2025年4月4日無料公開記事栗林商船の新中計 内航NEXT

《連載》栗林商船の新中計<下>
物流支援ファンド出資でシナジー創出

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 ― 貨物営業の取り組み方針は。
 「RORO船増便分の貨物を獲得するためには、グループ一体となった営業活動が鍵になる。RORO船に関連する事業を手掛ける栗林商船、栗林運輸、三陸運輸、大和運輸の4社のグループとしての一体感をさらに高めて営業体制を強化する。具体的には営業人材の育成プロジェクトを24年度から実施している」
 「さらなるグループ一体経営に向けて、グループ会社間の資本面での連携強化を進める。グループ会社13社は、それぞれ所在する地域に応じた独立性の高い経営を行ってきた。第1次中計の開始を機にグループ経営会議を年2回開催しているが、来年度からさらにステップアップしたい」
 ― 船隊整備計画は。
 「2028年度にRORO船1隻のリプレースを検討している。当社が共同開発した省エネ装置『ゲートラダー』の採用も検討しており、現在は499総トン型貨物船1隻に搭載しているが、RORO船では初となる。499総トン型貨物船ではCO2排出量を約15%削減できた。RORO船でも効果が出ることを期待している」
 ― 物流・サプライチェーンの課題解決を目指すスタートアップ企業などを支援する「マーキュリア・サプライチェーンファンド」に出資するねらいは。
 「昨年秋ごろに中期経営計画を練っていた中で、日頃から情報交換している金融機関や総合商社からご紹介いただいたのが同ファンドを知ったきっかけだ。当社の事業とシナジーを創出できると判断し、出資を決めた。当社がファンドに出資するのは初めてで、既存事業を行うだけではなかなか手に入らない技術や情報を収集する機会が得られると考えている。既存事業と掛け合わせられるものだけでなく、新規事業につながる出会いや、投資先の企業との協業も期待している。当社の出資額は数億円で、出資期間は原則5年。物流支援ファンドと一口に言っても、カーボンクレジット事業や現場の従業員の働き方をサポートするプラットフォームを手掛ける企業など、事業の範囲は幅広い。これから出資先の企業が増えると伺っており、各社と情報交換を重ねていきたい」
 ― ファンドを介さずにスタートアップに直接出資する選択肢もあるか。
 「今回、ファンドへの出資検討に際して海運各社と情報交換する中で、多くの情報を率直に開示頂けたことに大変感謝している。各社が独自にスタートアップ企業との直接的な接点を持っていることをも知った。われわれの想像以上に取り組まれている印象で、当社も追いつけ追い越せというマインドで取り組むことを決めた。ただ、当社が既存事業を日々手掛ける中ではスタートアップやベンチャー企業との接点はなかなかない。マーキュリア・サプライチェーンファンドに参画することで、そうした企業と出会うきっかけが得られると考えた」
 ― 新規事業を手掛けるための人材を内部で育成するのか、それとも外部から採用するのか。
 「栗林商船グループの社員自らがレベルアップしながら新しいことに取り組んでいくのが望ましいと思う。一方、人材育成という意味でもマーキュリアやスタートアップ各社との人事交流にも期待している。ファンドへの出資企業からマーキュリアに出向する制度があり、実際に社員を出向させている企業もある。資金のやり取りだけでなく、人材交流のループ形成にもつながれば幸いだ」
 「採用面でも、今回の取り組みはプラスになると考えている。昨今の採用事情はどの企業も厳しく、会社が『見られている』という意識を持たなければならないことからも、新しいことに挑戦しているグループであることを対外的に発信していきたい」
(連載おわり、聞き手:深澤義仁、伊代野輝)

栗林広行常務取締役

栗林良行取締役

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