2023年1月19日無料公開記事内航NEXT

「TRANS-Crew」で船員労務管理
栗林商船、働き方改革に対応

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栗林商船が運航するRORO船”神永丸”

 内航RORO船オペレーターの栗林商船がエイ・アイ・エス(東京都千代田区)の船員労務管理システム「TRANS-Crew」の導入を決め、今月から本格導入した。自社グループで管理する4隻の船員約80人の労務管理に利用。業務予定と実績を対比できる機能などが船員の働き方改革を荷主と連携しながら進めるうえで有効なツールになると判断した。今後は配乗計画の策定や船員の健康管理との連携にも期待している。
 栗林商船は2022年4月に施行された改正船員法(船員の労働時間管理強化など)を受けて労務管理システムの導入を検討してきた。稲田博久常務取締役船舶本部長は「国土交通省が公開している労務管理記録簿フォームでも船員個々の労働時間を管理することはできる。ただ、乗船業務は入出港時により人手がかかるため、船員の働き方改革をより確実に進めるためには各船の船員全員のシフトを船の動静と対比しながら調整していく必要がある」と説明。「TRANS-Crewは予定していたシフトと実際の勤務時間を上下に並べて表示できるデザインで、予定通りに作業できなかった場合に実績との比較が簡単で、今後の改善に生かしやすい」と、さまざまな類似サービスがある中からTRANS-Crewを選んだ理由を語った。
 TRANS-Crewの操作性も導入を決めた理由の一つという。船舶本部船舶部の田中涼介係長は「これまでは船員の労働時間の管理簿をすべて紙ベースで確認していたので海上でも陸上でも処理に時間がかかっていた。TRANS-Crewは画面の時間軸に沿ってドラッグ・アンド・ドロップするだけで作業時間の入力が完了するため、紙にペンで書き込む感覚に近く、パソコンに苦手意識のある船員でも簡単に操作できる。またクラウド上で記録を確認できるため、業務時間短縮につながった」と語った。導入決定前に実施したトライアルでは現場の船員たちから「TRANS-Crewを早く本採用して欲しいという声が上がった」という。
 栗林商船ではTRANS-Crewを活用しながら運航スケジュールや配乗計画の見直しを進めていく。陸上の船舶部では、船長とコミュニケーションを取りながら船員の予定を組み、事前に適正な労働時間で運航が可能か判断。超過労働になる場合は予定を組み直す。例えば船員同士で業務やシフトを融通して労働時間を短くしたり、入出港の時間調整を内部検討していくことなどにより、法定労働時間の確実な順守を目指す。船主部門での自助努力だけでは解決できない場合、営業部門や荷主に相談する際のエビデンスとしてもTRANS-Crewのデータを活用できるとみている。
 稲田常務は「当社グループでは長年エイ・アイ・エスの会計システムを利用しているが、導入時の丁寧なご対応が印象に残っており、安心感があった。また、同社が海洋DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するマリンドウズ社に出資していることからも将来的な発展性を感じている。オフラインでの作業時間入力が可能になり、さらに給与計算や配乗計画、本船の動静などとの連携が実現すれば、ますます使い勝手が良いシステムになるだろう」と説明。「当社は国内で初めてRORO船を運航するなど、内航海運業界のイノベーターとして歩みを進めてきた。船員の働き方改革でもその立場を変えることなく、新たな取り組みに邁進していきたい」と語った。

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