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2023年11月28日無料公開記事内航NEXT

内航用の電動ハッチカバーを開発
山中造船、船員負担軽減など内航貨物船の課題解決へ

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 山中造船はこのほど、内航貨物船向けの電動ハッチカバーを開発した。24日に開催された日本舶用工業会(日舶工)の舶用技術フォーラム上で、日本財団の助成を受けて実施した開発成果を明らかにした。ハッチカバーの改良で、船員の負担低減や安全性向上、環境負荷の低減などを目指した。内航船の船型・船種で最も多い貨物船が対象で、299総トン、499総トン、749総トンの鋼材船やバルカー、コンテナ船に搭載可能。今後、開発した電動ハッチカバーを新造船とレトロフィットで搭載・実証しながら開発・検証を続けていく方針だ。
 ハッチカバーには、鋼材船やバルカーなどに多い巻き取り型のエルマンスハッチカバーと、コンテナ船などに多い1枚毎に折りたたまれるシングルプルハッチカバーがあるが、どちらも駆動源として油圧を採用しており、同じ課題がある。例えば、ハッチカバーの開閉に危険が伴うため常に確認者を置く必要があることや、ハッチカバーの油圧機器や配管は経年するとさびの影響で漏油事故のリスクがあること、油圧機器の船員によるメンテナンス作業は難しいことなどが挙げられる。
 そこで、同社は電動化・デジタル化でプログラム制御・状態の「見える化」や、機器の連携を実現し、船員の負担低減・安全性向上・メンテナンス性向上を図ることを目指した。
 開発では、まずハッチカバーの電動化のため、プログラムの開発と検証を陸上で実施。その後、搭載する機器を全て接続し、実船に近い環境で陸上試験を行った。最終的に機器を船に搭載し、動作検証や、トラブル時を想定した試運転を行った。
 技術開発では、電動駆動機の採用で、省力化と開閉の静音化を実現。電動シリンダーの採用で、配管レスによるメンテナンス性向上を実現した。電動ハッチカバーの制御盤は、船のデッドスペースのあるホールド横の通路に設置し、スペースを有効活用。配管工事が不要なため、工期短縮への寄与が見込まれるとした。開閉操作は、エリアセンサーを操作部の反対側に設置し、人や物などに反応すると開閉が不可となるため、不慮の事故を回避できる。操作部は、直感的に操作ができる配置とした。
 また、ブリッジ構造に遠隔操作部を設置し、ブリッジからでも電動ハッチカバーの操作ができるようにした。状態監視画面は駆動部・シリンダーのスピードやトルクを数値で表示し、「見える化」を実現。さらに、各シーケンスに閾値を設定し警報を発令する機能も持たせている。ブリッジには多数のモニターを設定し、ハッチカバーの情報以外も表示する機能を持たせた。管理PCはリモート接続が可能で、緊急時は陸上からリモートメンテナンスができる仕様とした。
 開発した技術が、内航ミライ研究会が開発・建造を進めてきた次世代コンセプトシップ「SIM-SHIP(シムシップ)」の第一号「SIM-SHIP1」として、山中造船が建造した499総トン型内航貨物船“國喜68”に採用されたことも紹介した。同船では、巻き取り型のエルマンスハッチカバーの電動化も完了、SKウインチの協力を得てウインチも電動化し、油圧レスを達成した。また、タッチパネルまたはリモコンでハッチカバーの開閉操作ができるようにするなど、さらなる改良を加えたと説明した。

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