1. ニュース

2025年3月4日無料公開記事中国造船シェア6割時代

《連載》中国造船シェア6割時代④
中国船の評価、新興勢台頭でどうなる

  • X
  • facebook
  • LINE
  • LinkedIn
この20年、中国造船所の建造量が拡大するとともに、中国建造船に対する評価も改善してきた。

「技術力」に関しては、個別造船所というより、上海船舶設計研究院(SDARI)をはじめとした設計会社のデザインの対応力が高まってきたことが大きい。

一方、建造船の実際の品質・性能面については、今も造船所によって差があるほか、「同じ工場でも個船によってばらつきがあり、ハズレを引くと就航後にスピードが出ないとか、そういう例もある」(商社関係者)との指摘もある。ただ、「『当たり』を引ける確率は昔に比べて上がっているし、それを建造時にコントロールするための発注者側の知見も高まっている」との面もあるようだ。

かつてのような品質・性能に起因する深刻なトラブルは減った。それは、造船所ごとの品質管理などの力量が上がっていることもあるだろうが、「この10年間の不況で中国造船所がふるいにかけられ、一定水準以上の技術を持つ造船所だけが残ったから、という面もあろう」(海運関係者)。

かつて、日本の海運会社などが十分に信頼をおける「トップティア」の中国造船所といえば、日系造船所や国営大手の一部などに限られていた。こうした造船所は昔から、品質管理や工程管理などに対する評価は高かった。この次の「セカンドティア」として、トップ造船所ほどではないが、建造時に適切に管理することで、一定水準の船が建造できる造船所群が多数おり、さらにその下に、技術水準や顧客対応が不十分な造船所が多数あった。

リーマンショック後の造船不況で起きたのは、この一番下のクラスの造船所の淘汰だった。中国では2010年以降、未成熟な造船所の多くが市場から姿を消した。生き残ったのは、もともと高いレベルを持つトップティアと、セカンドティアの造船所群。そして「セカンドティアの造船所も管理手法が近代化し、不況の中でもさまざまな船を建造し続けたことで経験が蓄積された」。不況を生き残った造船所と、この業界に留まった技術者・技能者たちが、中国造船業全体の力を高めた。

一方、これからは、最近参入した新興の造船所などの建造が本格化する。経営破綻した造船所の休眠設備を取得して造船業に参入した企業や、設備を再稼働した造船所群が一昨年から膨大な量の新造船を受注した。昨年の中国造船業の建造量はIHS統計によると3700万総トン。一方、2026年に建造が予定されている船は、現時点の受注残からすると4700万総トンにのぼる。今後2年で、日本1国分に相当する1000万総トン分が増産されるわけだが、この増加分の多くは、こうした新興勢が担う。これまでバルカーなどに特化していた小規模造船所で、より高難度の建造なども始まる。

「受注時の調達の見積もりが甘く、すぐに船主に納期遅れが通達された」、「実力以上の船を受注してしまい、すでに工程が遅れ始めている」など、20年前を思わせる噂も現地からは聞こえる。この一方では、「ある新興造船所では、不況時に国営大手を退職したベテランが多数採用されており、現場の中核的ポジションについている」(現地関係者)など、想定よりもスムーズに工場運営が進むとの読みもある。

新規参入組が初めから一定レベルの船を建造できるほどに、中国造船業全体の実力は底上げされたかどうか。中国建造船への評価は、再び隘路に立つ。

関連記事

  • ブランディング
  • 増刊号地方港特集