2025年2月18日無料公開記事洋上風力発電
秋田に洋上風力向け船舶管理会社設立
日本郵船、地域密着の取組み進む
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JOS社ロゴ発表のようす(左から、日本郵船の横山執行役員、秋田曳船の船木一美社長、秋田商工会議所の辻良之会頭)
日本郵船は洋上風力の要地で地域に密着した取り組みを進めている。昨年12月に秋田曳船とともに秋田県で洋上風力事業向けの船舶管理会社「ジャパンオフショアサポート株式会社(JOS)」を立ち上げた。JOSは洋上風力発電向けの作業員輸送船(CTV)に関する保守管理と、船員の人材育成・雇用を行う。日本郵船は2022年2月に秋田県と包括的連携に関する協定書を締結し、再生可能エネルギー事業の推進や関連人材の育成など幅広い分野で秋田県と連携しており、22年4月に秋田支店を開設、24年4月には洋上風力発電の総合訓練センター「風と海の学校 あきた」を開所した。また、北海道においても道と包括連携協定を締結し、24年4月には新たに支店を開設し、洋上風力分野での貢献や道内の輸送需要の高まりに応えていく。
日本郵船と秋田曳船は21年に秋田県沖一般海域を中心とした洋上風力発電向けのCTV事業での協業検討に関する覚書を締結した。検討を進める中で、洋上風力事業の推進に向けては船の保守管理や船員配乗を行う陸側の体制をしっかりと地元で確立させることが、電力の安定供給や風車のメンテナンスなどを行う作業員を安全に現場まで運ぶ観点から重要であるとの認識を共有。CTV事業を実務的に執り行う、地元に根差した会社が必要であることから、船舶管理会社を設立した。
日本郵船の横山勉執行役員は記者発表会で新会社設立の背景について、「洋上風力発電事業は作業員の安全対策を施す必要があり、また、地元に根付いて長期にわたり継続される。CTV事業も同様に地域で安定したサービス体制の構築が求められる。特に先行してプロジェクトが立ち上がる秋田県を拠点としたサービスの開始が必要だと考えた」と説明した。
新会社では、日本郵船がこれまでの外航海運事業や洋上風力事業における石狩湾新港での船舶運航実績、CTVの協業パートナーであるCTV大手のスウェーデン船社Northern Offshore Services社から得た知見や、秋田曳船が培ってきた地元企業としての土台とノウハウを生かすことで、安全で効率の良い、質の高いサービスを継続的に提供し、日本の洋上風力発電による電力安定供給に貢献していく。
秋田県で予定されている洋上風力プロジェクトの建設工事が本格化するまでに万全な体制を整えることを目指す。今年4月から船員の採用を開始する予定で、まずは経験者を、可能な限り地元にゆかりのある人材から採用したい考えだ。
昨年4月に開設した北海道支店では、日本郵船グループと北海道との協業を深めるとともに、道内のグリーンイノベーションの推進、半導体工場やデータセンター建設による物流需要やモーダルシフトによる海上輸送需要の高まりに対応していく。日本郵船と北海道は昨年1月、北海道の活性化に向けて相互に連携・協力しながら協働事業に取り組むことを目的に包括連携協定を締結した。北海道は洋上風力のポテンシャルが高く、港湾区域では昨年1月に石狩湾新港沖で洋上風力発電所が商業運転を開始し、一般海域では5区域が洋上風力の有望区域に指定されている。また、再エネの導入を後押しするため、北海道―本州間で海底ケーブルの整備に向けた検討も進められている。
日本郵船は2023年に石狩湾新港で同社グループが保有・船舶管理するCTV“RERA AS”(レラアシ)の運航を開始した。また、国内海底ケーブルの敷設に向けては新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「多用途多端子直流送電システムの基盤技術開発/ケーブル防護管取り付け等の工法開発および新型ケーブル敷設船等の基盤技術開発」事業に住友電気工業、古河電気工業、商船三井と4社コンソーシアムとして参画している。日本郵船は住友電工との協力体制のもと、国内直流海底送電網の整備に資するケーブル敷設船の基盤技術の開発を行っており、古河電工の協力も得て、昨年、日本海事協会から概念設計承認(AiP)を取得した。