2025年2月18日無料公開記事洋上風力発電
浮体式洋上風力の大量急速施工へ
FLOWCON発足、建設システムの確立目指す
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浮体式洋上風力の大量導入を見据えた合理的な建設システムの確立を目指す「浮体式洋上風力建設システム技術研究組合(FLOWCON)」が1月、国土交通省の認可を受け発足した。当初組合員は五洋建設と東亜建設工業、東洋建設、若築建設、日鉄エンジニアリング、IHI運搬機械、住友重機械工業の7社で、賛助会員として、カナデビアとジャパンマリンユナイテッド、JFEエンジニアリングが参加する。浮体式洋上風力は大量導入やコスト低減の実現に向けて、海上施工全体の最適化を図ることが課題となっている。FLOWCONではまず風車搭載作業をどうやって効率化すべきかという検討を始める。
FLOWCONの野口理事長
FLOWCONの理事長を務める、五洋建設の野口哲史取締役兼専務執行役員が本紙の取材に応じた。野口理事長はFLOWCON設立の背景について、「国土交通省が『浮体式洋上風力発電の海上施工等に関する官民WG』を立ちあげ、浮体式洋上風力に関する標準的な海上施工や基地港湾のあり方について検討が進められる中で、今のタイミングで浮体式専用港湾に相当するものを確立しておかねば今後浮体式洋上風力発電の大量急速施工が実現できないと感じた」と語る。
浮体式向けの港湾整備は専用港湾の新設という形で英国やフランスなど欧州で進んでいる。日本への導入について野口理事長は「実際に見て回ったが、日本で同じタイプの新設は難しいというのがわれわれの実感だ。日本はあるべきところにすでに港湾が作られており、物流機能を目的に最適化されている。風車・浮体の出入りのため半日港の出入り口を止めることになるので浮体式のために今ある港を拡充することは簡単ではない」と説明したうえで、「諸外国の浮体式専用港湾に相当する機能を日本に導入するための答えの1つが海上作業基地(海上プラットフォーム)だ。欧州と比肩しうるような大量急速施工の仕組みを日本で作っていきたい」と話す。
FLOWCONが提案する海上プラットフォームは風車搭載を洋上で行うための設備だ。海上プラットフォームの建設技術自体はオイル&ガスの分野ですでに確立されている。一方で風車搭載クレーンを設置した大型のプラットフォームは前例がないことから、大型化が課題のひとつで、今後研究を進めていく方針だ。また、その設置水深は浮体の形式によって異なってくることから、発電事業者との連携も不可欠だ。
発電事業者らで構成され、浮体式洋上風力の要素技術の開発を進める「浮体式洋上風力発電技術研究組合(FLOWRA)」ともすでに意見交換を始めている。「発電事業者の取り組みに応えるべく、FLOWCONが建設事業者の集まりとして、海上施工について回答を用意していく」(野口理事長)
研究内容について、「浮体式洋上風力発電の合理的な建設システムに関する研究(WG1)」「海上作業基地に必要な技術開発(WG2)」「海上施工に関わる気象海象予測システムの開発(WG3)」に取り組む。まずはWG1で、大量急速施工を目指すうえで重要となる風車搭載方法に焦点を当て、基地港湾での搭載と海上プラットフォームでの搭載について比較検討を行う。
今後考え得るシナリオとして野口理事長は、「現在7つある基地港湾と海上プラットフォームを数基を組み合わせるかたちになっていくのではないだろうか」と話す。設置場所によっては海上プラットフォーム1基で3つの基地港湾に対応、一定規模の海域をカバーすることができる。設置場所についても今後議論を深めていく。
海上プラットフォームが良いとなれば、WG2では、その建設方法に関する研究を行う。WG3では気象海象などを考慮し、海上施工の工程を効率化するシステムを開発する。気象海象の予測は浮体式では着床式以上に重要となってくる。「欧州では同様の予測システムをすでに活用しており、日本でもこれまでの蓄積してきた知見で十分実現可能だ」(野口理事長、以下同)。同システムの開発で海上作業基地のさらなる実現を図る。
政府は2040年までに浮体式洋上風力を含め30GW~45GWの案件を形成することを目標としている。「30年頃から浮体式の海上施工に着手し始める必要があると考えており、30年初頭をめどに一連の海上施工の準備ができているようにしていきたい」