2022年10月27日無料公開記事内航NEXT
新たな内航船居住区を提案
長崎船舶装備、最小面積で最適空間を実現
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長崎市内の家具工場内に完成したモデルルームの一室
船舶内装業の長崎船舶装備はこのほど、新たな内航船居住区を考案した。499トン型内航船の居室をターゲットとしており、限られたスペースの中でも快適性を追求した居住環境を提案する。若手や女性、熟練の船員まで、幅広い年代が船上でより快適に過ごせる環境の実現を目指す。今後、外航船や漁船向けにも新たな居住区提案の取り組みを拡大する方針だ。また、このほど長崎市内にある同社家具工場内に、新たな内航船居住区のモデルルームも完成させた。
新たな居住区の仕様の開発のきっかけとなったのは、ある船主から、内航海運業界の人手不足の現状や、「若者や女性が船に乗る仕事をしたいと思えて、かつ熟練の船員も長く仕事を続けたいと思えるような船を作りたい」との熱い思いを聞いたことだった。
同社は2020年度から新規事業開発に特化した「企画開発部」を軸に、さまざまなアイデアの具現化を進めていた。この取り組みの一環として、くだんの船主の話に着想を得て、船員の快適性向上を実現する居住区の開発に着手することにした。
新たな居住区は、利用者の身体的、心理的快適性に重点を置き、合理的な空間設計によって必要最小面積を導き出し、理想的な居住空間を開発コンセプトに検討を進めた結果、このほど、「船長級」「職員級・部員級」「食堂」の3室のモデルルームが完成した。
新たなモデルルームは、一般的な最高グレード仕様のモデルルームとは異なり、実際の現場での利用を想定した「ベーシック仕様」となっており、顧客の要望に応じて、グレードアップなどのカスタマイズも可能だ。また、内航船に限らず、漁船や外航船でも人手不足は課題となっており、「外航船や漁船に対しても、順次、取り組みを広げていきたい」(藤田明宏企画開発部長)とする。
同社によると、非日常を提供する旅客船は別として、一般商船は世界市場での受注競争に打ち勝つための量産による合理化で、船舶の居住区は変化から大きく取り残されてしまった。そこに一般世帯の生活水準の向上などもあり、陸上と船上の住環境の間に、大きな乖離が生じているという。同社の宮崎一郎設計部デザイン課長は、「(陸と船上の住環境を)同じ水準には持っていきたいと思っており、それが船員不足などの問題解決にもつながると考えている」と力を込める。
この取り組みと長崎船舶装備の名前を広く知ってもらおうと、新開発したモデルルームは意匠登録を申請中だ。同モデルルームは、顧客をメインに、希望者向けに公開している。