2025年9月24日無料公開記事天草内航船主 内航NEXT

《連載》天草内航船主⑦
次世代に海事産業の魅力伝え
熊本運輸支局、高校訪問や見学会

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(左から)出田次長、内田首席運輸企画専門官、甲斐首席運輸企画専門官

 国土交通省九州運輸局の熊本運輸支局では、次世代を担う子どもたちに向けて海事産業の魅力をアピールしている。同支局が参画する上天草市海運業次世代人材育成推進協議会の活動の一環として熊本県内の高校を訪問し、内航海運業を紹介しているのに加え、九州運輸局が立ち上げた九州海事産業次世代人材育成推進協議会では、小学生向けに造船所訪問やフェリー乗船の機会を提供。海事産業を身近に感じてもらうことで、将来の担い手増加に寄与する。同支局の出田嘉伸次長、内田豪首席運輸企画専門官(船員担当)、甲斐倫太郎首席運輸企画専門官(運航・船舶担当)に同支局の取り組みについて聞いた。

― 上天草市海運業次世代人材育成推進協議会での取り組みについて。

「同協議会には2016年の設立当初から参画しており、21年から高校訪問を開始した。就職担当の先生に内航海運や船員という職業について知ってもらうことが目的だ。県内にある全日制高校73校の中から県立高校をまず訪問し、その後私立高校にも足を運ぶ予定。これまでに11校を訪問した。当初は主に工業系高校を回り、最近は実業系コースのある普通高校も訪問している。今年は秋ごろから訪問を開始する予定で、未訪問の工業系高校と、地元の県立牛深高校(天草市)を候補に考えている」
「これまでの訪問では、『内航海運会社に就職するためにはどういった就職活動を行えばよいか』といった質問を聞かれた。船員は求人票の手続きなどが陸上企業と異なり、馴染みのない先生・生徒も多い。どの高校にも共通しているのが、かなりの数の求人が来ているということ。人手不足を背景に2000件を超える求人があるそうで、就職希望者はほぼ全員就職できる状況だ。その一方で、普通高校では実業系コースがあっても進学希望者がほとんどだという」
「就職を希望する場合は地元に残りたいという生徒が多く、先輩や友人などから見聞きした情報を基に就職先を決める傾向が強い。1人入社すればそれに続いていく。昨年、『船社に就職したい生徒がいるが手続きなどについて教えてほしい』という連絡が高校の先生からあり、船員になる方法などについて説明したのだが、この生徒も身近に船員として働いている人がいたことがきっかけだった」

― 九州運輸局では九州海事産業次世代人材育成推進協議会を運営している。

「同会は08年に設立され、『海事産業の理解と関心を深める段階』『進路段階』『就職段階』の各段階に応じた働き掛けを子どもたちに行っている。まずは小学生を対象に造船所やフェリー乗船などを通じて海事産業を知ってもらい、進路について考え始める中高生に向けては出前講座などを実施している。さらに就職段階では、海上技術学校や水産系高校の学生をターゲットに企業説明会などを行っている」
「各県で小学校5年生を対象に年2~3回海事産業見学会を実施している。5年生の社会科の授業で貿易や工業のことを学ぶので、それに合わせて見学会を設定している。熊本県にはジャパンマリンユナイテッド(JMU)有明事業所や熊本ドックといった造船所があり、海事産業のダイナミックさを感じてもらえる」
 「今年は6月に見学会を開き、熊本フェリーが熊本―島原航路で運航する“オーシャンアロー”に乗船し、日立造船マリンエンジンで舶用原動機の製造の様子を見学した。子どもたちに船の説明をしてくれた船員は子供の頃の乗船体験がきっかけで船乗りになったそうだ。見学会のような地道な活動の成果はなかなか目に見えづらいが、続けていくことに意味がある。子どもだけでなく、小学校の先生を対象にした見学会も実施している。先生から児童に広めてもらえたらと思う」
 「昨年12月の見学会ではJMUで建造中の巨大な船を大人も子どももきらきらとした目で見ていたのが印象的だった。『船の仕事をしたい』『フェリーに乗れて楽しかった』といった肯定的な感想をもらった」

 ― 船員確保に向けた施策は。

 「退職自衛官の再就職先としてトラックやバス、タクシーなどの運輸業界を紹介する説明会を開いているのだが、これを海事産業にも広げられないか検討中だ」

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