2024年7月30日無料公開記事SEP船の現在と未来
洋上風力発電
《連載》SEP船の現在と未来①
27年から国内SEP船需要本格化
洋上風車大型化による機能不足懸念も
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国内洋上風力は2027年頃から建設工事が本格化する見込みだ。現在、国内にはすでに4隻のSEP船が竣工済みだが、今後の建設需要に対応するためにはさらに隻数が必要となる見込みだ。また、近年風車の大型化が加速化しており、これに伴いSEP船の機能不足も指摘される。国内の案件形成の進捗や風車の大型化をにらみつつ国内SEP船を整備していく必要がありそうだ。
日本政府は洋上風力の案件形成目標について、2030年に10GW(ギガワット)、40年に30〜45GWに設定している。再エネ海域利用法に基づき実施される一般海域での洋上風力発電事業者公募では、第2ラウンドまでで計8区域で事業者が選定された。第3ラウンドでは「青森県沖日本海(南側)」と「山形県遊佐町沖」の2区域で事業者を公募し、19日に受付を締め切った。結果は12月に公表される予定だ。第2ラウンドまでのプロジェクトは運転開始時期が2028年後半から29年前半に集中しており、その多くが洋上工事を27年から開始する予定だ。これに伴い、設置工事に従事するSEP船の国内需要も27年頃から本格化することが見込まれる。なお、第3ラウンドでは30年6月までに開始するプロジェクトを20点、30年7月から31年3月までに開始するプロジェクトを10点とする評価基準を採用していることから、29年頃から洋上工事が開始される可能性が高そうだ。
SEP船は昇降装置やクレーン、定点保持機能(DP)などが搭載された自航式または非自航式の台船だ。昇降装置により台座部分を海面上に持ち上げ、基礎構造物の施工やタワー・風車の設置などを行う。また、運転開始後もブレードの修理などO&M(運転・保守)において使用されることも想定される。日本では大手建設会社によるSEP船の建造が進んでおり、現在4隻が竣工している。国内でのSEP船の必要隻数については2030年までに4隻程度が必要との試算もあるが、SEP船の作業能力もそれぞれ異なるほか、工期の遅延などが発生した場合はさらに隻数が必要となることから、業界関係者は国内SEP船の不足を指摘する。
工期の遅延について、洋上工事では悪天候や自然災害により船の稼働率が低下し、工期が延びるリスクがある。洋上工事以外のスケジュールが遅延し、洋上工事に影響が出る可能性もある。海外では工期の遅延により風車設置工事の途中でSEP船の用船契約が切れてしまい、延長できず別のSEP船を用船したケースもある。
業界関係者らはSEP船不足を認識しつつも国内向けのSEP船の新造について慎重な姿勢を示す。SEP船への投資の判断を難しくさせている要素の1つが風車の大型化だ。現時点での最大機種は15MW程度だが、20MW級風車の開発も視野に入っている。2030年には25MW級風車が登場するとの分析もあり、近年大型化が加速している。風車が大型化すればSEP船に搭載するクレーンやレグもそれに合わせて大型になるため、15MW級風車が主力の市場と25MW級風車の市場では必要とされるSEP船の能力や隻数が変わってくる。国内の案件形成の進捗や風車の大型化をにらみつつ国内SEP船を整備していく必要がありそうだ。
(この連載は、春日映莉子が担当します)