2025年2月18日無料公開記事洋上風力発電

海外で知見蓄積、国内は2区域落札
JERA、洋上風力を再エネ事業の柱に

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JERAは再生可能エネルギーと低炭素火力を組み合わせたクリーンエネルギー供給基盤の提供を目指しており、再エネの柱として洋上風力発電事業に取り組んでいる。2019年頃から海外案件への参画を通じて知見を蓄積し、国内洋上風力の一般海域では2区域で事業者に選ばれた。昨年12月にはbpとの洋上風力事業合弁会社「JERA Nex bp」設立に向け基本合意し、新会社は世界4位の洋上風力事業者となる見通しだ。

洋上風力関連の組織体制としては、国内洋上風力事業部を置き、同部内の国内洋上風力事業第一ユニットと第二ユニットが国内洋上風力の開発・運営・管理を、洋上風力エンジニアリングユニットが国内洋上風力の開発における技術検討を担う。海外洋上風力案件は再生可能エネルギー事業部下の海外洋上風力事業ユニットが担う。また、2021年には洋上風力発電事業の拠点として秋田事務所を設立した。

同社の再エネ事業は2016年に中部電力からタイの太陽光と風力IPP(独立系発電)事業を承継したことから始まり、洋上風力発電分野では19年1月の英国ガンフリート・サンズ洋上風力発電事業への参画が最初だ。「同事業は操業開始から10年ほど経った時期に参画し、経年による影響などオペレーション面で知見を得ることができた。一方で新規のプロジェクトにも取り組む必要があると考え、同年2月に建設が終わり運転開始直前だった台湾のフォルモサ1洋上風力発電事業に参画した。その後、開発・建設段階に携わるため20年1月にフォルモサ2にも参入した」(国内洋上風力事業部の由井原篤部長、以下同)

海外で開発・建設・操業の各段階の知見を蓄積したうえで、国内洋上風力公募に臨み、第2ラウンドでは「秋田県男鹿市、潟上市および秋田市沖」、第3ラウンドでは「青森県沖日本海(南側)」の事業者に選ばれた。「第2ラウンドのプロジェクトは第1ラウンドから協力してきたJパワーとの協業の成果が結果として実った。地元の電力会社である東北電力、地域貢献策などの面で伊藤忠商事も仲間に加わってもらい、ともに開発を進めている。厳しい事業環境ではあるが、昨年末には風車の供給契約を締結するなど、一般海域での300MW規模の案件として最速の2028年6月30日の運転開始を目指し開発を進めている」

パークウィンドの参画する独Arcadis Ost 1プロジェクト(提供:Parkwind社)

買収を通じた事業体制の強化にも取り組んできた。2023年7月にはベルギーの洋上風力事業者パークウィンドを、同年8月にはNTTアノードエナジーと共同で国内再エネ発電事業者のグリーン・パワー・インベストメント(GPI)を買収した。パークウィンド買収の背景について、「洋上風力の本場である欧州の知見獲得や、風車のサプライヤーとの関係構築、洋上作業の知識などの観点から欧州の経験豊富な事業者と組むことが重要だと考えた」。

GPI社についてはNTTアノードエナジーは陸上風力に、JERAは洋上風力に関心が高かったことから共同での買収を決めた。GPI社は石狩湾新港洋上風力発電所の建設を進めるなど北海道・東北で先行した取り組みを進めていた。買収により第3ラウンドで落札した青森沖の案件や、洋上風力のポテンシャルが高い石狩湾でのさらなる案件開発においてシナジーを狙う。「GPIは2017年頃から青森県に人を送り、地域に根差した開発を進めてきた。彼らの地域対応はすばらしいものがある。青森県沖の案件はGPIや東北電力とともに議論を進めている」

洋上風力事業合弁会社設立に向けbpと基本合意

さらに、昨今厳しさが増す洋上風力の事業環境を乗り越えるため、JERAは24年12月にbpとの洋上風力事業合弁会社「JERA Nex bp」設立に向け基本合意した。JERAは同年4月に再エネ事業の専門組織として本社をロンドンに置く「JERA Nex」を立ち上げており、JERA Nex bpはJERA Nexとbpの洋上風力事業を統合するかたちになる。

両社が運転・開発中の洋上風力案件は合計で持分容量13GW規模で、新会社は世界4位の洋上風力事業者となる見通しだ。日本においては、日本法人を設立予定であり、地元関係者・自治体、国、パートナーへの丁寧な説明、必要な承諾を前提として、日本の洋上風力事業のすべてをJERAから移管する予定だ。

浮体式洋上風力ではグリーンイノベーション基金事業のフェーズ1で、三井海洋開発と東洋建設、古河電気工業とともに「TLP方式による浮体式洋上風力発電低コスト化技術検証事業」に参画した。また、浮体式洋上風力技術研究組合(FLOWRA)への参画を通じて、技術開発を進めており、浮体式洋上風力の社会実装に向け引き続き取り組んでいく方針だ。

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