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2023年9月12日無料公開記事洋上風力発電

浮体最適化・量産化など取り組む
ジャパンマリンユナイテッド、セミサブ型で

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 ジャパンマリンユナイテッド(JMU)は浮体式洋上風力発電の浮体構造物として、水深に対する制約の無さや波や風に対する安定性の高さなどにより、適用海域が広いセミサブ型を選択し、開発を進めている。浮体や係留システムの最適化をはじめ、浮体の量産化や低コスト施工法の開発に取り組んでいる。海洋・エンジニアリング事業部洋上風力プロジェクト部の岩本昌樹部長は「日本の浮体式洋上風力に適した海域のうち約7割でセミサブ型が主流になるだろう」とし、今後の需要に備える。
 JMUのセミサブ型浮体は4本のコラムで構成されている。世界的にはセミサブ型は3本コラム式が主流だが、ドックでの建造を見据え、浮体の大きさをコンパクトにするため4本コラム式を選択した。風車は4本のうち1本のコラム上に設置するかたちだ。風車を浮体の中央に設置するケースもシミュレーションしたが、岸壁で風車を設置するときに中央部分まで届くクレーンの確保が難しいという問題があり、施工も考慮すると現在の形状がベストとの結論に至ったという。
 同社は2011年からの福島の浮体式洋上風力発電の実証事業に参画し、風車浮体「ふくしま浜風」と洋上変電所「ふくしま絆」の設計建造から、浮体の設置、維持・管理、撤去に携わった。「福島沖での実証研究事業の経験をデザインにフィードバックしている」(岩本洋上風力プロジェクト部長)。
 また、「浮体の最適なデザインは(建造や施工に必要な)インフラに深く関連しており、インフラ次第で最適な形は変わってくる。日本のインフラの整備状況に合わせて、当社も浮体を進化させていくことを考えている」(同)。
 昨年8月から実施している秋田県秋田市・潟上市沖での浮体式洋上風力発電設備のハイブリッド係留の実験ではスケールモデル浮体を建造し、1年間のモニタリングを実施。実験では係留システムの耐久性や設計手法、施工性の検証を行った。
 また、施工技術の開発では、同社が建造したSEP船を港湾内で利用して大型風車を搭載する工法を開発すべく、SEP船の改造設計をし、日本海事協会(NK)から基本設計承認(AiP)を取得した。大型風車向けのインフラが整っていない基地港でも施工を可能とすることを目的としている。
 量産化に向けた取り組みも進める。風車大型化に伴う浮体の大型化を見据え、造船ドックサイズに依存しない工法による量産化を研究。浮体を分割して造船ドック内で建造し、洋上で接合する実験を行っている。浮体を分割することで、国内多くの造船ドックを製作場所として活用することができる。「洋上接合のベースとなる技術は過去に実験したメガフロートの実証実験から得られたが、対象構造物の大きさや喫水の違いなど初めて考慮する部分が多くある。将来的には浮体専門製造工場の建設もあり得るだろうが、現状のインフラを使用し量産化する過渡期においては必要不可欠な技術であると考えている」(建造管理部の奥井啓悦部長)。
 今後の展開について、まず国内での実証事業の実施を目指す方針だ。また、並行して海外展開にも取り組む。「世界的にも浮体式洋上風力は盛り上がりを見せており、韓国やスコットランドなどでも取り組みが進んでいる。経験を積むために、国内に限らず海外にも取り組んでいきたい」(岩本洋上風力プロジェクト部長)との考えだ。

洋上接合の本試験状況

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