2025年8月29日無料公開記事洋上風力発電

洋上風力再公募に向け最大限協力
三菱商事、経産省に撤退を報告

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三菱商事の中西社長(左手前)と武藤経産相(右中央)

 三菱商事の中西勝也社長は27日、経済産業省を訪問し、武藤容治経産相に国内3海域の洋上風力事業からの撤退を報告した。中西社長は「一般海域最初の案件を、当社の力を信じて選んでいただき、その期待に応えられなかったことは重く受け止めており、断腸の思いだ。また、地域に寄り添う事業として、地域の期待に応えられなかったことについても重く受け止めている。地域関係者には私自ら丁寧に説明していく」と語った。洋上風力事業の一環として進めていた地域共生策については地域関係者と密に連携しつつ、継続する意向を示した。また、3海域の再公募に向けては「早く再スタートできるよう、データの提供などを含め、われわれも最大限協力させていただく」と述べた。
 中西社長は撤退に至った背景について、「洋上風車はメーカーが欧州勢3社しかなく、新型コロナウイルスとウクライナ情勢の影響を受け、信じられないほど価格が上がった。われわれの想定をはるかに超える事業環境の変化により、建設費が高騰していった」と説明した。また、撤退の判断に至るまでの間、風車メーカーの変更や制度の変更、事業期間の延長など経産省などと相談したうえで、さまざまな可能性を視野に入れながら事業計画を見直したものの、事業期間中の支出が収入を上回る見通しとなったという。
 武藤経産相は「今回、3海域全て撤退との判断に至ったことは日本における洋上風力の導入に後れをもたらすものであり、大変遺憾だ。地元関係者は地域経済の波及効果を含めて洋上風力事業に期待をし、さまざまな協力をしてきた。港湾の整備や地元企業の設備増強など一部の投資をすでに開始している。今回の撤退は地元の期待を裏切るものであり、全国の関係者も大変注目している案件でもあり、洋上風力に対する社会の信頼そのものを揺るがしかねないと考えている」と語った。
 政府は、三菱商事らが撤退した「秋田県能代市、三種町および男鹿市沖」「秋田県由利本荘市沖」「千葉県銚子市沖」3海域における洋上風力事業を確実に実現するため、地元の理解をあらためて得たうえで、再公募に向けて取り組みを進めていく方針だ。
 再エネ海域利用法では都道府県からの情報提供に基づき、洋上風力発電を導入する見込みのある区域を「準備区域」「有望な区域」「促進区域」の3段階で整理している。促進区域は公募占用指針が定まり次第、事業者を選定する公募が開始される。公募未実施の促進区域は現在、「北海道松前沖」「北海道檜山沖」の2海域で、ここに「秋田県能代市、三種町および男鹿市沖」「秋田県由利本荘市沖」「千葉県銚子市沖」が加わるかたちとなる。

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