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2025年3月3日無料公開記事中国造船シェア6割時代

《連載》中国造船シェア6割時代③
中国が新造市場の標準に

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「中国建造船を見る機会が多いが、実際に船内を隅々まで見ると、最近の建造船であっても『あれ?』と思うところは少なくない。このレベルで『中国船の品質もそん色ない』と評価されているのかと思うと、日本の造船所が気の毒に思える」。ある技術系の関係者はそう語る。

建造船の品質や性能は、中国造船の課題と言われてきた。昔に比べて改善したとの評価は多いものの、「『そん色ない』は言い過ぎで、あくまで『許容できるレベルの船』を建造できる造船所が増えた、と理解している」(商社関係者)

中国造船の技術向上については詳細を次回に改めたい。ただ、押さえておくべきポイントは、中国の建造シェアが世界の過半を占めるようになると、こうした中国建造船が市場でのスタンダードになっていく、ということだ。「品質や性能を専門的に評価するというより、『問題なく運航しているのだから大丈夫だろう』といった判断が増えているのも、中国のスタンダード化によって期待水準が切り下がっている表れかもしれない」(日本造船関係者)

一方、中国造船所はベースとなるコストの安さも背景に、基本スペックを高めに設定しているケースが多い。この点を挙げ、品質とは別の観点から「中国船は優れている」と評価する船主もいる。これまでも船種によっては、韓国スペックが市場のスタンダードになってきたが、今後は多くの船種で中国仕様が標準になる可能性がある。実際、日本造船所の標準スペックが市場で見劣りする事態も出始めているという。

そして、中国造船業がスタンダードになるうえで、最大のポイントとなるのが船価だ。「市場で過半を握る国がプライスリーダーになるのは必然だ」(造船関係者)。例えば、ブローカーによる船価インデックスも「より中国価格に寄っていくのではないか」(同)

これまでも、中国が高い市場シェアを持つ船種では、中国船価が一定の影響力を持っていた。代表例がバルカーだ。日本と中国は顧客層が異なるため、直接競合する場面は少なく、それぞれ別の価格相場が形成されている。しかし、中国の造船所が、中国鋼材価格下落や仕事不足など固有の事情で船価を引き下げれば、日本がその影響を全く受けないわけではない。今後、こうした価格波及の度合いは強まる可能性がある。

あるいは、これまで韓国が価格主導権を握ってきたLNG船でも、従来のように韓国価格をベンチマークとした相場形成ではなく、中国の船価がより大きな影響力を持つようになるかもしれない。

影響は新造船段階にとどまらない。IHS統計をもとに本紙が試算したところ、現在、世界の商船隊(100総トン以上の貨物船)約6万7000隻のうち、中国造船所での建造船は約1万8000隻で、全体の26%を占める。日本建造船は約1万9000隻で28%を占めており、なお世界で運航している船には日本建造船が多い。だが、中国から大量の新造船が竣工し続ければ、世界の海で中国建造船の比率は確実に高まる。

中国建造船が世界の商船隊の中心になったとき、海上輸送の姿はどう変わるのだろうか。

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