国際海事機関(IMO)での温室効果ガス(GHG)の規制枠組みの採択は延期されたが、造船所は新燃料船や関連技術の開発・対応を従来通り進める方針で、新燃料船の技術開発を今後どのように進めていくかも課題となっている。代替燃料船の開発動向は、中国が集中開発、韓国が各社独自、日本がエンジニアリング会社やアライアンスの活用と各国で体制が異なっている。
二元燃料船でもシェアを急拡大する中国では、船型開発を中国船舶集団(CSSC)の船舶設計会社、上海船舶設計研究院(SDARI)や中国船舶海洋工程設計研究院(MARIC)が集中的に手掛け、開発した基本設計を国営や民営造船所各社が利用するというモデルだが、二元燃料船でも同様にこうした設計会社が開発したデザインを造船所各社に展開している。国営や民営大手造船所が独自に開発した二元燃料仕様のコンテナ船などもあるが、開発部門を持つ造船所でも主力船種以外のデザインは、SDARIなどを活用して、自社の開発リソースは集中的に戦略船種・船型、フラッグシップの開発に投入する体制をとっている。
設計会社が集中的に開発を手掛けるため、建造船や受注船のラインアップをみても、きめ細かくデザインがそろっている。例えば、近年に急激に代替燃料船の整備が進んでいる1万TEU級以上のメガコンテナ船をみると、LNG燃料だけで1万~2万4000TEU級までほぼ1000TEUきざみに15以上のラインアップがある。
中国造船業はここ数年、主力製品としてきた汎用のバルカーから高付加価値船への志向を強め、製品戦略を大きく転換してきた。この過程でLNG燃料をはじめとした二元燃料船の取り組みを進める造船所には「設備投資などに対して国や州政府がまとまった補助をしてきた。このため、大手は最新鋭の二元燃料船の製造設備がそろっている」(市場関係者)という。二元燃料船の開発、建造体制の整備とも、国の政策として主導してきたと言えそうだ。
韓国造船業は大手3社を中心とした各社独自の開発路線をとっている。もともと大手3社が各社ともLNG船を手掛けていることもあり、各社ともガス燃料船の開発に関する知見が豊富にあり、二元燃料船の分野でもメガコンテナ船やタンカーで先行してきた。
日本も当初は各社の独自開発路線で進め、当初は自前で開発を内製化して進める考えの造船所もあった。ただ、ガスに関するノウハウが少ない造船所が多かったことや、代替燃料は従来燃料油よりも発熱量が低く、より大きな燃料タンク容量を必要となり、航路やニーズに応じて検討が必要だったこともあり、多くの造船所がエンジニアリング会社と協業しながら開発を進める方針に転換。開発やエンジニアリングを手掛ける三菱造船や常石ソリューションズ東京ベイ(旧三井E&S造船)といった企業との協業体制により、多くの二元燃料船が建造されてきた。造船所の設計リソースが不足する中で、二元燃料できめ細かなニーズに対応するため、エンジニアリング会社が担う役割も大きくなっている。
アンモニア燃料船やLCO2船といった分野では、日本では当初からアライアンスによる共同開発を進めている。こうしたアライアンスの体制がパイロットプロジェクト以外にも広がってくるかも、国際競争力の観点から今後の焦点の1つとなりそうだ。