2023年12月25日無料公開記事「2024年問題」船社のシナリオ
内航NEXT
《連載》「2024年問題」船社のシナリオ⑥
「道内モーダルシフト」に期待
栗林商船
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苫小牧港発、釧路港着の新規貨物の獲得に力を入れる
全国7港を結ぶ定期RORO船サービスを提供する栗林商船は、北海道/本州を結ぶ航路に加えて広い北海道内の輸送のモーダルシフトの進展にも期待している。苫小牧港発、釧路港着の新規貨物の獲得に力を入れる考え。ただ、長期的には国内の人口減などで貨物量は減少に向かうと予想。まずは現在の航路の消席率の向上と適正運賃の収受を目指す。
同社が運航するRORO船は用船も含め7隻で、東京、仙台、釧路、苫小牧、名古屋、大阪、清水の各港に寄港する。主要貨物は紙製品や鉄鋼製品、飲料・食品。
営業本部の夏井慶二第一営業部長は「2024年問題を踏まえた引き合いが増えている」と話す。本州の仙台、東京、大阪、清水、名古屋に寄港する航路について問い合わせが増えており、特に物流の大動脈の大阪/東京や同社独自の航路である大阪/仙台が増加しているという。夏井部長は「2024年問題で需要が増えると予想している航路は関東/関西。走行距離300〜500キロなどの一定の距離以上の輸送をモーダルシフトしていくという方針が荷主やその物流子会社で掲げられて海陸一貫輸送を依頼されるケースが増えている」と話す。
輸送が増えている貨物の一つが商品車両。「以前からキャリアカーのドライバーが不足していたが、2024年問題で拍車がかかった。昨年ごろから増えている。全体的な貨物量の増加は2024年4月以降に加速するのではないか」とみている。
栗林グループの創業の地である北海道では苫小牧と釧路に寄港しているが、道内のサービスをさらに広める余地があると見る。夏井部長は「苫小牧のドレージ能力は限界に近いため、釧路の利用が進む可能性がある。現在は苫小牧や札幌といった道央地区が在庫拠点になっているが、釧路や根室などの他の地区の活用によって北海道内の輸送のモーダルシフトが進むだろう。そもそも、苫小牧/釧路航路がサービスとして道内で認識されていないので、さらにアピールすれば利用拡大のチャンスはある」と話す。
2024年問題への対応では、消席率の向上と適正運賃収受にまず取り組む。「船隊の増強も検討すべきだが、現在の運航を満席にすることと適正な運賃収受が喫緊の課題だ。現在の船隊はリプレースが一巡しているが、日本の人口減に伴い国内の物量は必ず減るので、大幅な大型化はしていない。持続可能な輸送にするために適正な運賃を設定していく」(夏井部長)。
一方、夏井部長は2024年問題が同社の物流子会社にも影響すると話し、「発着地ではドレージ輸送も担っているので、トラックドライバーの残業時間規制の影響を受ける。荷待ち時間短縮や高速道路の積極的な利用、荷主による荷役などを実現して人材確保・定着を図らなければならない」としている。