2022年11月22日無料公開記事内航NEXT

<内航NEXT>
労働環境改善や脱炭素化を加速
JRTT、内航船支援セミナーを開催

あいさつする河内隆理事長

 鉄道建設・運輸施設整備支援機構(JRTT)は18日、都内で2022年度の内航船支援セミナーを開催した。内航船の労働環境改善やカーボンニュートラルに関する講演が行われたほか、JRTTが進める「内航ラボ」の取り組みや国土交通省海事局からの情報提供が行われた。
 冒頭あいさつに立ったJRTTの河内隆理事長は、「内航海運業界は、鋼材価格と燃料油価格の高騰により建造・輸送コストが上昇する中、これらの動きが今後も継続するのか見通しが不透明となっている。特に今年度下半期から船舶の代替建造を見送る動きが出ている」と説明。加えて、「わが国の基幹物流を担う内航海運は大きな潮流の変化の真っただ中にある。今後も内航海運業界が社会経済活動を持続的に支えていくためには、『船員の確保』と『カーボンニュートラルの推進』の2つの課題を解決していかなければならない」と述べた。

■内研、来年にSIM-SHIP竣工

 労働環境改善に関する講演では、内航ミライ研究会(内研)とソフトバンクが登壇。内研の曽我部公太専務理事・事務局長と畝河内毅理事は、昨年公表した未来に向けた内航のコンセプトシップ「SIM-SHIP」の検討状況について紹介した。「SIM-SHIP」には、コンテナ型の内航船普及型バッテリーを開発・搭載し、陸上電源で充電した後、停泊・荷役時に船内電源として活用する。加えて、作業の効率化に向けて、電動ハッチの搭載や係船機の電動化も図る。操船支援パネルの搭載や陸上監視システムも導入しており、船員の負荷低減や安全性の向上、運航計画の最適化を目指す。高効率プロペラや高機能スラスタ、省電力甲板機械も搭載している。各機器の搭載などにより、「全体で十数%の省力化できると試算している」(畝河内理事)。23年度にJRTTとの共有船として竣工する予定だ。

■OneWeb、衛星打ち上げ再開、来年度サービス開始へ

 ソフトバンクの押田祥宏グローバル通信事業統括部担当部長は、次世代高速衛星通信サービス「OneWeb」に関する最新の状況を報告した。ロシアのウクライナ侵攻に伴い、これまで衛星の打ち上げ計画が止まっていたが、インドのニュー・スペース・インディア(New Space India)社と打ち上げ契約を締結し、10月23日に打ち上げを再開した。米国のスペースXとも打ち上げ契約を締結しており、年内にも打ち上げを行う予定だ。押田部長は、「料金プランは現時点で確定していないが、早急にまとめて提案していく。日本国内において来年度にもサービスを提供していきたい」と述べた。

■標準化と水素技術の開発を促進

 内航カーボンニュートラルに関する講演では、川崎重工業船舶海洋ディビジョンの按田正樹技術総括部新事業推進部性能開発課課長と、船舶推進ディビジョンの前川真吾舶用推進システム総括部システムエンジニアリング部システムマネージメント課主事が、内航船におけるGHG削減に向けた同社の取り組みを報告した。内航船のGHG削減に向けた将来戦略として、(1)船型・推進システムの設計標準化と、(2)水素燃料による内航船のカーボンニュートラル化を進めている点を紹介した。
 (1)に関しては、案件ごとに船型開発や水槽試験を行うと船型開発費がかさむという課題がある。こうした中で、高性能な母船型を開発し、各案件では母船型の船型形状を流用したり、母船からのシンプルな船型変更で対応したりすることで、1隻当たりの設計開発費を抑えることを目指す。推進システムについても、内航船のオペレーションや用途に応じたシステムパターンを複数用意することで、標準化を図る方針だ。
 (2)に関しては、既に液化水素運搬船の実証航海を実施しており、現在は大型液化水素運搬船や水素エンジン・水素供給システム(MHFS)を開発している。川崎重工グループ全体で水素社会実現への取り組みを進めており、得られた技術を内航船にも転用していく方針を示した。

■ヤンマー、ミカサが環境対応推進

 ヤンマーパワーテクノロジーの清河勝美システムエンジニアリング部部長は、燃料電池船の実証試験について報告した。実証試験の経験を踏まえ、2023年に300kW級の舶用燃料電池システムを商品化し、市場投入する方針を明らかにした。2025年には大阪・関西万博やカーボンニュートラルポート(CNP)向けにシステムパッケージの商用利用を目指す。
 ミカサ技術部開発企画グループの横垣賢司チーフエキスパートは、「舶用推進装置用水潤滑軸受の最新動向」と題して講演した。油潤滑システムと水潤滑システムの対比を行った上で、同社のFFベアリングの構造や耐摩擦性、燃費低減効果などを紹介した。

■内航ラボ、遮熱シートなど船舶に応用

 JRTTの田中信行審議役と石蔵商店建材事業部の石蔵義浩代表取締役は、20年度からJRTTが実施している「内航ラボ」の取り組みについて説明した。「内航ラボ」とは、JRTTが他分野で実用化されている技術のシーズを持つ企業と内航海運事業者との橋渡しを行うもの。労働環境改善や環境負荷低減、安全性向上など内航海運事業者が直面している課題の解決に資する技術を対象としている。内航ラボの一つの事例として、石蔵商店の遮熱アルミシートを紹介した。既にRORO船で試験的に遮熱シートを貼付し、遮熱効果を確認している。今後は甲板の下階など船舶の内装部への施工を進めていきたい考えを示した。
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