2022年10月25日無料公開記事内航NEXT 内航キーマンインタビュー

<内航NEXT>
《連載》内航キーマンインタビュー⑱
新船2隻出そろう、地域密着度日本一へ
宮崎カーフェリー・郡司行敏社長

 宮崎/神戸間を運航する宮崎カーフェリーは今年、新船となる“フェリーたかちほ”と“フェリーろっこう”の2隻を就航させた。郡司行敏社長は、「新船に課せられた役割は、宮崎県発着フェリーの約半世紀にわたる歴史を、次の50年につないでいくことだ。社員一丸となって、安全運航・安定輸送をベースに、『おもてなし日本一』『地域密着度日本一』のフェリーを目指す」と強調する。足元の課題となる燃料油価格の高騰への対応やデジタル化に対しては、フェリー業界が協調して取り組む必要性を指摘した。

■次の50年につなぐ

 ― 今月、新船2隻が出そろった。新船に期待することは。
 「宮崎県のフェリー航路は、日本カーフェリーの時代から始まり、約半世紀の歴史がある。宮崎県はかつて、『陸の孤島』と言われていた。こうした中でフェリーは、宮崎県と大都市を結ぶ『海のバイパス』という機能を果たし、地域経済を支える重要な役割を担ってきた。新船に課せられた役割は、これまでの約50年の歴史を、次の50年につないでいくことだ。新船2隻が今月、出そろったが、これからがまさに勝負所だと考えている。宮崎カーフェリーは、『オール宮崎』で支えられているフェリー会社であり、宮崎県民からの期待も大きい。県民に愛され、地元に貢献できるフェリーが理想の姿だ。社員一丸となって、安全運航・安定輸送をベースに、『おもてなし日本一』『地域密着度日本一』のフェリーを目指していく」
 ― 新船の特徴は。
 「『大型化』と『個室化』だ。『大型化』に関しては、トラック積載台数を従来船の130台から163台に増強し、リーファー電源も増やした。これまでの船では、冬場の野菜出荷の最盛期に、満船により積載できないケースも発生していたが、大型化したことで積み残しを解消していく。『個室化』では、従来船比で約7倍の216室の個室を用意した。定員の半分が個室となる。コロナ禍において個室需要は非常に高く、よりプライベートな空間を充実したことで、好評となっている」
 ― コロナ禍で旅客輸送に大きな影響が出た。現在の状況は。
 「フェリーはコロナ禍で大きな影響を受けた業界の1つだろう。人流抑制策が取られ、観光客の減少はもとより、お盆や年末年始の里帰り需要も激減した。コロナ1年目となる2020年度の旅客実績は、コロナ前の水準の25%程度に落ち込んだ。しかし、徐々に回復傾向にある。今年度はコロナ以前の約6割にとどまってはいるものの、21年度との比較では約3倍に増えている状況だ」
 「コロナ後の旅客需要がどう動くか見通すことは難しい。コロナ禍でライフスタイルの考え方に大きな変化が生じたことは確かだが、潜在的な旅への需要はあると思う。たまにはゆったり旅をしたいというニーズもあるだろう。フェリーという乗り物がこうした需要にいかに対応していけるかが勝負となる。また新船2隻が出そろったが、新船を最大限に生かして新たな需要を創出していくことも重要な視点だ。まずは一度乗船してもらうことが大切だと考えており、新船のポスターや新船オリジナルソングを作り、興味を引くための戦略は成功したと考えている。今後は、いかに具体的な乗船行動につなげていくかが課題となる。新しい船の旅の魅力を発信していきたい」

