造船価、船舶の環境規制と絡む既存船の動向。少し先の動き出しに向けて、船主は作戦を練る時期となっている。
(連載おわり。日下部佳子が担当しました)

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