2025年10月10日無料公開記事船舶用船料先物取引(FFA)を知る使う
《連載》船舶用船料先物取引(FFA)を知る・使う②
人員体制と資金が必要
エクセノヤマミズ 大本博司 氏
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FFAの取引で大切なのは、自分が持っている現物ポジションのリスクをきちんと把握することだ。ロングやショートのポジションがどれくらいあるのか、時価評価がどう動いているのか、どの程度の損失が起こり得るのかを日々確認しておく必要がある。
海外の企業は時価会計が広く採用されていることもあり、こうした作業を当たり前のようにやっている。日本企業でも少しずつ増えてはいるが、リスク量まできちんと把握している会社はまだ少ないのが現実だ。とはいえ、そこを押さえておかないと、ヘッジをするべきかどうか、どれくらいの規模でやるのかという判断はできない。逆に、ポジションの時価評価を日々行ってリスク量を分析し、自社の決算に与える影響を見える化できれば、FFAを利用した方が有利だと考える企業も多いはずだ。
実際にFFAの取引を行うとなると、いくつかハードルがあるのも事実だ。FFAは海外の証券会社に口座を開いて証拠金としてドルを預ける必要があり、資金に余裕がないと難しい。ポジションのリスクだけを見て「使った方がいい」とは言い切れず、コストとのバランスを考えなければならない。さらに、ポジションや証拠金の入出金を管理する体制も社内に必要になる。そうした点を考えると、日常的にFFAを利用できる会社はどうしても限られてくる。資金面でのハードルを下げる方法として、相対取引という手もある。与信条件が前提になるが、日本では一部の大手商社がこのビジネスを手がけているので、興味があれば相談してみるのもいいだろう。
繰り返しになるが、FFAを使うにはまず、自社のリスクを定量的に日々把握できる体制と資金の確保が欠かせない。そのうえで、本当にヘッジが必要かどうかを見極める。必要だと判断すれば、実際にポジションを減らす以外にリスクを抑える方法はFFAしかなく、そこで初めて「FFAを活用する」という考えに行き着く。こうした段階を踏んでこそ、正しいヘッジ行動に移ることができる。特に、予算と実績の管理が厳しく求められる上場企業にとっては、FFAの必要性は大きいと思う。
とはいえ、準備の煩雑さを理由に利用を見送る会社も少なくない。ただ、最初は少量の取引から始めて、少しずつ体制を整えていけばいい。どんな規模の体制が必要かは企業ごとに違うのだから。
ヘッジは短期ではなく、継続して行うことが大事だ。1航海だけの目的でFFAを使うのも悪くはないが、単発だと期待したほど効果が出ないこともある。現物とFFAの価格が短期的にずれることは避けられないからだ。相関が確認できるなら、継続的にヘッジを続けてこそ効果が出てくる。
ボルチック取引所が発表するFFAのインデックスは、あくまでその時点の先物取引価格にすぎず、将来の現物マーケットを予測するものではない。ただし、船舶用船料の先限価格が日々公表されるのはFFAだけであり、その数字には多くの利用価値がある。例えば手持ち船腹の時価評価の参考になるし、自社収益の予測にも役立つ。定期用船契約の延長や新規契約を決める際の判断材料にもなるし、金融機関の船舶融資にも使えるだろう。
FFAはそうした意味でも価値のある道具だ。もっと多くの人に関心を持ってもらい、実際に活用してもらいたい。