■ネットワーク型の物流構築へ

 ― 貨物輸送の状況は。
 「コロナ禍による景気低迷で、貨物輸送も低迷している。当社フェリーの宮崎発の貨物輸送は約65%が宮崎産の農畜産物となっている。冷凍食品関係は増えたものの、外出自粛による外食需要の落ち込みやイベント休止による飲料の減少などが影響している。自動車関係についても、半導体不足の影響を受けて部品やタイヤなどが減った。全体としてもコロナ前と比べて5%程度の減少となっている。今後も、急激な景気の回復を見通すことは難しいが、『2024年問題』によるモーダルシフト需要を期待したい」
 ― 2024年問題が国内物流で懸念されているが、どのように捉えているか。
 「2024年問題に限らず、物流業界はコロナ禍や燃料油価格の高騰、構造的な労働者不足など、さまざまな課題を抱えており、大きな変化の中にいる。厳しい環境下にあるからこそ、新しい素地が生まれてくると考えており、変化をポジティブに捉えることが大切だ。物流は、輸送や保管、荷役、流通加工など各工程に分けることができるが、足元では個別完結型の物流からネットワーク型の物流に変革しつつある。基幹物流の担い手、地域物流の担い手、海上輸送の担い手が、しっかり自分の役割を認識し、互いにつながることで効率的かつ持続可能な物流の未来ができるだろう。2024年問題についても、単にトラック業界の問題として捉えるのではダメだ。荷主とトラック事業者、われわれフェリー業界が同じテーブルにつき、大消費地にどのように貨物を運ぶかを皆が同じ目線で検討していく必要がある。大手トラック事業者は中継輸送も可能だが、宮崎県内のトラック会社は中小企業が多いため、中継拠点の整備など大きな投資は難しい。フェリーという選択肢を知ってもらい、ネットワーク型の物流体制を構築していきたい。農畜産物の生産・供給拠点である宮崎県の産業を支える意味で、フェリーは大切な存在だと自負している」
 ― 国際コンテナ貨物に関して、戦略港湾へのフィーダー輸送という視点でフェリーが果たす役割もあるのではないか。
 「国際フィーダー輸送もチャレンジしたい課題だ。現在も宮崎牛や宮崎県の水産物などが北米向けに航空輸送されているが、足元では海上輸送の鮮度保持技術は格段に進化しており、将来的には船という選択肢も選ばれる可能性はある。当社のフェリーで宮崎からハブ港湾となる神戸港に輸送し、外航コンテナ船に接続して輸送されるケースも出てくるかもしれない。まずはトライアル輸送からになるとは思うが、荷主と連携しながら品質の確認や輸送コストを低減する取り組みを検討していく価値はある」

■人材育成に積極投資

 ― 燃料油価格の高騰が続いている。
 「燃料油価格の高騰は悩ましい問題だ。政府の燃料油価格激変緩和事業は大きな力になっているが、それでも高値水準は続いている。国際情勢や為替動向によって左右されるが、今後も高値水準が続くのであれば、業界を挙げて政府に支援要請を行っていくことも大切な課題だと考えている。一方、自助努力として、燃料油価格が高止まりする中でも運営していけるような経営体制を検討していかなければならない」
 ― 新船ではスクラバーを搭載した。環境対策の方針は。
 「スクラバーは初期投資が大きかったものの、導入により燃料油コストは減少したため、この選択は正解だったと考えている。今後も環境規制は厳格化していく見通しだが、しっかり対応していく。また新船ではスクラバーに加えて、省エネ船型の採用による省エネ効果も出ている。詳細はこれから分析していくが、一定程度の省エネ効果は見込んでいる」
 ― デジタル化も重要なテーマだ。
 「デジタル化は、どの業態でも進めていかなければならない課題だ。フェリー業界においては、デジタル化を進めることで、より安全・安心な運航体制を構築することと、お客さまのサービス向上につなげていくことが重要だと考えている。当社では今年度中に予約システムを構築し、旅客の利便性を高めていく予定だ。また新船になったことで、ビッグデータを活用し、安全・安心な運航体制の構築につなげていきたい」
 ― 内航業界では労働者不足が課題となっている。現在の状況と、人材確保・育成の方針は。
 「労働者の確保・育成は重要な課題だ。一方、当社の近隣には宮崎海洋高校があり、安定的に優秀な人材を集められる環境にある。離職もほとんどなく、定着率も良い状況だ。しかし、将来を見据えると安定的に優れた人材を採用していく仕組みが大切になる。8月からは当社のホームページに採用コーナーを設置し、採用にも力を入れている」
 「人材育成も強化している。人材育成の担当部門を創設し、研修に力を入れている。今回、2隻のフェリーというハードを更新したが、会社を持続的に運営していくために必要な最大の財産は人だ。社員が成長することで企業の力が伸びていくと考えており、人に対する投資を積極的に行っていく。社員一人ひとりが設定した目標を達成し、キャリアアップを果たしていくような姿が理想だ。新船以上に、人が一番の魅力になるような会社づくりを進めていきたい」
(聞き手:中村晃輔)
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