2022年10月14日無料公開記事内航NEXT 内航海運、正念場の船員確保

《連載》内航海運、正念場の船員確保(下)
定着率向上へ職場環境改善
新技術による負担軽減・省力化が鍵

内航船員の年齢階層別推移(国土交通省説明資料より)

 内航船員の確保育成は古くて新しい問題で、これまでも船員が近い将来枯渇すると言われてきた。その中で内航海運業界が必要船員数を確保し続けることができた理由は、外国人化が進んだ外航船や漁船などの離職船員という大きな人材供給源が存在したことと、内航海運が船型大型化・省力化によって全体の輸送力を維持しつつ必要船員数を減らしてきたためだ。国土交通省によると、内航船員数は1974年の約7万1000人から現在は約2万8000人に減少。この間に内航船の隻数は約1万6000隻から約5000隻へ減少した。現在の内航船員確保育成問題がこれまでよりも深刻と言われるのは、これまでのように離職船員や船型大型化などで船員の減少を吸収する余地がほとんどない中で、日本社会の少子高齢化の進行によって陸上の職業との人材獲得競争がさらに厳しさを増しているためだ。
 直近の10年間を見ると、内航船員の人数は緩やかに増加している。30歳未満の若年船員の割合も約19%に増加する一方で50歳以上の高齢船員が約47%に減少するなど、年齢構成も一見すると改善している。ただ、60歳以上の船員の割合は約24%と10年前から10ポイント上昇しており、ベテラン船員が退職を先延ばしして内航船の現場を支えている現状が伺える。この層がリタイアする時に内航船員の人手不足がさらに深刻化すると危惧されている。
 内航海運業界はこの状況にただ手をこまねていたわけではなく、新卒採用に力を入れてきた。内航船員のリクルート活動は、国交省などが主催する就職フェアへの参加や学校の個別訪問などが基本だが、イメージキャラクターを使用するなど若者に訴えるパンフレットやホームページを作成したり、女性船員や海技資格を持たない海上未経験者のキャデット(船員訓練生)などの採用を拡大するなど、さまざまな工夫を行っている。特にSNSを活用して内航船員の仕事や船上での生活を紹介する内航海運事業者が増えており、SNSから船員の仕事に興味をもって採用につながるなど効果を挙げている。日本内航海運組合総連合会も、若年層に対して内航船員の仕事の魅力を訴求する特設サイトとYouTubeチャンネルを開設した。
 こうした業界の努力もあって、内航船員の新卒採用は増加傾向だ。国交省によると内航船員の35歳未満の割合は2006年の約19%から2020年に28%に上昇し、全産業の平均(約25%)を上回った。一方、新人内航船員の定着率(現時点で在籍する30歳未満の内航船員数÷各年の30歳未満の新規就業者数の合計)は2015年の約85%から2020年に78%へ低下しており、採用して育てた若手船員をいかに定着させるかが課題になっている。内航海運各社は、現代の若者の志向に合わせて乗船と休暇のスパンを短くしたり、陸上も含めて船員と密にコミュニケーションをとって孤立させない、ハラスメント研修の実施といったソフト面の対応や、家具・寝具などの生活用品の充実などに取り組んでいる。特に船上のインターネット通信環境が若者離れの大きな一因と言われており、この面での有効なソリューションの登場が切望されている。
 内航海運業界が新卒船員の採用と定着率向上に地道に取り組む一方で、中長期的な取り組みとしてイノベーションによる内航船員の人材問題への対応が検討されている。船上の業務負担軽減と生活の質の向上、船上業務の省力化(究極的には無人運航)という2つのテーマがあり、企業間連携による具体的な取り組みも出てきた。内航ゼロエミッション船の本命と言われるバッテリー船も、低騒音・低振動などによる船内環境改善と機関業務を中心とする省力化に寄与すると期待されている。
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