2025年2月18日無料公開記事洋上風力発電

認証・審査で洋上風力の安全に貢献
日本海事協会、作業船対象に新たな審査も

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日本海事協会(NK)は洋上風力発電の分野で発電プロジェクトの計画から建設、O&M(オペレーション&メンテナンス)に至るまで、各種認証や第三者評価・検証のトータルソリューションを提供し、プロジェクトの安全確保に貢献している。風力発電所の設計評価を行うウィンドファーム認証と、国の代行業務である登録適合性確認業務は2024年にそれぞれ24件実施し、陸上・洋上風力ともに着実に実績を積んでいる。また、着床式・浮体式洋上風力発電所の工事検査「マリン・ワランティ・サーベイ(MWS)」では建設工事だけでなく、大型作業船が必要となる修繕工事でも実施するなど幅を広げているほか、昨年からは新たな業務として、洋上風力作業船に対する「マリン・アシュアランス業務」を開始した。

マリン・アシュアランス業務について、再生可能エネルギー部の赤星貞夫部長は「欧州の事業者が考える国際作業船のスタンダードと日本の沿岸作業船のギャップを埋めるため、安全設備やその運用方法など、船のオペレーションに関する総合的な審査を行っている」と説明する。日本で使用される台船の多くは非船級船で、船舶安全法に基づく技術基準・検査が非適用の場合も少なくない。国内洋上風力では風車のサプライヤーは欧州企業が中心であることに加え、EPCや開発コンソーシアムに海外企業が参画するケースが増えてきたことで、大型作業船での作業に慣れている海外勢から日本の作業船の安全性の評価のため、審査を求める声が上がっていた。

同業務は船体などの構造・設備など全般を主な対象とする船級検査と異なり、作業手順や作業判断基準を対象として、操縦者などの経験・資格の確認や搭載設備の管理・運用の状態などを、プロジェクトごと、用船契約の前に使用者目線で評価するもので、「ジェネラル・シップ・インスペクション」と「DPオペレーション・アセスメント」の2本柱で行う。ジェネラル・シップ・インスぺクションでは緊急時対応の準備状況や安全管理体制を評価する。DPオペレーション・アセスメントではDPオペレータに必要な経験、資格や作業手順書などの審査を行う。洋上工事でDPに関するトラブルは少なくなく、不具合が生じた際の対応を意識した運用・管理体制が構築されているか確認することが重要となる。「NKが審査したことで、海外企業が日本の作業船での工事を認めたケースもあった。今後もマリン・アシュアランス業務を通じて、用船者と作業船所有者、オペレータの間の意思疎通と安全向上に努めていきたい」(赤星部長、以下同)

大学や企業と連携した各種研究開発関係にも取り組んでいる。認証業務において風車の大型化に対応するための技術基盤強化に向け各種研究活動を行っているほか、NEDO事業で風車ウェイクの観測・評価手法調査や、浮体式洋上風力発電所の設計解析におけるスパコン・AIの活用技術開発などを行っている。また、GI基金「洋上風力発電の低コスト化プロジェクト」のフェーズ2で行われる浮体式洋上風力の実証事業については、「船舶安全法に基づく浮体式洋上風力発電設備の船級検査ができるのは現時点でNKだけだ。実証に向け、設計評価に取り組んでいく」

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