2026年3月31日無料公開記事港で輝く女性たち

《連載》港で輝く女性たち⑪
職場と家族の協力で産後も現場に
沖縄港運機材部機材課・末吉希予さん

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 沖縄県の生活と産業を物流面で支える那覇港。同港で機材オペレーターとして活躍するのが沖縄港運機材部機材課の末吉希予さんだ。同社初の女性港湾荷役作業員として入社し現在7年目。入社から約半年で自ら教習所に通い、ガントリークレーンを操作するための免許を取得。港湾労働安定協会が運営する職業訓練施設『港湾技能研修センター』で技術を磨き、現場で活躍している。妊娠・出産、育児休暇を経て現場に復帰した経験を持ち「女性が長く働くためには会社のサポート体制や家族の協力が必要不可欠」と話す。末吉さんに仕事のやりがいや苦労した点を聞いた。

 ― 現在の業務は。
 「ガントリークレーンやフォークリフトを操縦し、東京、大阪、福岡、鹿児島、宮古・石垣、台湾と沖縄本島を結ぶRORO船からの揚荷作業などを手掛けています」
 ― 港で働き始めたきっかけは。
 「前職でトラックドライバーとして荷積みのために港を訪れ、港湾荷役作業を間近で見たことがきっかけです。もともと車両全般が好きで、特にガントリークレーンの操縦に大きな魅力を感じました。当初『女性は募集していない』と断られましたが、数カ月後に性別関係なく募集が開始されたと知り、諦めきれず再度応募。その結果、当社初の女性機材オペレーターとして入社する機会を得ました」
 ― 仕事のやりがいは。
 「沖縄県は海に囲まれ、生活必需品の多くが船舶で運ばれてきます。物流は県民の生活を支える重要な仕事で、その一員として携われていることに責任と使命感を感じます。また業務の中で達成感を覚えるのは、コンテナのサイズや形状を正確に把握し、限られたスペースに安全かつ効率的に積み上げられたときです。コンテナはサイズが異なるため、常に判断しながら作業します。多くのコンテナを無事に積載できたときには大きなやりがいを感じます」
 ― 入社後に苦労した点は。
 「入社当初は男性が多い職場で女性従業員が目立つこともあり、周囲との関係構築に戸惑いました。また女性は長く続かないのではないかという見方もあったと後に知りました。信頼関係を築くため、作業手順などを先輩たちに積極的に相談し、コミュニケーションを重ねました。技術力の向上にも努め、一員として認められるよう努力しました。港湾現場はチームワークが重要です。周囲が作業しやすくなるよう事前準備にも率先して取り組んでいます」
 「設備面は入社当初は女性従業員がいなかったため、男性作業員が女性用トイレを使用することもあり、更衣設備も十分ではありませんでした。ただ会社による整備が進み、現在は後輩の女性作業員も安心して利用できる環境が整っています」
 ― 現場で早く活躍するために努力したことは。
 「入社から半年でガントリークレーンなどの運転に必要な『クレーン・デリック運転士免許』を取得しました。当社では通常、会社から指示を受けた作業員が、費用面の支援も受けながらこの免許を取得します。ただ私はできるだけ早くガントリークレーンを操作できるようになりたいと考え、自費で教習所に通い、免許を取得しました。しかし、免許を取得しても操作経験はありません。免許取得後は会社からの指示でまず『港湾技能研修センター』に通いました」
 「そこでは、座学で操作時のリスクや対処法を習い、実技で実際にガントリークレーンを操作しました。地上約36mからの操縦は、一般的なクレーンの操作とは全く異なります。板ガムほど小さく見えるコンテナを掴むのは非常に難しく、感覚を習得するまで時間がかかりました。操縦室には頭上にモニターがあり、録画を見ながら指導員からもたくさんアドバイスをもらいました。また指導員からは『ゆっくりでいいから、とにかく安全に、正確に』と指導を受けましたね。『応用は後からできる。今はゆっくり基本動作を覚えましょう』と声をかけてもらいました。ガントリークレーンの操作は一歩間違えれば大事故につながります。今の自分のやり方は、先輩たちを見て取り入れた部分もありますが、それも港湾技能研修センターで学んだことが基礎となっています」
 ― 現在の職場のようすは。
 「入社4年目に後輩の女性作業員が入社し、職場の雰囲気は大きく変化しました。男性作業員も自然に女性作業員と接するようになり、それを見て自身の取り組みは間違いではなかったと感じました。また後輩からは『女性が働いていて安心して入社できた』と言われ、先駆者としての役割を実感しました」
 「港湾業界は依然として女性作業員は少数ですが、近年はSNSを通じて他港で機材オペレーターとして働く女性との交流も生まれています。同じ業務に従事する女性の存在は大きな励みです。今後も港で働く女性同士のつながりをさらに広げたいです」
 ― 女性が仕事を長く続けていくために必要なことは。
 「ライフステージの変化に対応できるサポート体制が重要と考えます。また、その具体的な制度や配慮内容を募集要項などに明示することで、女性の応募はさらに増えると感じます」
 「私自身、入社後に妊娠・出産を経験しました。妊娠判明後は体調面から現場業務が難しく、一時的に事務業務に従事し、その後1年間の育休を取得しました。復帰後も子どもの体調不良で保育園からの呼び出しが重なる時期があり、退職を考える人の気持ちも理解できます。その点、当社は家族を優先する風土があり、『すぐに帰ってあげて。こちらは対応する』と声をかけてもらっています。男性の育休取得者もいます。期間は女性より短い傾向にあるものの、育児への理解が職場全体に広がっていると思います。こうした共感の広がりが、より良い制度や職場環境につながると考えます」
 「また、会社と家族双方の協力・調整も欠かせません。私の場合、現在は保育園の送迎時間に配慮した勤務調整をしてもらっていて、家族に送迎を依頼することもあります。会社・家族とも協力的で大きな困難はありませんでしたが、調整が難しく離職を選ぶ人も少なくないと感じます」
 ― この仕事に向いている人は。
 「車両や機械の運転が好きな人であれば、長く続けられると思います。好きという気持ちは上達や継続の大きな原動力になります。港湾荷役は男性中心のイメージが強いかもしれませんが、機械操作が中心で力仕事ではないため、性別に関係なく活躍できます。操作は経験を重ねることで確実に上達します。まずは挑戦し、業務を通じて自分なりの目標ややりがいを見つけていくことが大切だと考えます」
(聞き手:山﨑もも香、取材協力:日本港運協会)

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