2026年6月4日無料公開記事
前期経常益189億円、好調継続
ECL、今期中東影響を代替貨物で補完
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長手社長(左)と高山副社長
自動車船・在来船運航船社イースタン・カーライナー(ECL)の長手繁社長と高山浩司副社長が本紙などのインタビューに応じ、2025年度の連結経常利益が前期比2%減の189億円だったことを明らかにした。自動車船部門が引き続き好調だったほか、在来船部門でも東南アジア航路での輸送量の減少を、インド向け鋼材輸送増加や中東向けスポット貨物などで補った。今期はホルムズ海峡危機によるペルシア湾向け輸送停止に直面しているが、航路・貨物の分散を図りながら、この局面で生まれる新たな輸送需要を見極め、代替貨物を着実に取り込むことで業績への影響を一定程度抑えられるとみている。今期はNPHグループで「One Team, Many Dreams」のスローガンを掲げて社内コミュニケーションの活発化を図っており、さらなるグループ内シナジーの可能性も模索していく。
■インド向け輸送強化
2025年度の連結売上高は前期比2%増の839億円、営業利益は12%減の160億円、純利益は2%減の126億円だった。在来船の輸送量減少などで海運事業の売上高が減少したものの、昨年買収した精密測定機器の梱包などを手掛ける日東梱包資材(東京都品川区)と、ヘリポートの設計・コンサルティング・施工を行うエアロファシリティー(東京都港区)が加わったことで、増収となった。
ECL単体の25年度業績は、売上高が前期比10%減の465億円、営業利益が14%減の95億円、経常利益が2%増の128億円、純利益が4%増の90億円だった。部門別営業利益は、自動車船が6%減の82億円、在来船(北米航路含む)が42%減の21億円だった。
自動車船部門では、好調なマーケットの下で同社の主軸となる中型自動車船の運用を丁寧に行う事で収益を積み上げた一方、3月はホルムズ海峡危機によって中東向けの輸送が影響を受けた。また、日本積みの輸送量減少を、好調な中国発の完成車輸送が補った。
在来船部門では、主力の東南アジア航路での鋼材・建機の輸送量が減少、それに伴い運航効率も悪化したことで収益性が低下した。一方、インド向け輸送を強化するため、昨年7月からバンガロールに駐在員を配置。現在はインド向けに月平均2航海を実施し、東南アジア向け輸送の減少をカバーする取り組みを進めている。今後はインド航路のラウンド採算改善に向けて復航貨物確保に注力する。
■今期経常益、逆風下でも100億円以上
26年度連結業績予想については、中東情勢の影響が不透明としつつ、経常利益150億円程度を見込んでいる。長手社長は「直近4年間で利益水準が大きく上昇した一方、今年は厳しい事業環境の中でどれだけ収益を確保できるかがテーマだ。しかし、どれだけ逆風があっても経常利益が100億円を下回ることはないと考えている」との見通しを示した。また高山副社長は「厳しいなからも4月も利益を確保、5月以降もさまざまな対策を取りながら収益改善に取り組んでいる」と説明した。
自動車船部門では、ホルムズ海峡情勢の悪化によって、同社の主力である中東向け新車・中古車輸送が停止している。ただ、自動車船マーケット全体で需給が引き続きタイトな中、中国出しの電気自動車(EV)など、中東向け以外のスポット輸送を行うことで稼働率を維持している。長手社長は「中国からは日本、東南アジアだけでなく、カラチやオーストラリアなどにも輸出されている。当社の4000台積み自動車船は使い勝手が良く、需要がある。手持ちの船で顧客の細かなニーズを拾っていく」と語った。
ホルムズ海峡危機を背景とする燃料費の増加については、自動車船や在来船の一部貨物は燃料価格調整金(BAF)などによって運賃に転嫁できているという。在来船の日本積み鋼材については、現在価格転換までに3カ月から6カ月のタイムラグが発生する契約も多いため、荷主の理解を得ながら運賃への早期転嫁を進めていく考えだ。
■500トン吊り重量物船竣工
ECLの基幹船隊は自動車船8隻、在来船20隻。これに加え、1万6500重量トン級重量物船(トリプルデッカー)が本田重工業で5月29日に竣工した。10年間の新造用船で、「最初の航海では中国・韓国でプラント貨物を積載し、米国向けに輸送する」(高山副社長)。同船には、日本製として最大となる眞鍋造機製500トン吊りクレーン(250トン吊り2基)を搭載。その能力を生かし、風力発電関連部材などの輸送も視野に入れている。
この他、1万3000重量トン型および1万7000重量トン型のツインデッカーがそれぞれ27年初旬に竣工予定。前者は檜垣造船建造でJFEスチールのグリーン鋼材「JGreeX」を採用する。
■ブルネイ合弁、海運以外にも商機
ECLは今年2月、香港の海運子会社「NETWORK CROSS TRADE LINE., LTD(NEXT)」を通じ、ブルネイ政府の戦略的開発資本基金と合弁海運会社「NEXT BAHTERA MARITIME SDN BHD」(NBM)を設立した。NEXTが運航する多目的RORO船“NXT GENESIS”(1万8118総トン)をNBMが船主として保有し、月1回以上ブルネイへ寄港する。
高山副社長は合弁会社設立の背景について、「何年も前から香港のNEXTとブルネイ政府の間で継続的に対話を行ってきた。産油国であるブルネイ側には、石油・天然ガス以外の産業を育成したいとの問題意識があった。また、ブルネイの港湾をハブポート化したいという構想があり、港湾運営ノウハウを持つ企業を探していたようだ」と説明した。
長手社長は「ブルネイは車社会で、新車輸入が増えている。現時点では中古車輸入には厳しい制限があるが、将来的には中古車需要も出てくると考えており、その際には中古車の流通網をどう構築するかが課題になるだろう。ECLの海運事業だけでなく、自動車関連事業を手掛けるNPHホールディングス全体で、今後さまざまなビジネスチャンスが生まれるはずだ」と語った。