2022年9月27日無料公開記事内航NEXT
内航キーマンインタビュー
<内航NEXT>
《連載》内航キーマンインタビュー⑮
内航輸送とドレージ一体提供で強み
横浜コンテナライン 渡辺取締役/菱沼営業部長
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横浜コンテナラインは2000年以来、横浜と苫小牧を結ぶ内航フィーダーコンテナ航路を運航している。2008年に、北海道に本社を置く物流会社トランシスの傘下に入り、現在は海上輸送に加えて両端のドレージ輸送と組み合わせた独自のサービスを提供している。横浜コンテナラインの渡辺直樹取締役北海道支店長(トランシス営業部長)と、菱沼昌祐営業部長に現況を聞いた。
― 横浜コンテナラインが事業開始した当時の背景は。
「当社が事業開始したのはちょうど2000年。当時コスコ・コンテナラインズの北米サービスの横浜港への誘致に伴い、その母船からの苫小牧向け貨物を輸送するために設立されたのが当社だ。当時、横浜港ではちょうど本牧BC1ターミナルが開業した頃で、横浜港と北海道の苫小牧港を結ぶコスコ専用のフィーダー船社として事業開始した。その後、2008年にトランシスグループの傘下に入った」
「トランシスはもともと北海道を基点に物流事業を展開しており、苫小牧港でのコンテナドレージではトランシスの苫小牧営業所が多くを取り扱っている。さらに、コスコの代理店である苫小牧埠頭については、ドレージ業務の大半をトランシスが引き受けていたというつながりもあった。そうしたなかで当時、先代の社長が陸上輸送だけでなく海上輸送も含めた一貫輸送を手掛けていこうと考えたのを機に、現在のような形になった」
― 配船形態はサービス開始当初から変わらないのか。
「基本的にはほとんど変わっていない。開始当初は横浜/苫小牧間のみをシャトルで結んでおり、短期間だが2隻体制で運航していたこともある。ただ、東日本大震災を機に貨物量が徐々に減り始めた。このため、本牧BCに寄港する外船社のフィーダー業務も行うことになり、それに合わせて八戸や仙台などに追加寄港するようになっていった。それ以降定毎週、月・火で横浜に寄港し、苫小牧に木曜、八戸に金曜、仙台に土曜で折り返す、というローテーションだ」
― コロナ以降の荷動きの推移はどうだったか。
「輸出入貨物におけるコロナの影響は確かに大きかったが、一方で空コンテナ回送の需要が大きく増えたので、下落分をカバーすることができた。どの船社も空コンテナ確保が困難になっていたため、苫小牧など輸入が多い港から京浜港へできる限り空コンテナを集めようという動きが強まった。輸送量全体で見ると、コロナ初年度は前年度比で減少したが、その後は好調に伸びている。国内での空コンテナの回送需要は昨年がピークで、今年はやや落ち着いてきている。また、釜山港の混雑も影響している。釜山港での混雑が著しく、貨物が長期間滞留してしまうので、輸送ルートを京浜港経由に切り替え、内航フィーダーで苫小牧や八戸まで輸入貨物を運ぶ、という輸送需要も増えている状況だ。自社だけでは積み切れず、最近は同業他社に輸送を依頼することが増えてきている。ほかに中国発貨物も一部あり、船腹需給としてはタイト感が続いている」
― 外航コンテナ航路では運賃が顕著に上昇したが、内航フィーダーではどうか。
「この点は、率直に言って全く恩恵をうけていないわけではないが、むしろ燃料費の高騰、さらに24年問題を背景とした港からの荷役費値上げ要請もあり、厳しい環境だ。空コンテナの輸送需要増で売上は確かに増えたが、同様にコストも嵩んでいる。船社には今年の春から運賃水準の交渉を打診しているが、一部のお客様を除き満額の返答には至っていない。また当社の場合、運航船が1隻のみで、運航船の寄港地やスケジュールを柔軟に変更して、貨物量が多い港に配船する、という形態は取っていない。たとえその週の貨物量が少なくても、必ず毎週同じように寄港させるというのをポリシーにしており、それを気に入って使ってくださっている顧客もいるのが、その分、収支のバランスを取るのが難しいという点も悩みだ」
― トランシスグループとの連携という点では、どのようなサービス展開を図っているか。
「当社に船積みして頂いた顧客に対しては、北海道、あるいは京浜港側でドレージを含む一貫輸送の提案に力を入れている。特に北海道では繁忙期と閑散期の輸送需要の差が激しく、繁忙期にはドレージが捕まらないことも珍しくない。当社で輸送した貨物については100%確実にドレージ手配が可能なので、この点はフィーダー貨物のみならず内貨の集荷においてもアピールしている。京浜港側でも、一部の船社は東京港で降ろした貨物を横浜まで持ってきて、そこから内航船に接続する、というニーズもある。その点、当社であればドレージとフィーダーをセットで提案することも可能で、今年はこういったニーズもかなり増えてきている。苫小牧、京浜に限らず、仙台や八戸など各寄港地でドレージで細かく融通を利かせられる点が、当社にとって大きな強みだ。船社によっては、OLTを切るところも含めて当社で輸送を請け負っているケースもある」
― トランシスグループでは海上コンテナを保有しているが、どのように活用しているのか。
「300本ほど保有しており、基本的には内航船を利用される荷主に対してリースしている。関東と北海道間での内貨輸送で利用されるケースが多く、好評を得ている」
― 今後の運航船の更新については、どのように考えているか。
「ちょうど昨年、事業開始以来ずっと運航してきた“オリオン”から入れ替えを行った。同型の749トン型だが、“オリオン”が156TEU積みだったのに対し、199TEU積みと輸送能力を高めている。今後、輸送量が増えるならば、当然、大型化や増配は考えたい。ただ運航コストも倍に増えるため、決断は簡単ではない。同じ航路に配船する同業他船社が積極的に大型化を進めていることもあり、まず考えなければいけないのは、スペース交換などを通じてこの航路のなかで最大限輸送効率を高めることだ。そのうえで、それでも船腹が足りない場合は、臨時増配やより大型の船へのリプレースなどを検討していきたい」
渡辺直樹取締役北海道支店長
菱沼昌祐営業部長