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2025年9月18日無料公開記事洋上風力発電

浮体基礎は年30万トン規模に需要拡大へ
中小型造工、需要推計を講演、CTVは年4~8隻

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中小型造工の西田常務理事が講演

 日本中小型造船工業会は、17~19日に幕張メッセで開催中の「WIND EXPO【秋】~第16回 [国際] 風力発電展~」に出展し、浮体式洋上風力セミナーで同工業会の西田浩之常務理事が講演を行った。作業員輸送船(CTV)とサービス・オペレーション・ベッセル(SOV)と浮体基礎(ブロック製造)の新造需要推計として、洋上風力発電の運用が本格化する2038年以降に「CTVは建造可能な日本の造船所の建造量として年4~8隻程度、SOVは10年間で5~7隻程度の需要がある。浮体基礎は年間約30万トンのブロック製造という1つの産業並みの大きな需要になる」(西田常務理事、以下同)と試算し、国産のSOVと大型CTVの建造実現や新規参入の推進に加えて「ブロック需要を中小型造船業が取り込む体制や、舶用ブロックの革新的な建造手法の共同検討」を今後の課題・戦略として示した。
 17日の講演では「浮体式洋上風力発電に対する中小造工の二刀流戦略」と題して、中小型造工が洋上風力発電支援船と、浮体基礎の二本柱について新造需要の推計や戦略を示した。新造需要の推計は、政府のエネルギー基本計画、国土交通省海事局による「洋上風力関係船舶確保のあり方に関する検討会」の数値目標や見通しをもとに、中小型造工として建造に必要なCTV・SOV、着床式と浮体式の建設割合、鋼製浮体基礎製造にかかる鋼材量のシナリオなどを独自に検証し、試算した。
 CTVは、2038年以降に年4~8隻程度の新規需要が安定的に生じ、「2047年以降も継続していく。この船腹需要はアルミの双胴CTVの建造能力のある中小型造船所2~5社で建造可能な量で、造船所の新規参入も望まれる」との認識を示した。SOVは2038年からの10年間で5~7隻程度の需要推計を示し「海外製の艤装品の多さやDPS機能など留意点はあるが、一度建造すれば安定した需要も期待できる」とした。こうした支援船の建造では、同工業会として日本のサプライチェーンで調達可能な舶用機器類を搭載したCTVとSOVの概念設計を完了しており、欧州などからの技術支援の継続実施とともに、浮体式洋上風力発電用に必要となるアンカーハンドラー(AHTSV)の機能・要目などを検討するとしている。
 浮体基礎は、舶用ブロックと親和性の高い鋼製バージ型の浮体基礎の需要について試算した。10MWのバージ型浮体基礎にかかる鋼材重量を約2000~3000トン(8000総トン級タンカー1隻分と同等)と推定し、新規浮体式発電基数を低位と高位シナリオで試算すると年間22万8000~38万7000トンの鋼材重量となり「1年間に日本で建造される船舶のおよそ10分の1程度の鋼材重量と、1年間に製造される浮体基礎の鋼材重量がほぼ同等になる」と説明。「新産業として新たな製造工場設置を考えるべきレベル。当工業会で共同で検討している革新的な建造手法についてさらに検討を進め、浮体基礎用の大量の鋼製ブロック需要に応えられる生産体制につなげていきたい。こうした取り組みは船舶建造コスト削減にもつながる可能性がある」と語った。

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