2025年6月4日無料公開記事日本造船協業の本気
先月、今治市で開催された「バリシップフォーラム2025」。その初日は、さながら協業への決意宣言の場となった。
日本郵船の長澤仁志会長は基調講演で、海事産業の成長性と、日本の安全保障を支える重要性を改めて強調。そのうえで、日本の海運・造船として「小異を捨てて大同団結を」と呼びかけた。これに呼応する形で、造船経営者によるパネルディスカッションでも、各社トップが造船所間の協業に向け、これまで以上に強い意欲を示した。
今治造船の檜垣幸人社長は、次世代船で世界トップシェアを取ることが「日本造船業の使命」だとし、「その点に関しては、本当に協業しないといけない」と力説した。
長澤会長と檜垣社長が、業界連携の具体例の一つとして共通して挙げたのが、LCO2船の標準仕様・船型確立に向けた共同検討だ。日本郵船、商船三井、川崎汽船の邦船大手3社と、今治造船、ジャパンマリンユナイテッド(JMU)、日本シップヤード(NSY)、三菱造船の造船4社が、昨年8月から進めているプロジェクトだ。
LCO2船は、2030年前後から二酸化炭素(CO2)の回収・貯留・再利用(CCS/CCUS)向けに需要が拡大すると見込まれている。国内造船所でLCO2船の量産体制を構築するため、プロジェクトでは邦船3社も連携し、標準船型の確立を目指す。実現すれば、日本の造船所が分担して標準船を量産するという、過去に例のないスキームにつながる可能性もある。
さらに、LCO2船での連携を端緒に、アンモニアなど新燃料船の設計・開発・建造を共同で検討する動きも視野に入る。
造船所間の協業が、これまで「各論反対」に陥りやすかった背景には、いくつかの理由がある。造船所同士が、自社の技術やノウハウ、営業情報の流出を警戒して腹を割った議論がしにくいこと。標準化や統一化の過程で、自社のやり方を譲らない主導権争いのような状況が生じやすいこと。さらには、我田引水的な利害衝突がしばしば発生してきたことだ。
当事者にとっては重要なポイントでも、周囲から見れば、まさに「小異」が「大同団結」を妨げているように映ってきた。これに対し、LCO2船のような将来技術は、協業に踏み出しやすい分野だ。各社とも、まだノウハウや実績が確立していないため、「次世代船こそ協業の好機」(造船経営者)といえる。
バリシップフォーラムでは、名村造船所の名村建介社長も、「技術を出し合うことで、より高いものを目指すべきだ。7社連合に対しても、当社は強い関心を持っている」と発言するなど、次世代船での連携への関心は一段と高まっている。
さらに、LCO2船に続く動きとして、川崎重工業と今治造船、JMUは、液化水素運搬船の建造体制構築に向けた共同検討も開始した。LCO2船と同様、将来の国内量産体制を見据えた連携だ。川重は、液化水素船の開発に乗り出した当初から、国内の他造船所へ連携を広げる考えを示してきたが、ようやくこの構想が端緒についた。
三菱造船が建造したLCO2船〝えくすくうる”。川崎重工が建造した液化水素船〝すいそふろんてぃあ”。日本の造船所は、これら次世代船の世界第一号船を生み出してきた。一方で、過去には、世界初を達成しながらも、そのアドバンテージを事業化に十分生かせなかった例もある。
LCO2船の7社連合と、水素の3社連合は、協業の輪を広げながら、次世代船を日本造船業の武器にできるか。
(対馬和弘)