2024年10月1日無料公開記事洋上風力発電
浮体式中心に洋上風力事業展開
東京ガス、国内での事業化見据え取組加速
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(プリンシプル・パワー社、オーシャン・ウインズ社より提供)
東京ガスは2050年の電力の脱炭素化の主軸を再エネ拡大と位置づけており、その一環として洋上風力事業に取り組んでいる。なかでも浮体式洋上風力については日本の地理的特性から導入ポテンシャルが高い分野としていち早く着手し、国内での事業化に向け、浮体基礎技術のエンジニアリング会社への出資や海外案件への参画、ファンドを活用した海外アセット投資などを組み合わせ、取り組みを加速している。
■浮体式洋上風力開発部を今年4月に新設
東京ガスは今年4月に浮体式洋上風力開発部を新設した。これまで洋上風力事業を所管していた再生可能エネルギー事業部から浮体式洋上風力部隊を独立させた形で、着床式洋上風力を担う再生可能エネルギー事業部と2部体制をしいている。
着床式洋上風力では港湾区域で鹿島港洋上風力発電事業の開発を進めている。一般海域においても、国内着床式案件の参画に向け取り組んでいる。
同社は浮体式洋上風力事業を検討する中で、国内港湾の利活用の観点から、岸壁での作業が可能な浅喫水のセミサブ型に焦点を当てた。2020年5月にはセミサブ型の浮体基礎技術を開発する米プリンシプル・パワー社に出資参画し、主要3株主の一社となった。同社が開発するウィンドフロート技術は動バラスト制御による安定化・軽量化を実現しており、欧州ではすでに大型風車への採用実績がある。浮体式洋上風力開発部の広瀬路子部長は同社の技術について、「技術成熟度レベル(TRL)は最高のレベル9に達しており、欧州での3件の採用事例では、銀行からの融資も受けているものもあり、商用化可能な成熟度の高い技術」と評価する。
東京ガスはプリンシプル・パワー社への出資参画を背景にウィンドフロート技術を採用した取り組みを優先的に検討していく方針だ。一方で浮体式洋上風力はまだ黎明期にあることから、他社技術の発展の動向を見据えつつ、状況に応じて最適な技術を選んでいきたい考えだ。
ウィンドフロート技術を活用した取り組みでは、2022年に採択された新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金事業「洋上風力発電の低コスト化プロジェクト」で、浮体式基礎の量産化手法の検証として15MW級風車対応の浮体基礎の一部を実スケールモックアップで製作した。浮体式基礎の製造・組み立てにおいては造船所ドックの不足が課題となっていることから、1つの造船所ドックに依存しない量産化手法として基礎を各ブロックに分割して製造し、一か所に集めて組立を行う手法を確立した。検証ではカラム(支柱)をはじめとするブロック化した基礎を異なる造船所で製造し、それらを一か所の拠点に集約した後、最終組立を行った。同取り組みでは国内サプライチェーンの活用もポイントの一つであり、これらの浮体式基礎の最適化・量産化、ハイブリッド係留システムの最適化や低コスト施工技術の開発において三井E&S造船、大成建設らが協力した。
■海外案件で知見獲得、国内に還元
東京ガスは国内での着床式・浮体式洋上風力の事業化に向け、先行する欧州案件への参画を通じた知見の獲得にも取り組んでいる。今年8月にはポルトガルで稼働中の浮体式洋上風力発電所「ウインドフロート・アトランティック」の参画に合意。同事業はプリンシプル・パワー社の共同株主であるオーシャン・ウインズ社との共同事業となる。
また、英オクトパスエナジーが設立した洋上風力ファンドに出資し、同ファンドを通じ、オランダや英国の着床式洋上風力事業への出資を実現している。
オクトパス社はデジタル技術を活用して急成長した電力小売事業者で、東京ガスは同社のビジネスモデルを学び電力分野におけるデジタル取引プラットフォームを構築したい考えだ。洋上風力発電をはじめとする再生可能エネルギーの開発に取り組みつつ、その非化石電源を最適なかたちで顧客に供給するための仕組みづくりにも取り組んでいる。