2025年10月14日無料公開記事LNG船次の波
《連載》LNG船、次の波<上>
30年前後に需要増、用船商談に備え
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LNG船商談に次の波は米国から(写真=ブルームバーグ)
LNG船の用船商談は今年、静かだ。昨年までに中東カタールエナジー向けの大型商談が決着し、しばらく大規模な船腹調達が見込めないためだ。ただ、先を見ると2029~30年頃に米国の新規LNGプロジェクトが立ち上がってくることで、次の波が来ると見られている。今年は新造発注も停滞しているが、ギリシャ船主を中心に来るべき商談に備えて発注に踏み切る動きもある。既発注船や、期間数年の当初契約が満了した船も入り交じって、次の商談が繰り広げられることになりそうだ。
カタールエナジーによる22~24年の計128隻という膨大な隻数の新造用船商談が終了し、足元の定期用船商談は静かだ。ただ皆無ではない。エクイノールやイタリアのエディソンなどによる商談が進行中で、加えて現地の治安悪化で止まっている東アフリカ・モザンビークのプロジェクトが動き出す時期も引き続き注目される状況だ。「足元で船を探しているのは欧州系企業が多い。米国ガルフから出荷されるLNGの輸送用に28~29年起こしの契約でいくつかテンダーが出てきている」(市場関係者、以下同じ)という。
この先の主役は米国に他ならない。「オーストラリアやアジア周辺でも動きは出てくるかもしれないが、市場に与えるインパクトが圧倒的に大きいのは米国。おおむね30年ごろから出荷が一気に増えてくるとすると、それに向けた用船商談も出てくるだろう」
LNGの海上貿易量は現在約4億トン。これが2040年代に向けて7億トンへと増加すると予測されている。これを牽引するLNG輸出国の一角が米国になる。
足元のスポット・短期用船市況は最新の汎用船型17万立方メートル級でも日建て3万~4万ドル程度と損益分岐点を下回って低調だが、先高の傾向も見られる。船舶のスポット用船と期間用船では一般的には期間が短いスポット・短期の市況が高い傾向にあるが、LNG船については近年、スポットが期間用船を下回る水準が続いている。加えて期間用船についても「足元は期間2~3年よりも5年などの方が高くなる。船主の中には、30年頃から船が不足すると見て、それまでの間いったん投入先を固めたうえで、その後に備える考えもあるだろう」、「3年より5年、5年より7年のほうが高値であり、船主も用船者も先高に見ていることを示している」
今後数年は稼働する新規LNGプロジェクトが限定的であることと、既発注船の竣工が続くことで低調な市況が見込まれるが、徐々に遅れていたプロジェクトが立ち上がるとともに、29~30年を中心に米国のプロジェクトが新たに稼働することで、船腹需要の一段の増加が見込まれる。化石燃料の増産を推進する米トランプ政権の下、今年これまでにウッドサイド社の「ルイジアナLNG」で年産1650万トンのフェーズ1、ベンチャー・グローバル社の「CP2LNG」フェーズ1、センプラ社による「ポートアーサー」の年産1300万トンのフェーズ2が最終投資決定(FID)された。CP2フェーズ1は27年から、ルイジアナLNGは29年、ポートアーサーのフェーズ2は30年からLNGの輸出が開始される予定。これに伴い船の調達も進められていく見通しだ。
新規プロジェクトによりLNG輸送需要が喚起されるのに加え、国際海事機関(IMO)による燃料の温室効果ガス強度規制(GFI規制)が高齢船や燃費の悪い船の撤退を促すことも、新たな船の需要を呼び起こす。既存の大型LNG船は700~750隻。発注残を加えると28~29年に1000隻を超える見通しだが、GFI規制が現行案のまま採択されると、それぞれ約200隻あるスチームタービン船(SТ船)と二元燃料ディーゼル電気推進機関(DFDE)船の経済的な陳腐化が加速し、市場からの撤退が進むと予想されているのだ。一方でLNGの貿易量は増加が見込まれる。「ST船とDEDE船が急減した場合、想定より早くLNG船市況が回復するだろう。28~30年頃に竣工する新造船の追加発注も必要になってくる」と見られている。
もちろん、米国のエネルギー政策は時の政権の考え方による部分は多い。「ドリル・ベイビー・ドリル」と化石燃料開発を進めるトランプ政権の政策の継続性や、インフレによるコスト増なども含め、プロジェクトの進展はある程度の不確実性を伴っていることも注意が必要となる。また、米国から大量のLNGが出てくるとして、その向け地がどこになるかによってトンマイル需要は変わり、必要となる船腹量も変化する。
(下につづく)