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2023年11月20日無料公開記事内航NEXT

漁船と内航船に新発想の居住区
長崎船舶装備、プライベート空間確保・機能性も充実

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長崎船舶装備が新提案する、ラグジュアリー感あふれる漁船居住区(4人用居室)

長崎船舶装備は、船員の快適性向上を実現する新たな発想の居住区「次世代居住区」の開発を進めている。このほど、新たに漁船の居住区と、内航船船長級のシャワーユニット付き居住区のモデルルームを、長崎市香焼町の長崎工場内に完成させた。限られたスペースの中で、プライベート空間の確保と機能性の充実を実現している。広島県尾道市の同社中国事業部にも同様のモデルルームを設けており、2拠点体制で同社が提案する居住区を発信していく。今後、さらに外航船居住区のモデルルームも設置する計画だ。


同社は、船舶の居住環境の改善によって内航業界の人手不足などの課題解決に貢献しようと「次世代居住区」の開発に着手しており、昨年、第一弾として、内航船居住区のモデルルームを設置した。今回は、これに続く取り組みとなる。

開発コンセプトは、余裕のある収納スペースの確保や間接照明の採用といった「プライベート空間・機能の充実」と、グレードアップ可能な「標準仕様」だ。若者の嗜好の変化に対応し、プライベートスペースをきちんと確保することに加え、あえて最低限の機能に絞った標準仕様とすることで、顧客のニーズを引き出すことを狙っている。

新たに設けたモデルルームのうち、漁船居住区は、若者の漁業就業希望者の増加に向け、漁業でいまだに残る「3K(きつい、汚い、危険)」のイメージを和らげることを目指した。一般の漁船員の居住区を想定し、床面積3.76㎡の2人用居室と、7.36㎡の4人用居室の2部屋を設ける。家具や壁は明るい色使いで、若者でも受け入れやすい、清潔感やモダンさ、そしてラグジュアリー感ある作り。天井灯ではなく間接照明を採用し、柔らかい雰囲気を演出している。

漁船居住区の寝台は、ロールスクリーンで仕切ってプライベート空間を確保している

従来は大部屋タイプだった寝台については、「現代的に解釈し、『部屋感』を設けた」と宮崎一郎設計部デザイン課長。カーテンの代わりにロールスクリーンで仕切ってプライベート空間を確保し、「1人の時間」を快適に過ごせるようにした。各寝台内は、壁掛けテレビや灯具、コンセント、パンカールーバー(空調用吹出口)、小物入れを備えており、一人時間を快適に過ごすために必要なものが一通りそろう。

限られた空間内で最大の収納スペースも確保しており、衣服箱に加え、ベンチ下を収納庫として使うことができる。さらに居室内には、要望が多い冷蔵庫も設けた。今後、漁船の乗組員やモデルルームの見学者らのフィードバックを得て、ブラッシュアップしていく方針だ。

一方の船長級シャワーユニット付きの居室は、既設居室とほぼ同面積の約10㎡の広さ。顧客が実際に採用した部屋のイメージをしやすいよう、499総㌧クラスの一般的な部屋の形状とした。最大の特徴は、居室にシャワーユニットを装備していることと、128リットルと十分な容量を持つ冷蔵庫、そして洗濯機を備えることだ。シャワーや家電類一式を居室内にそろえることで、よりプライバシー性を高めている。

解放感ある雰囲気に仕上げた、内航船船長級シャワーユニット付きの居室

同船長級居室内には、十分な広さを確保したシャワーユニットを設けている

居室の床面積は約6畳程度で、高さは2m少し。ゆったりと座れるソファーまで据えられているが、不思議と狭さは感じない。宮崎課長によれば、空間の作り方によって、「視界が抜け、広がりを感じる部屋」を演出することが可能になるという。

シャワーユニットは、限られたスペースながら、シャワー室、トイレともに十分な空間を確保している。なお、このシャワーユニットは、企画開発部の別プロジェクトチームが開発したものを採用している。外航船向けを想定し、浴槽を備えたバスタイプもそろえるそうだ。

このほか、第一弾として昨年設置した既設の内航船居住区モデルルームについても、顧客からのフィードバックを反映し、小物収納スペースを追設する、室内物干しを取り付ける、デスクサイズや形状をより使いやすく変更するーといった複数の改良を加えた。また、尾道市の中国事業部にも、内航船居住区と、漁船居住区のモデルルームを設けた。宮崎課長は、「(次世代居住区の取り組みを)継続していくことで、船舶内装業界のレベルアップに貢献できると考えている。また、造船所や船主から直接意見を聞くことで新たな居住区のあり方の一つの突破口になるのでは」と期待を寄せる。

これまで、同社のモデルルームには国内外含め約60社、152人が訪れており、既に新造・改装を含め5件の実案件にも結び付いている。松尾信一郎専務取締役は、「(モデルルームの設置で)新たな造船所とのつながりができたほか、実際に船を使う立場である船員や船主からいろいろな意見を直接、聞くことができるようになった」とし、「この動きが徐々に広がって、よりよい船の実現と船員の確保、ひいては居住性の向上に一役買えれば」と力を込めた。

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